マンション管理士の主な業務内容と独立する3つの強み
近年、国内におけるマンション市場は、ストック数が増加の一途をたどっており、建築後30〜50年の老朽化したマンションも将来増えると推計されています。
▽ストック数の増加
画像引用元:国土交通省『分譲マンションストック戸数』
▽老朽化
画像引用元:国土交通省『マンションに関する統計・データ等』の「築後30、40、50年以上の分譲マンション数(2021年末現在/2022年6月28日更新)」
このような状況のなかで適切にマンションを維持するためには、マンションの管理規約や修繕計画の策定など、さまざまな対応が必要になります。そこで注目を集めているのが“マンション管理士”です。
この記事では、マンション管理士とはどのような資格なのか、独立開業にあたってどのような強みがあるのか、この2つについて解説します。
目次[非表示]
- 1.マンション管理士とは
- 2.マンション管理士の役割
- 3.マンション管理士の業務内容
- 3.1.①管理規約の策定・見直し
- 3.2.②長期修繕計画の策定・運用
- 3.3.③区分所有者への対応
- 4.マンション管理士の合格率
- 5.マンション管理士として独立を目指す3つの強み
- 5.1.①資格登録要件が少ない
- 5.2.②事務所を構える必要がない
- 5.3.③初期費用を抑えられる
- 6.まとめ
マンション管理士とは
マンション管理士とは、マンション管理に関する法律知識を有して、専門的知識をもって助言・指導、その他援助を行うことを業務とする専門家です。
2001年8月に施行された『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』において、国家資格に位置づけられています。
(出典:e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』)
マンション管理士の役割
マンション管理士は、管理規約や長期修繕計画の作成・見直し、区分所有者間のトラブル対処など、マンションの維持管理を支援するコンサルタントの役割を担っています。
近年のマンションの老朽化やストック数の増加を背景に、マンション管理の専門知識を有する資格者の需要は、今後さらに高まると考えられます。
マンション管理士の需要が高まっている背景については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
(出典:国土交通省『マンション政策の現状と課題』『分譲マンションストック戸数』)
マンション管理士の業務内容
マンション管理士の主な業務内容は次のとおりです。
①管理規約の策定・見直し
1つ目は、マンションの管理規約をはじめ、使用細則や区分所有者間のルールなどの策定・見直しを行うことです。
管理規約やルールの策定にあたって、管理組合に対してアドバイスを行ったり、法的な視点で問題がないかチェックしたりする業務を行います。
▼主な業務内容
- 理事会での話し合いへの参加
- 区分所有者への説明会の実施
- 管理規約、使用細則などの改正案の作成
- 総会の開催
- 改正した管理規約、使用細則の運用
マンションの管理規約は、国土交通省の“マンション標準管理規約”に基づき作成されています。
しかし、生活様式の移り変わりや入居者の入れ替わりによって、従来の管理規約では実態にそぐわないケースも少なくありません。
入居者が快適な生活を送れるように、従来のルールで問題が発生しないかを、定期的に管理規約の問題点・改善点をチェックして、見直すことが重要と考えられます。
②長期修繕計画の策定・運用
2つ目は、マンションの長期修繕計画を作成して、計画に沿った予算管理や修繕工事を実施することです。
修繕費用は適切か、建物の状態に応じた修繕項目が含まれているかなど、管理組合に対してアドバイスや支援を行います。
▼主な業務内容
- 工事の実績や経年を踏まえた修繕項目の見直し
- 建物の構造や設備ごとの修繕周期の設定
- 工事推定価格の算出、予算の見直し
- 長期修繕計画の進行
マンションの安全性や価値を保つためには、日常的な維持管理や定期的な修繕工事が欠かせません。
特に、大規模修繕工事では多額の費用が発生します。修繕工事の資金は、入居者から徴収した修繕積立金を活用するため、適切な保管・管理が求められます。
③区分所有者への対応
3つ目は、マンションの区分所有者間のトラブルの対処や、管理組合にトラブルに対するアドバイスをすることです。
▼主な業務内容
- 区分所有者から寄せられた相談への対応
- 義務違反した区分所有者への措置対応のアドバイス
