賃貸管理でよくある3つのトラブルと未然に防ぐポイント
賃貸管理会社が入居者対応や建物の管理、家賃の集金代行などの業務を行う際、入居者・オーナーとの間でトラブルが発生することがあります。
入居者やオーナーからの信頼を維持しつつ、大きなクレームやトラブルの発生を防ぐためには、適切かつ迅速な対応が必要です。
この記事では、賃貸管理でよくある3つのトラブルを踏まえて、トラブルを防ぐためのポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.賃貸管理で起こりやすいトラブル
- 1.1.①設備の不具合・故障
- 1.2.②入居者・近隣住民による騒音
- 1.3.③原状回復工事の費用負担
- 2.賃貸管理トラブルを防ぐためのポイント
- 2.1.①修理範囲や費用負担について定める
- 2.2.②騒音に関するルール・対応方法を定める
- 2.3.③入退去時に物件の状況確認を実施する
- 3.管理会社に求められる対応
- 4.まとめ
賃貸管理で起こりやすいトラブル
賃貸管理で起こりやすい入居者・オーナーとのトラブルには、次の3つが挙げられます。
①設備の不具合・故障
入居者との間で発生しやすいトラブルの一つに、賃貸物件に備わっている住宅設備や建具の不具合・故障があります。
給湯器やエアコンなどの設備が故障した場合、入居者の生活に支障をきたしてしまいます。また、賃貸管理会社の対応が遅れる、また対応が不十分と感じた場合、入居者からのクレームにつながるケースがあります。
さらに、修理にかかる費用を入居者・オーナーどちらが負担するのか、責任の所在をめぐってトラブルになることも考えられます。
②入居者・近隣住民による騒音
ほかの入居者や近隣住民の生活や行動により発生する騒音によって、入居者から管理会社にクレームが入ることがあります。
騒音によるトラブルは、騒音の捉え方に個人差があるほか、音の発生源を特定できないケースもあるため、解決が難しいとされています。
また、管理会社が騒音の発生元となる入居者に注意喚起を行っても改善が見られない場合、トラブルが長期化するケースもあります。
③原状回復工事の費用負担
入居者トラブルのなかでも特に多いのが、退去時の原状回復工事にかかる費用が原因のトラブルです。
賃貸借契約において、入居者は貸主に対して原状回復義務を負います。入居者の故意、または過失によって住宅の損耗・破損が生じた場合は、その修繕費用を入居者が負担します。
しかし、この修繕の負担範囲や費用について入居者の合意を得られず、支払いに応じてもらえないケースがあります。また、経年変化や通常使用による損傷は貸主の負担となりますが、その認識に関して物件オーナーとトラブルになることもあります。
▼借主負担となる故意・過失の破損例
- 引越し作業で生じた傷
- 壁のくぎ穴、ねじ穴
- タバコのヤニ、臭い
- 壁の落書き
- ペットによる壁や柱などの傷、臭い など
▼貸主負担となる経年劣化の例
- 家具の設置跡
- 壁の画びょう、ピンなどの穴
- 畳、フローリングの色落ち など
賃貸管理トラブルを防ぐためのポイント
入居者やオーナーとのトラブルを防ぐには、賃貸借契約の段階でルールを定めて、認識を統一しておくことが重要です。トラブルを防ぐポイントには、以下の3つが挙げられます。
①修理範囲や費用負担について定める
トイレや給湯器など、賃貸物件に備わっている設備・建具の修理範囲、費用負担を賃貸借契約書に明記しておくことがポイントです。
次のように、修理範囲や費用負担について契約書に明記したうえで、入居者・貸主と共有します。
▼修理範囲と費用負担の例
- 経年劣化や通常使用による故障・不具合:貸主負担
- 入居者の故意過失による故障・不具合:借主負担
- 入居者購入による設備、残置物:修理の対象外
賃貸借契約書に明記することで、費用負担の責任の所在をめぐったトラブルを防ぐことができます。
また、設備交換・修理の手配を迅速に行えるように、管理会社の判断で工事発注できる金額を決めておくこともポイントです。速やかに一次対応を行うことで、修理完了までの期間を短縮できます。
②騒音に関するルール・対応方法を定める
騒音トラブルを防ぐためには、入居者へのルールや管理会社の対応方法について、賃貸借契約時に定めておくことがポイントです。
たとえば、次のようなルール・対応方法が挙げられます。
▼騒音に関するルールの例
- 大きな音が出る楽器(ピアノやバイオリン等)の使用を禁止、または制限する
- ペットの種類や数を制限する
- 夜10時以降はテレビやオーディオの音量を制限する
- 悪質な騒音、または複数回の注意によっても改善が見られなかった場合は、法的措置に移行する
騒音に関するルールを定めておくことで、入居者の公平性を維持できるほか、違反した入居者に適切な措置を講じられます。
また、騒音に関する管理会社の対応方針を契約時に伝えることで、入居者に音量管理の意識を持ってもらいやすくなります。
③入退去時に物件の状況確認を実施する
原状回復をめぐるトラブルを防ぐためには、入退去時に入居者とともに物件状況を確認したうえで、写真・書面に記録しておくことがポイントです。
国土交通省住宅局の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)』を基に、以下の対応を実施します。
▼原状回復トラブルを防ぐための対応
- 賃貸借契約書に原状回復義務と範囲、費用負担について明記して、入居者の合意を図る
- 物件内部の損耗状況を記録するチェックリストを作成する
- 入退去時には、入居者とともに物件状況を確認して、損耗の有無をリストに記録する
- 原状回復の範囲・費用を説明して、入居者の署名捺印をいただく
あらかじめ原状回復の条件について合意して、チェックリストに記録することで、認識の齟齬(そご)から生まれるトラブルを防止できます。
▼原状回復チェックリストの例
(出典:国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』)
管理会社に求められる対応
賃貸借契約書や事前説明によって合意形成しているにもかかわらず、トラブルが解決しない場合には、法的措置を検討する必要があります。
設備修理や騒音、原状回復について賃貸借契約書にきちんと明記していても、入居者がそれに納得しないケースもあります。また、管理会社が一方的に賃貸借契約の解除や立ち退きを請求することはできません。
そのほか、入居者トラブルの放置によりオーナーに不利益が生じた場合、オーナーから損害賠償を請求されるリスクもあります。
入居者からクレームがあった際は、クレームに対して迅速に対応することはもちろんのこと、オーナーの要望を聞いたうえで対応方法を検討することも大切です。
交渉でのトラブル解決が難しい場合は、弁護士に相談して代理交渉や内容証明の送付を行うことも視野に入れましょう。
まとめ
賃貸管理で起こりやすいトラブルには、設備の故障・不具合、入居者・近隣住民による騒音、原状回復の費用負担が挙げられます。
これらのトラブルを防ぐには、賃貸借契約書に管理会社の対応範囲や費用負担などについて明記したうえで、合意形成しておくことが重要です。
また、実際にトラブルが生じた場合には、解決に向けた迅速な一次対応を行います。そのうえで、管理会社のみでの対応が困難な際は、弁護士に相談して法的な措置を検討することも重要です。