【不動産売買仲介営業】リードナーチャリングの手法とメリット・デメリット
不動産売買仲介営業は、商材が土地や新規・中古の住宅など高額なうえ、売主または買主となる顧客と接点を持ってから成約に至るまでの検討期間が長くなりやすい傾向があります。
そうしたなか、競合他社との差別化を図り、顧客の売却または購入の機会や関心・意欲を高めるためには、継続的なコミュニケーション設計が欠かせません。そこで有効といえるのが、リードナーチャリングです。
リードナーチャリングとは、見込み顧客(リード)に中長期的なアプローチをして、成約につなげる育成(ナーチャリング)を行うマーケティング手法のことを指します。
不動産売買仲介の営業担当者のなかには、リードナーチャリングについて、「具体的にどのようなアプローチを行えばよいのか」「どのようなメリットがあるのか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、具体的なアプローチ手法をはじめ、不動産売買仲介営業でリードナーチャリングが重要とされる理由と、メリット・デメリットについて紹介します。
目次[非表示]
- 1.リードナーチャリングの3つの手法
- 1.1.①メール
- 1.2.②SNS
- 1.3.③セミナー・ウェビナー
- 2.リードナーチャリングが重要とされる理由
- 3.リードナーチャリングのメリット
- 4.リードナーチャリングのデメリット
- 5.まとめ
リードナーチャリングの3つの手法
不動産売買仲介営業で活用される代表的なリードナーチャリングの手法には、メール、SNS、セミナー・ウェビナーの3つが挙げられます。
それぞれの具体的なアプローチ方法について解説します。
①メール
1つ目の方法は、見込み顧客と継続的なコミュニケーションを図るために、定期的にメールを配信することです。
読み手にとって有益かつ魅力的な情報を配信することで、見込み顧客と良好な関係性を築けるようになります。
また、配信したメールを経由して、ホームページや問合せフォームなどへのアクセスにつなげることも可能です。メールの内容には、物件紹介やセミナー案内、キャンペーンの告知などが有効といえます。
▼メールによるアプローチ例
- 物件の新着情報やセミナー案内などをメールマガジン(以下、メルマガ)で一斉配信する
- 不動産査定サイトに問合せした、または資料請求やセミナーに参加した見込み顧客に、ステップメールを個別に送信する
- 見込み顧客の属性・温度感を分類して、送信内容を変更して配信する
②SNS
2つ目の方法は、SNS(Social Networking Service:ソーシャルネットワーキングサービス)の活用です。
総務省の『令和3年版 情報通信白書』によると、スマートフォンの普及拡大に伴い、SNSは全年齢平均で7割以上の人が利用しています。そのため、SNSでの情報発信やユーザーとのコミュニケーションは、見込み顧客の育成につながる有効な施策の一つと考えられます。
▼年齢階層別SNSの利用状況
画像引用元:総務省『令和3年版 情報通信白書』
特に利用率が高い10〜50代に対しては、潜在顧客を含む幅広い見込み顧客へのアプローチが可能です。SNS上で見込み顧客(フォロワー)とコミュニケーションを取ったり、アンケート・キャンペーンに参加してもらったりすることで、顧客の自社に対する信頼度や愛着度の向上が期待できます。
▼SNSにおけるアプローチ例
- 写真・動画付きで物件の新着情報を投稿して、物件の魅力を伝える
- セミナー参加や来店予約で特典を付与するSNSキャンペーンを実施する
- 自社での売買事例をHPに掲載し、SNSから誘導する
- 営業担当者の視点から、物件探しや売買のお役立ち情報を発信する
出典:総務省『令和3年版 情報通信白書』
③セミナー・ウェビナー
3つ目の方法は、セミナー・ウェビナーの実施です。見込み顧客の課題や不安を解消するテーマを基に実施することで、物件の売却や購入の意思決定を促して、商談につなげることが期待できます。
また、セミナー・ウェビナーの参加者は、「所有する物件を売却したい」「住宅を購入したい」など、ある程度不動産の売買に興味関心があると考えられます。そのため、確度の高い見込み顧客の選別にも役立ちます。
メルマガやSNSを活用して「どのような課題があるか」「何の情報を知りたいか」などのアンケートを行い、需要がありそうなテーマで開催することも一つの方法です。
▼セミナー・ウェビナーでのアプローチ方法
- 売買に対する顧客の希望や知識の習熟度に応じたテーマ別に開催する
- 不動産売却・購入の流れについての情報提供を行う
- 自社の紹介物件に対する住宅ローンの情報提供・返済シミュレーションを行う
- 開催後に個別相談会を実施して温度感を測る
リードナーチャリングが重要とされる理由
不動産売買仲介営業でリードナーチャリングが重要とされる理由には、顧客行動の変化、検討期間の長期化が挙げられます。
ここでは、それぞれの内容について詳しく解説します。
顧客行動の変化
現代では、さまざまなアプリケーションの登場や、顧客と企業の接する機会の多様化によって、顧客の情報収集方法が変化しています。
