【不動産業の独立知識】開業費の償却方法は? 費用項目や償却期間について
不動産業を独立開業する際は、事務所の賃料やOA機器、オフィス家具の購入費などを含めた開業費が発生します。
この開業費は一般的な経費とは異なり、毎年少しずつ費用を計上する“償却”の処理が可能です。償却を行うことで節税効果が期待できるため、不動産業の独立開業前には、償却方法や費用項目、償却期間についてよく理解しておくことが重要です。
将来的に独立開業を検討していて、「償却方法が分からない」「何を開業費として償却できるのか分からない」という方もいるのではないでしょうか。
この記事では、不動産業の開業費の償却方法をはじめ、開業費として扱える費用項目や償却期間について解説します。
目次[非表示]
- 1.開業費の償却方法
- 2.開業費に含まれる費用項目
- 3.開業費の償却期間
- 4.まとめ
開業費の償却方法
開業費とは、事業の開始までにかかった経費を指します。法人の場合、法人設立から事業開始日までにかかった費用を開業費として計上します。一方、個人事業の場合は、事業開始日までにかかった一切の費用が開業費です。
開業費は、開業した年に経費として計上することもできますが、“繰延資産”として毎年少しずつ計上することが可能です。
繰延資産は、個人が支出する費用のうち、支出した日以降の年度にも影響を与える費用を指します。その年に費用を支払っているものの、翌年以降も支出の効果が継続する費用については、“繰延資産”として処理します。そのうえで、数年にわたって少しずつ経費として計上することが可能です。このような計上方法を、“償却”といいます。
開業費を数年に分けて償却することによって、課税所得額を抑えられるため、節税につながります。
なお、繰延資産の償却費については、以下の計算式で算出できます。ただし、この計算式のほかに、支出金額を任意で決めることも可能です。
▼繰延資産の償却費の算出方法
画像引用元:国税庁『Ⅱ 繰延資産の範囲について』
(出典:国税庁『Ⅱ 繰延資産の範囲について』)
開業費に含まれる費用項目
先述したように、繰延資産として扱えるのは、支出の効果が1年以上に及ぶ費用です。
個人事業における開業費として含まれる費用項目には、以下が挙げられます。
▼開業費に含まれる費用
- 調査費(市場調査、立地調査など)
- 事務所の賃料、工事費
- 備品の調達費
- パソコンやソフトウェアの購入費
- 広告宣伝費
- 事業免許の取得費
- 顧客・関係者との交際費や旅費・交通費
- 印鑑や名刺、Webサイトの作成費 など
これらの開業費のうち、1つの費用が10万円以上のものについては、固定資産になります。そのため、繰延資産として計上することはできません。
なお、不動産会社の開業費に含まれる備品については、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
(出典:国税庁『No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示』/中小企業庁『少額減価償却資産の特例』)
開業費の償却期間
開業費の償却期間は、会計上と税法上の2つの考え方があります。それぞれの償却期間は、以下のとおりです。
▼開業費の償却期間
会計上 |
5年間(均等) |
---|---|
税法上 |
任意 |
会計上では、5年間にわたって費用を均等に償却します。この場合、5年間にわたり、均等に経費として計上することで、毎年一定の節税効果を生むことになります。
一方、税法上では任意償却が可能です。任意償却とは、償却期間や償却金額を任意で設定できます。
任意償却では、次のような対応を行うことができます。
▼任意償却で可能となる対応
- 初年度に一括計上する
- 赤字が出た場合には償却を行わない
- 利益が多く出た際に、多めに償却する
また、開業後5年間経過したあとでも、繰延資産を償却費として経費に算入することが可能です。
このように、年度ごとの収益や、繰り越した欠損などを考慮しながら開業費償却を行うことで、より有効な節税対策につながります。
なお、実務においては、税法上の処理を行うことが一般的とされています。
(出典:国税庁『Ⅱ 繰延資産の範囲について』)
まとめ
この記事では、開業費の償却について以下の内容を解説しました。
- 繰延資産の償却方法
- 開業費に含まれる費用項目
- 会計上・税法上の償却期間
不動産業の開業費は、その年度の経費として計上するのではなく、繰延資産として数年間に分けて計上することが可能です。これにより、課税所得額が抑えられるため、節税につながります。
また、任意償却の場合、年度ごとの業績や収益に応じて、償却期間・償却金額を自由に調整できるため、より有効な節税対策が行いやすくなります。
不動産業の開業を検討している方は、開業費を管理するとともに、償却計上を行って節税につなげてはいかがでしょうか。
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また、不動産業の独立開業の流れについては、こちらの記事で解説しています。併せてご一読ください。