管理業務主任者とは? 資格の概要と4つの独占業務について解説
マンション管理に関する国家資格には、マンション管理士と管理業務主任者があります。マンション管理士は、管理組合の立場で建物の保全や管理運営に関するアドバイスを行います。一方、管理業務主任者は、マンション管理会社と管理組合との管理受託契約に関して、さまざまな独占業務を行います。
マンション管理会社や不動産会社に勤めていて、キャリアアップのために管理業務主任者の資格取得を考えている方もいるのではないでしょうか。この記事では、管理業務主任者について、資格の概要と4つの独占業務について解説します。
マンション管理士については、こちらの記事をご覧ください。
目次[非表示]
- 1.管理業務主任者とは
- 2.試験の概要
- 3.管理業務主任者の登録要件
- 4.管理業務主任者の設置義務
- 5.管理業務主任者の4つの独占業務
- 5.1.①管理受託契約に関する重要事項説明
- 5.2.②重要事項説明書への記名・押印
- 5.3.③管理受託契約書への記名・押印
- 5.4.④管理事務に関する報告
- 6.まとめ
管理業務主任者とは
管理業務主任者とは、マンション管理会社が管理組合との間で締結した管理受託契約に係る重要事項の説明や管理事務の報告などを行う国家資格者です。
2001年に施行されたマンション『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』に基づき、マンション管理士とともに誕生しました。
マンション管理会社の事務所には、管理業務主任者の設置が義務づけられており、主に管理受託契約に関わる重要事項説明や管理事務の報告などの業務を行います。
(出典:e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』)
試験の概要
例年、管理業務主任者の資格試験は年1回、12月の第1日曜日に実施されます。受験資格や制限はないため、年齢や学歴、実務経験にかかわらず、受験手数料を納めれば誰でも受験できます。
▼管理業務主任者の試験概要
試験日(例年) |
12月の第1日曜日 |
---|---|
試験地 |
北海道・宮城県・東京都・愛知県・大阪府・広島県・福岡県・沖縄県の8都道府県 |
試験実施機関 |
一般社団法人 マンション管理業協会 |
受験申し込み手続き |
受験申込書と必要書類を指定場所に郵送 |
受験手数料 |
8,900円 |
事務所の賃貸・改装費用 |
|
直近3年(2019〜2021年)の試験合格率は22.2%で、約5人に1人が合格していることになります。
▼過去3年の合格率
- 2019年 :23.2%
- 2020年:23.9%
- 2021年 : 19.4%
2021年度のマンション管理士の試験合格率が一桁台(9.9%)であることを踏まえると、管理業務主任者の試験は合格率がやや高い傾向にあることが分かります。
管理業務主任者の試験に合格すると、マンション管理士試験で一部が免除されます。公益財団法人マンション管理センターでは、免除について次のように示されています。
マンション管理適正化法の規定により、管理業務主任者試験の合格者等は、試験の一部の免除を申請することができます。免除の対象となる問題の範囲はマンション管理適正化法に関する5問です。(5問正解と同じ扱いとなります。) |
引用元:公益財団法人マンション管理センター『マンション管理士試験関係』
また、マンション管理士の試験日が例年11月の最終日曜日で管理業務主任者試験の日程と近いことから、ダブル受験をする方もいます。
(出典:一般社団法人 マンション管理業協会『令和3年度 管理業務主任者試験 実施要領』『令和元年度 管理業務主任者試験 結果報告』『令和2年度 管理業務主任者試験 結果報告』『令和3年度 管理業務主任者試験 結果報告』/公益財団法人マンション管理センター『令和3年度マンション管理士試験の結果について』)
管理業務主任者の登録要件
管理業務主任者の試験に合格した後、管理業務主任者として業務に従事するには、住所地を管轄する地方整備局長等の登録を受ける必要があります。
次のいずれかの要件を満たすことで登録を受けられます。
▼登録要件
- マンションの管理事務に関する実務経験が2年以上ある
- 国土交通大臣の登録を受けた者による実務講習を修了している
- 国、地方公共団体、またはこれらの出資により設立された法人において、管理事務に従事した期間が通算2年以上ある
(出典:国土交通省『管理業務主任者証の交付を受けるまでの手続きについて』)
管理業務主任者の設置義務
マンション管理会社は、事務所の規模に応じて、国土交通省が定める人数の成人している専任の管理業務主任者を設置することが義務づけられています。