- 管理費や修繕積立金の滞納者への対応のアドバイス
1つの建物を区分所有するマンションでは、価値観や生活リズムが異なる人が暮らしています。そのため、共有部分の取扱いや騒音、ゴミ出しなどについて、区分所有者間でのトラブルになるケースも少なくありません。
このように、マンション管理士には区分所有者間の相談を受けて、公平かつ法的な視点から円滑な解決を図る役割が求められます。
マンション管理士の合格率
2021年度のマンション管理士試験の合格率は9.9%でした。不動産関連の代表的な資格である“宅地建物取引士”の試験合格率17.9%と比較しても、難易度が高いことが分かります。
マンション管理士の資格難易度や勉強時間については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
≫ マンション管理士の資格を取得するメリットとは? 勉強時間・試験スケジュールを解説
また、マンション管理に関連する国家資格として“管理業務主任者”があります。いずれの資格も出題範囲や試験日が近いこと、管理業務主任者試験に合格するとマンション管理士試験の問題が一部免除されることから、一緒に受験する人も少なくありません。
管理業務主任者の資格や独占業務については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
≫ 管理業務主任者とは? 資格の概要と4つの独占業務について解説
(出典:公益財団法人マンション管理センター『令和3年度マンション管理士試験の結果について』/一般財団法人 不動産適正取引推進機構『令和3年度宅地建物取引士資格試験(10 月実施分)結果の概要』)
マンション管理士として独立を目指す3つの強み
ここからは、マンション管理士として独立を目指す3つの強みについて解説します。
①資格登録要件が少ない
マンション管理士は、管理業務主任者と比べて資格登録を受ける要件が少ないことから、独立開業を目指しやすいといわれています。
マンション管理士の名称を用いて業務を行うには、マンション管理センターに申請して登録を受ける必要がありますが、資格登録要件は以下の2つのみとなっています。
▼マンション管理士の資格登録要件
- マンション管理士の資格を取得する
- 欠格事項に該当しない
管理業務主任者のように、実務経験の有無や登録実務講習などが必要ないため、資格取得後すぐに独立することが可能です。
(出典:公益財団法人マンション管理センター『マンション管理士登録関係』『マンション管理士登録案内』/一般社団法人 マンション管理業協会『主任者証の交付・更新』)
②事務所を構える必要がない
基本的にマンションに出向いて業務を行うことが多いため、事務所を構える必要がありません。
通常、独立開業するには、事務所の賃貸借契約をはじめ、家具やパソコンの用意、インターネット開設などさまざまな準備が発生します。
その点、マンション管理士の場合、事務所の設置要件が定められていないため、自宅での独立開業も可能となります。
③初期費用を抑えられる
マンション管理士の仕事は、商材を持たずに始められることから、開業時の初期費用を抑えられるという点が強みです。不動産デベロッパーや賃貸経営の場合、商材となる物件の仕入れや仕入れた物件のリフォームなどが必要になるため、基本的には元手が必要となります。
また、不動産仲介業の場合は元手こそ不要ですが、事務所の設置費用や営業保証金(弁済業務保証金分担金)、業界団体への加入金などが必要です。
これらと比較しても、マンション管理士の場合は、資格登録の免許税と登録手数料のみで開業することが可能なため、初期費用が抑えられることが分かります。
▼マンション管理士の登録にかかる費用
- 登録免許税:9,000円
- 登録手数料:4,250円
まとめ
この記事では、マンション管理士について以下の項目で解説しました。
- マンション管理士とは
- マンション管理士の役割
- マンション管理士の主な業務内容
- マンション管理士の合格率
- マンション管理士として独立を目指す3つの強み
マンション管理士は、マンションの維持管理を支援するコンサルタントの役割を担います。今後、マンションの老朽化やストック数の増加に伴い、マンションの維持管理に精通したマンション管理士の需要はさらに高まると考えられます。
一方で、マンション管理士試験の合格率は9.9%と狭き門です。合格を目指すには綿密な準備が不可欠と考えられます。
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