【不動産業界向け】DXが進まない理由とDX推進における3つのメリット
人手不足やコロナ禍でのビジネスモデルの変化に対応するために、さまざまな業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)の取組みが推進されています。
ところが、不動産業界は紙面でのやり取りや対面営業が中心となっているため、ITツール・デジタル技術を活用したDXが十分に進んでいない状況です。
この記事では、不動産業界におけるDXの現状と、DX実現に向けた取組みが進まない理由、DX推進のメリットについて解説します。
なお、不動産業界にDXが必要とされる理由や役立つツールについては、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
≫ 不動産業界にDXが必要とされる理由とは? 役立つツールも解説
目次[非表示]
- 1.不動産業界におけるDXの現状
- 2.不動産業界のDXが進まない理由
- 3.不動産業界がDXに取り組む3つのメリット
- 3.1.①多様な働き方の実現
- 3.2.②業務の効率化
- 3.3.③顧客満足度の向上
- 4.まとめ
不動産業界におけるDXの現状
DXとは、デジタル技術・データ活用を通して、働き方や商品・サービスなどのビジネスモデルを変革する概念を指します。顧客のニーズに迅速かつ柔軟に対応して、市場における優位性を確立するためには、DXによるビジネスモデルの変革が求められます。
不動産業界の場合、「ITツールを導入して営業活動をオンライン化する」「Webを利用した新たなサービスを導入する」などの取組みが挙げられます。
しかし、不動産業界では契約に関する書面のやり取りや内見業務があるため、業務のデジタル化が難しく、依然としてDX化が進んでいない状況です。
総務省がまとめた『令和3年版 情報通信白書』によると、DXに取り組んでいる企業は、産業全体で22.8%となっています。
また、業種別のDXの取組み状況を見ると、「2018年度以前から実施している 」「2019年度から実施している」「2020年度から実施している」という3つを合計して、不動産業・物品賃貸業は23.3%となっています。特に取組みが進んでいる情報通信業(通信業)の51%と比べると、十分に進んでいないことが分かります。
▼業種別DXの取組み状況
画像引用元:総務省『令和3年版 情報通信白書』
一方、自然災害や感染症の流行など、非常時の事業継続に備えてテレワークの導入を進める企業は増えており、不動産業界も例外ではありません。
総務省の『令和2年 通信利用動向調査報告書(企業編)』によると、テレワークを導入している企業は、2018〜2020年までの間で大きく増加しています。
画像引用元:総務省『令和2年 通信利用動向調査報告書(企業編)』
不動産業界のテレワーク導入率は、2019年時点で25.4%でしたが、2020年には68.1%となり、2.5倍以上増加しています。
このようにテレワーク導入が進むなか、日々の営業活動や業務プロセス、顧客対応などについてもオンラインで対応できる環境の構築が求められています。
不動産業のDX推進は、コロナ禍において顧客の安全を守りつつ、事業継続や顧客獲得につなげるためにも必要といえるでしょう。
(出典:総務省『令和3年版 情報通信白書』『令和2年 通信利用動向調査報告書(企業編)』)
不動産業界のDXが進まない理由
不動産業界のDXが進まない理由として、紙面でのやり取りや対面での商談・会議など、アナログな商慣習が残っていることが挙げられます。
そこには、不動産取引に用いる重要事項説明書・契約書について、書面での交付が法律で義務付けられている背景があります。
▼宅地建物取引業法で定められている義務
- 重要事項説明書の交付:宅地建物取引業法第35条
- 契約書の交付:宅地建物取引業法第37条
重要事項説明書や契約書は、データ化して送付することは法的に認められていないため、契約書面のIT化・デジタル化が進みにくくなっています。
また、不動産取引は貸主・借主、売主・買主によって条件が異なるため、対応のマニュアル化が難しく、対面での交渉・説明が求められるケースも多く見られます。
この状況のなか、不動産業界のDXを推進するにはITツールやシステムを活用して、従来の業務フローを大きく変える必要があります。まずは現状の商慣習の課題を洗い出したうえで、業務フローや社内ニーズを考慮して、必要な箇所からDXを進めていくことが重要です。
(出典:e-GOV法令検索『宅地建物取引業法』)
不動産業界がDXに取り組む3つのメリット
アナログな商慣習が残っている不動産業界ですが、ITツールやシステム活用によってDX推進を図ることで、さまざまなメリットが期待できます。
ここでは、不動産業界がDXに取り組むメリットを3つ紹介します。
①多様な働き方の実現
ITツールやシステムを導入して、場所に制限なく業務ができる環境を構築することで、多様な働き方を実現できます。
たとえば、自宅にいながら事務作業・顧客対応を行う、会議や商談をオンラインで行うなど、従業員の個別事情に応じて働く場所を選択できるようになります。
多様な働き方を実現するための有効なITツール・システムには、以下が挙げられます。
▼多様な働き方を実現できるITツール・システムの例
- 顧客管理や営業管理ができるクラウドシステム
- 社内のコミュニケーションが取れるチャットツール
- オンライン会議・商談ができるビデオ通話ツール
②業務の効率化
これまで手作業で行っていた業務や紙面で管理していた書類などをデジタル化することで、業務の効率化につながります。
定型業務や時間のかかる業務を自動化・効率化することで、商談・契約交渉などの重要業務に注力できるようになります。その結果、生産性の向上や売り上げの向上も期待できます。
業務をデジタル化する方法として、以下が挙げられます。
▼業務をデジタル化する方法
- SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)などを導入して、顧客情報、商談履歴などのデータを一元管理する
- 顧客への反響メール返信を自動化する
- 各契約関連書類の作成・管理ツールを導入して、Web上で作成・社内共有する
③顧客満足度の向上
ITツールやシステムを用いて、新たなサービスを提供することで、顧客満足度の向上につながることが期待されます。
また、システムによって蓄積した顧客データを分析すれば、ニーズに対応したサービス提供につなげることも可能です。
DXによって創出できる新たなサービス例として、以下が挙げられます。
▼不動産業界における新たなサービス例
- 物件案内、重要事項説明をビデオ通話ツールで行う
- VRを使って内見を行う
- 物件問合せや契約の質問などをチャットで受け付ける
- 来店・内見予約をWeb上で行えるシステムを導入する
なお、ITを活用した重要事項説明(IT重説)は、ビデオ通話などを用いてオンラインで行うことも可能です。ただし、オンラインで重要事項説明を行う場合は、事前に重要事項説明書を書面で送付する必要があります。
(出典:国土交通省『IT重説本格運用(平成29年度~)』)
まとめ
この記事では不動産業界のDXについて、以下の項目を解説しました。
- 不動産業界におけるDXの現状
- 不動産業界のDXが進まない理由
- 不動産業界がDXに取り組むメリット
現在の不動産業界は、金融業・保険業・情報通信業などと比べても、DXの取組みが十分に進んでいるとはいえません。その理由として、書類でのやり取りや対面での商談・会議といった、アナログな商慣習が残っていることが挙げられます。
コロナ禍において顧客の安全を守りつつ、業務プロセス改善や新サービスの提案によって顧客獲得につなげるためには、DXの推進が不可欠です。
ITツール・システム活用によってDX化を図ることで、テレワークをはじめとする多様な働き方の実現、業務の効率化、顧客満足度の向上などが期待できます。
アナログな商慣習から脱却して、ビジネスモデルの変革を図るためにも、DX推進の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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