設置人数については、管理事務について委託を受けた管理組合30組合に対して1名以上とされています。
ここでいう“専任”とは、マンション管理業を営む事業所に常勤して、専門業務としてマンション管理業に従事することを指します。宅地建物取引業における専任の宅地建物取引主任者とは兼任できないため注意が必要です。
(出典:国土交通省関東地方整備局『マンション管理業・管理業務主任者について』/e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』)
管理業務主任者の4つの独占業務
ここからは、マンション管理適正化法で定められている4つの独占業務について解説します。
①管理受託契約に関する重要事項説明
管理組合から委託を受けてマンションに関わる管理受託契約を締結する際、管理業務主任者が管理組合に対して重要事項について説明する義務があります。
管理業務主任者による重要事項の説明は、区分所有者や管理者を含む管理組合の全員に契約内容を理解してもらい、管理組合の適正な意思決定を促すことが目的です。重要事項の内容には、管理事務の受託内容や契約期間などが挙げられます。
なお、管理業務主任者が重要事項の説明を行う際は、管理業務主任者証を提示する必要があります。
(出典:e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』/国土交通省『マンション管理業について』)
②重要事項説明書への記名・押印
マンション管理会社が管理組合と管理受託契約を締結する際は、管理業務主任者の記名・押印がある重要事項説明書を交付する義務があります。
管理業務主任者の記名・押印により、重要事項の説明に関する責任の所在を明らかにする目的があります。なお、重要事項説明書は、マンションの管理組合を構成する区分所有者等全員にあらかじめ交付する必要があります。
(出典:e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』/国土交通省『マンション管理業について』)
③管理受託契約書への記名・押印
管理受託契約を締結する際は、管理業務主任者の記名・押印がある管理受託契約書を交付することが義務づけられています。
契約書への記名・押印には、契約内容に誤りがなく、正しい契約が結ばれたことを証明する目的があります。
また、契約の更新時においては、たとえ契約内容が同じであっても、契約書を交付する義務があります。
(出典:e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』/国土交通省『マンション管理業について』/国土交通省 関東地方整備局『(Q&A)マンション管理業者の業務について』)
④管理事務に関する報告
マンション管理会社は、委託を受けたマンションの管理事務について、管理業務主任者から管理組合に対して定期的に報告する義務があります。
管理業務主任者による報告は、管理委託契約に基づいて管理事務を適正に行っていることを管理組合に対して示す目的があります。
報告書には決まった様式はありませんが、以下の3つを記載することが国土交通省によって定められています。
▼報告書の記載事項
1 .報告対象期間
2.管理組合の会計収支状況
3.管理受託契約内容に関する事項
なお、管理組合へ報告を行う際は、管理業務主任者が管理業務主任者証を提示して、対面で説明を行う必要があります。
(出典:e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』/国土交通省『マンション管理業について』/国土交通省 関東地方整備局『(Q&A)マンション管理業者の業務について』)
まとめ
この記事では、マンション管理に関係する管理業務主任者について、以下の内容を解説しました。
- 管理業務主任者の概要
- 管理業務主任者の試験と設置義務
- 管理業務主任者の4つの独占業務
管理業務主任者は、管理組合の委託を受けて、マンションの管理事務を行う国家資格者のことです。受験に際して必要な資格や制限がなく、マンション管理士の試験と比較して合格率が高い傾向にあることが特徴です。
また、マンション管理会社には、専任の管理業務主任者を設置する義務があります。管理業務主任者は、重要事項説明や契約書への記名・押印、管理事務の報告などの独占業務も有しているため、マンション管理会社からの需要は高いと考えられます。
これらを踏まえると、管理業務主任者は、マンション管理会社での対応業務の拡大やキャリアアップなどにつながる資格といえます。
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