実際に、国土交通省の調査によると、物件や施工会社の情報をインターネットで収集している世帯が、直近5年間で増加していることが報告されています。
画像引用元:国土交通省『令和3年度 住宅市場動向調査 ~調査結果の概要(抜粋)~』
このように、顧客行動が変化することで、従来主流といわれたチラシや看板、物件見学会などといった営業手法では、見込み顧客との接点を得にくくなっています。
見込み顧客と良好な関係性を構築して、商談のハードルをクリアするには、インターネットを活用したリードナーチャリングが重要といえます。
出典:国土交通省『令和3年度 住宅市場動向調査 ~調査結果の概要(抜粋)~』
検討期間の長期化
見込み顧客の検討期間が長くなりやすいことも、リードナーチャリングが重要とされている理由の一つです。
不動産売買仲介営業では、取り扱う物件の金額が高額になるため、紹介を除いては住宅購入のリピーターはほとんどないと考えられます。
画像引用元:国土交通省『令和3年度 住宅市場動向調査報告書』
国土交通省の『令和3年度 住宅市場動向調査報告書』で示される住宅取得世帯の住宅取得回数を見ると、すべての住宅の種類において、“今回が初めて”の割合が多いことが分かります。注文住宅、分譲一戸建て住宅、中古マンションでは約8~9割、分譲マンション、中古一戸建て住宅では7割以上となっています。
また、競合他社との比較や情報収集に時間をかける顧客もいるため、物件の売却や購入を決めるまでの検討期間が長くなりやすいといった特徴があります。
LIFULL HOME’Sが『過去1年以内に住み替え、住まい購入の契約をした人』を対象に行ったインターネット調査では、1年以上の検討期間を経て住宅購入に至ったと回答した顧客が一定数いることが分かります。
▼住宅購入の検討期間
マンション(新築・中古) |
|
---|---|
新築分譲一戸建て |
1年以上2年未満:29.7% |
注文住宅 |
5年以上が30.1% |
このように、不動産の売買は見込み顧客の検討期間が長くなりやすいため、リードナーチャリングによる中長期的なアプローチが重要といえます。
出典:国土交通省『令和3年度住宅市場動向調査報告書』
リードナーチャリングのメリット
リードナーチャリングを実施することで、不動産売買仲介の営業を効率的に進めることが可能になります。リードナーチャリングを実施する主なメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 営業効率を高められる
- コストを削減できる
- 休眠顧客を有効活用できる
追客システムや情報整理ツールなどを活用してリードナーチャリングを実施すると、見込み顧客の売却・購買においての段階や検討度合いを可視化することが可能です。購買意欲が高まった時点で営業アプローチを行えるため、商談移行の確度が高まり、効率的な営業活動が行えます。
飛び込みや無作為なテレフォン・アポイントメントによる労力・時間を削減して、人件費・交通費といったコスト削減にもつながります。
一度セミナー参加や資料請求などで接点を持ったものの、商談・成約につながらなかった休眠顧客の掘り起こしができることもメリットの一つです。
このような休眠顧客への再アプローチは、新規顧客の獲得と比べて労力・コストを削減できます。
リードナーチャリングのデメリット
リードナーチャリングを実施する際は、デメリットを踏まえて社内の運用体制を整えることが重要です。主なデメリットとして次の3つが挙げられます。
- 短期の効果が期待できない
- 人材資源が必要
- 見込み顧客の母数が必要
リードナーチャリングでは、有益な情報提供を通じて長期的なアプローチを行うため、すぐに商談・成約へとつなげることは難しいと考えられます。
また、メールやSNS、セミナー運用などには、コンテンツの作成・運用が必要になるため、人材を確保して運用体制を整備する必要があります。
さらに、アプローチ対象となる見込み顧客を十分に確保できていない場合には、効率的なリードナーチャリングを行えません。事前にWeb広告やSNS運用などを活用して、母数を増やす取組みが必要です。
まとめ
この記事では、不動産売買仲介営業におけるリードナーチャリングについて、以下の項目で解説しました。
- リードナーチャリングの3つの手法
- リードナーチャリングが重要とされる理由
- リードナーチャリングのメリット
- リードナーチャリングのデメリット
不動産売買仲介営業では、顧客行動の変化や検討期間の長期化によって、従来のアナログなアプローチでは見込み顧客との接点を図りにくくなっています。
競合他社との差別化を図りつつ、成約へとつなげるためには、中長期のアプローチを視野に入れたリードナーチャリングが有効です。アプローチ手法には、メールやSNSによる情報発信、セミナー・ウェビナーの実施が挙げられます。
リードナーチャリングを行うことで、営業の効率化やコスト削減が期待できます。ただし、実施には人材資源とアプローチする母数が必要になるため、運用体制を整備するほか、十分な見込み顧客を獲得しておくことが重要です。
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