不動産業界におけるビッグデータの活用領域と注意点
スマートフォンの普及やIoTの進展など、デジタル化が進む現代では、多様かつ膨大なデジタルデータ、通称“ビッグデータ”がインターネット上に生成・蓄積されています。
ビッグデータを活用することで、顧客のニーズに応じたサービスの提供や業務の効率化、新たなビジネスモデルの創出などにつながると期待されています。
DX化の推進も追い風となって、さまざまな分野でビッグデータの活用が注目されており、不動産業界も例外ではありません。
不動産仲介会社のなかには、ビッグデータを「自社でどのように活用できるのか」「活用する際はどのようなことに気をつけたらよいか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ビッグデータとは何か、不動産業界における活用領域や注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.ビッグデータとは
- 2.不動産業界でのビッグデータの活用領域
- 2.1.①営業活動の効率化
- 2.2.②不動産価格の査定
- 2.3.③投資用不動産の価値予測
- 3.ビッグデータを活用する際の注意点
- 3.1.データ分析の目的を定める
- 3.2.仮説検証を繰り返す
- 4.まとめ
ビッグデータとは
ビッグデータとは、スマートフォンやIoT関連機器、インターネット、テレビなどで得られる膨大なデータのことです。たとえば、位置情報や行動履歴、視聴・消費行動に関する情報などが挙げられます。
ICT・IoTの進展に伴い、さまざまなデジタル端末やモノがインターネットとつながる時代となり、多種多量なデータの生成・収集・蓄積をリアルタイムで行えます。
総務省が公表している『平成29年版 情報通信白書』では、ビッグデータの範囲を大きく4つに分類しています。
▼ビッグデータの分類
分類 |
内容 |
|
---|---|---|
1 |
国や地方公共団体が提供するオープンデータ |
『官民データ活用推進基本法』を踏まえた公共情報 |
2 |
企業のノウハウをデジタル化・構造化したデータ |
ビジネス活動や産業活動などによって企業が持ち得るノウハウ |
3 |
M2M(モノ同士のデータ通信)により収集・生成されるデータ |
橋梁(きょうりょう)に設置されたIoT機器からのセンシングデータ(歪み、振動、通行車両の重量など) |
4 |
個人の属性に関わるパーソナルデータ |
属性情報、行動・購買履歴、ウェアラブル機器から収集された情報など |
総務省『平成29年版 情報通信白書』を基に作成
出典:総務省『平成29年版 情報通信白書』
不動産業界でのビッグデータの活用領域
不動産業界でビッグデータを活用できる領域として、以下の3つが挙げられます。
①営業活動の効率化
WebサイトやSNSなどで生成されるパーソナルデータは、不動産営業の効率化に役立ちます。
Webサイト・SNS・メール・Web広告などの閲覧状況や行動をビッグデータとして蓄積・分析することで、以下のような情報をリアルタイムで把握できるようになります。
▼リアルタイムで把握できる情報例
- 閲覧した物件情報
- メール開封後の行動
- Webサイトに訪れているユーザー情報
このような情報を基に、顧客の潜在的なニーズを把握したり、適切なアプローチタイミングを見極めたりすることが可能です。
顧客のニーズや検討段階に合わせて営業アプローチを行うことで、成約につながる可能性を高めることが期待されます。
なお、成約率の向上が期待できる不動産営業の方法として、反響営業が挙げられます。詳しくは、こちらの記事で解説しています。
≫ 不動産の反響営業とは? メリットや手法、コツなどを解説
②不動産価格の査定
不動産業界でビッグデータが活用される領域には、不動産価格の査定も挙げられます。
不動産売買・賃貸の仲介では、物件の売却価格・販売価格、賃料の査定が必要です。その際、立地や築年数、周辺環境など多数の情報を考慮する必要があり、専門的な知識・ノウハウが求められます。
ビッグデータを用いることで、類似物件や取引実績などの情報を踏まえて、迅速に不動産査定を行えるようになります。
③投資用不動産の価値予測
投資用不動産の価値を予測する際にも、ビッグデータが活用されています。
不動産投資では、“どれほどの収益になるのか”という点が重要です。しかし、物件に関するさまざまな情報を収集・比較するには膨大な時間がかかります。
そこで、AIにビッグデータを学習させることで、収益につながる価値の高い不動産情報を顧客に提供できます。迅速に情報を提供できるだけでなく、担当者の業務負担軽減にもつながります。
ビッグデータを活用する際の注意点
不動産業界でビッグデータを活用する際は、以下の2点に注意が必要です。
データ分析の目的を定める
ビッグデータをどのように活用するのか、目的を定めたうえでデータの取得場所・方法の決定が必要です。
目的を定めずにデータを収集すると、不要なデータが蓄積されるほか、分析途中で方向性を見失い、正しい分析を行えない可能性があります。
営業ノウハウを分析して組織のスキル向上を図るのか、顧客情報を分析してアプローチ精度を高めたいのかなど、分析の目的を定めることで、取得が必要なデータの見当がつきます。
仮説検証を繰り返す
必要なビッグデータを収集・蓄積したあとは、仮説検証を繰り返して分析を行うことも重要です。
収集したデータの特性について事前に仮説を立て、分析することで、問題解決に向けた打ち手を検討できるようになります。
仮説検証の例として、以下が挙げられます。
▼仮説検証の例
①目的設定 |
Webサイトからの物件問合せ数を増やしたい |
---|---|
②仮説 |
不動産ポータルサイトに広告を掲載すれば、自社への流入が増えるのではないか |
③データの取得 |
問合せにつながったユーザーの流入経路、滞在時間など |
④検証 |
不動産ポータルサイトからWebサイトに流入して問合せに至った・至らなかったユーザー情報を分析する |
まとめ
この記事では、不動産業界におけるビッグデータの活用について、以下の項目で解説しました。
- ビッグデータの定義と範囲
- 不動産業界における活用領域
- ビッグデータを活用する際の注意点
ビッグデータは、不動産業界において営業活動の効率化や不動産価格の査定などに活用できます。ただし、ビッグデータを有効活用するためには、事前に分析の目的を設定して、仮説検証・取得データの分析を繰り返すことが重要です。
DX化の推進が進むいま、不動産業界においても、積極的にビッグデータを活用した営業活動を行ってみてはいかがでしょうか。
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