不動産業界にDXが必要とされる理由とは? 役立つツールも解説
今日、ビジネス環境や消費者ニーズの変化に対応し、経済社会での競争性を高めていくために、推進されているのがデジタル技術・データを活用したDX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)です。
不動産業界においても、生産性の向上や新たな価値の創出に向けてDX化が期待されています。
この記事では、不動産業界にDXが必要とされる理由をはじめ、DX推進に役立つツールを紹介します。
目次[非表示]
- 1.不動産業界にDXが必要とされる理由
- 2.不動産DXに役立つツール
- 2.1.①不動産査定ツール
- 2.2.②営業支援ツール/追客ツール
- 2.3.③競合分析ツール
- 3.まとめ
不動産業界にDXが必要とされる理由
不動産業界にDXが必要とされる理由には、人手不足や長時間労働、業務の属人化などが挙げられます。
①人手不足
不動産業界の人手不足は、DXが必要とされる理由の一つです。
▼不動産業・物品賃貸業が「労働者不足」と回答した企業の割合
2019年8月 |
2020年8月 |
2021年8月 |
---|---|---|
50% |
37% |
33% |
厚生労働省『労働経済動向調査(2019 年8月)の概況』『労働経済動向調査(2020 年8月)の概況』『労働経済動向調査(令和3年8月)の概況』によると、不動産業・物品賃貸業において「労働者不足」と回答した企業の割合は徐々に減少しています。
しかし、2021年8月時点でも33%と、労働者不足を感じる企業は少なくありません。
また、従業員の高齢化に伴う後継者不在も問題となっています。
画像出典:経済産業省『不動産業ビジョン2030』
経済産業省『不動産業ビジョン2030』によると、2018年時点で不動産業の後継者不在率は68.9%と全体平均の66.4%よりも高くなっています。DXを推進することで、人手不足や後継者不足の解消が期待できます。
(出典:厚生労働省『労働経済動向調査(2019 年8月)の概況』『労働経済動向調査(2020 年8月)の概況』『労働経済動向調査(令和3年8月)の概況』/経済産業省『不動産業ビジョン2030』)
②長時間労働
DXの推進は、不動産業界の労働環境改善のためにも必要です。不動産営業では、商談や内見、鍵の受け渡しなどのほか、資料作成・契約書作成・顧客管理といった事務業務も発生します。
これらの業務は顧客の要望に応じてスケジューリングするため、営業時間外での対応が必要になるケースもあります。
また、ノルマ制を採用している会社では目標達成のために長時間労働が発生するケースも少なくありません。長時間労働の是正には、担当者の負荷を軽減するためにIT技術を役立てられます。
③業務の属人化
不動産営業の業務が属人化しやすいことも、DXが必要とされる理由です。
不動産の賃貸・売買仲介業や管理業の業務は、物件の取得・顧客対応・内見案内・追客・契約書作成などと幅広いです。
営業担当者ごとに業務プロセスや対応方法が異なると、スキル・品質に差が生まれやすくなります。業務が属人化するほか、若手社員への教育や担当者間の引継ぎに負担がかかってしまうといった課題があります。
このような属人的な業務体制を改善するには、DX推進によって業務を可視化し、ベテラン社員の知識や経験を社内共有できる環境づくりが必要です。
不動産DXに役立つツール
不動産会社がDXを進めるには、業務効率化や情報共有などに役立つITツールの活用がカギです。ここからは、不動産業界でのDX推進に活用できる3つのツールを紹介します。
①不動産査定ツール
査定業務でノウハウの共有・スキルの平準化を実現するためには、AIを用いた不動産査定ツールの導入が有効です。
売主(不動産オーナー)に対する不動産の査定業務には、高度なスキルや経験が求められます。査定業務をベテラン社員のみで行っている場合は若手人材がなかなか育たずに、将来的な人手不足につながる可能性もあります。
また、査定精度は個人のスキルに依存するため、査定額が担当者によって異なるといった問題もあります。不動産査定ツールを導入することで、以下のような効果が期待できます。
▼不動産査定ツールの導入で期待できる効果
- 査定業務の効率化
- 査定の精度・スキルの平準化による属人化の解消
AIが自動で不動産の売却価格を査定するため、査定業務の効率化を図れます。さらに、査定時間の短縮により、そのほかの業務や若手人材の育成に時間を充てられるようになります。
そのうえ、査定の自動化によって担当者ごとのスキルの差がなくなり、査定スキルを平準化することも可能です。属人化の解消や若手人材への育成にも活用できます。
②営業支援ツール/追客ツール
商談や追客などの顧客対応を効率化するには、営業支援ツール・追客ツールの導入が有効です。
アナログな方法で商談管理・顧客管理を行っている場合、担当者に業務負荷がかかりやすいほか、データ共有が進まずに業務が属人化しやすくなります。
▼営業支援ツール・追客ツールの導入で期待できる効果
- 営業効率の向上
- 業務負荷軽減による長時間労働の改善
- 業務の可視化・共有による属人化の解消
手作業で行っていた業務をデジタル化・自動化することにより、営業効率を向上できます。また、担当者の業務負荷を軽減できるため、長時間労働の防止にも有効です。
さらに、不動産営業で発生するデータを一元管理して社内全体のデータ共有がスムーズになることで、属人化の解消にもつながります。ベテラン社員のスキルや知識を標準化すれば、若手人材の育成にも役立ちます。
③競合分析ツール
適切かつスピーディに競合他社の物件分析を行うには、競合分析ツールの導入が有効です。
不動産ポータルサイトで自社の流通物件広告を掲載する場合、競合他社との競争性が高く、自社の掲載ページを見てもらえないことも考えられます。ユーザーからの反響を獲得するためには、掲載する文章や画像を工夫して差別化を図ることが重要です。
また、物件分析を一部の担当者のみで対応している場合、属人化が起こらないような対策も求められます。
▼競合分析ツールの導入で期待できる効果
- 競合分析の結果を反映した広告掲載による反響数の向上
- 競合他社との物件分析業務の属人化解消
競合分析ツールによって競合他社の掲載状況やスコアを確認できれば、掲載店舗数の少ない物件を優先して掲載したり、オプション付与の優先順位を決めたりすることができます。
さらに、物件分析業務の属人化を解消し、効率的なポータルサイト運用につなげることも可能です。
まとめ
不動産営業では、対応する業務の範囲が広く、業務品質が担当者の経験・ノウハウに依存して属人化しやすい特徴があります。
属人化に加え、不動産業界の人手不足や長時間労働などの課題を解消するには、デジタル技術を活用した生産性の向上・価値の創出に向けたDX推進が必要です。
不動産業のDX推進には、不動産査定ツールをはじめ、営業支援・追客ツール、競合分析ツールなどの活用が有効です。不動産業のDX実現に向けて、自社の課題に合ったツールを導入してはいかがでしょうか。