不動産業の開業資金はいくらかかる? 初期費用や運営資金などを解説
不動産業の独立開業にはまとまった資金が必要です。開業時に必須となる費用だけではなく、その後の運営を支える資金を用意しておくことも欠かせません。
今後、不動産業で独立することを考えている方は必要な初期費用や運営資金について理解を深めたうえで、具体的な資金計画を立てる必要があります。
この記事では、不動産業の開業にかかる資金をまとめて解説します。
目次[非表示]
- 1.不動産業の開業にかかる資金の目安
- 2.不動産開業にかかる初期費用
- 2.1.事務所設置費用
- 2.2.宅地建物取引業免許の申請手数料
- 2.3.営業保証金
- 2.4.宅建協会の入会金
- 3.そのほか必要になる費用・資金
- 4.まとめ
不動産業の開業にかかる資金の目安
不動産業の開業資金は、約400万~1,000万円が目安とされています。
ただし、全日本不動産協会に加入しない場合には営業保証金の支払いが必要になるため、約1,000万~1,800万円の費用がかかります。
また、上記に加えて、事務所の設立費用や運転資金、委託費用なども必要です。各費用の詳細について、次項で詳しく説明します。
(出典:公益社団法人 全日本不動産協会 埼玉県本部『不動産で独立するときに資金はいくら必要?』より)
不動産開業にかかる初期費用
不動産業を開業するときの初期費用には、主に4つの項目が挙げられます。
- 事務所設置費用
- 宅地建物取引業免許の申請手数料
- 営業保証金
- 宅建協会の入会金
事務所設置費用
宅地建物取引業を営む場合は免許が必要です。その免許を取得するには、事務所を設置することが必須となります。事務所の設置にあたっては、物件を借りるための費用をはじめ、設備機器や通信費用がかかります。
▼事務所設置費用の相場
項目 |
費用の目安 |
---|---|
物件費用
(敷金、賃料、内装工事費)
|
100万~300万円 |
設備機器費用
(OA機器、オフィス家具)
|
20万~100万円 |
通信費 |
5万~10万円 |
宅地建物取引業免許の申請手数料
宅建業を営むにあたり、国土交通大臣または都道府県知事による登録免許が必要です。免許登録にかかる手数料については、“国土交通大臣免許”と“都道府県知事免許”の2つの免許区分によって異なります。
▼宅地建物取引業免許の申請手数料
区分 |
宅建業免許申請 |
費用(収入印紙代) |
---|---|---|
1つの都道府県に事務所を設立する場合 |
都道府県知事免許 |
3万3,000円 |
2つ以上の都道府県に事務所を設立する場合 |
国土交通大臣免許 |
9万円 |
(出典:公益社団法人 全日本不動産協会 埼玉県本部『不動産で独立するときに資金はいくら必要?』/国土交通省『宅地建物取引の免許について』より)
営業保証金
宅地建物取引業法(宅建業法)では、不動産業の開業にあたって営業保証金の供託が義務付けられています。営業保証金については、以下のように本店と支店で費用が異なります。
▼営業保証金
営業所の種類 |
費用 |
---|---|
主たる事務所(本店) |
1,000万円 |
その他の事務所(支店) |
1ヶ所につき500万円 |
このように、営業保証金には高額な費用が必要ですが宅建協会に加入することによって免除されます。その代わりに、弁済業務保証制度が適用されるため、以下の分担金が必要です。
▼弁済業務保証金分担金
営業所の種類 |
費用 |
---|---|
主たる事務所(本店) |
60万円 |
その他の事務所(支店) |
1ヶ所につき30万円 |
宅建協会に入会し、弁済業務保証金分担金を収めることにより、開業時の初期費用を抑えられます。
(出典:公益社団法人 全日本不動産協会 埼玉県本部『不動産で独立するときに資金はいくら必要?』より)
宅建協会の入会金
宅建協会に加入すると、営業保証金の供託が免除されるほか、レインズ(※1)を利用できる指定流通機構の会員になれます。
また、業界の情報や経営に役立つ情報が得られたり、万が一のときのサポートが受けられたりするなどのメリットもあります。各都道府県にある宅地建物取引業協会の団体への加入が必要です。
宅建協会の入会金については、団体や地域によって異なりますが、東京都での目安は以下のとおりです。
▼宅建協会の入会金
宅建協会 |
入会金 |
---|---|
全国宅地建物取引業協会連合会 |
約130万~180万円 |
全日本不動産協会 |
約160万円 |
※キャンペーンによる割引は除きます
※1…レインズとは、不動産物件情報交換のために使用されるコンピュータネットワークシステムのこと
(出典:公益社団法人 東京都宅地建物取引業協会『キャンペーン期間限定(初年度)入会諸費用』/公益社団法人 全日本不動産協会 東京都本部『入会諸費用について』より)
そのほか必要になる費用・資金
開業時に必須となる費用に加えて、委託費用や運営資金なども準備しておく必要があります。
委託費用
不動産会社設立に関連する事務的な手続きを税理士や行政書士に委託すると、追加費用が発生します。
▼委託費用の目安
項目 |
費用の目安 |
---|---|
法人設立 |
約20万円 |
司法書士への報酬 |
約8万~10万円 |
開業時にはさまざまな業務が発生するため、業務委託する場合の費用を踏まえて検討することが重要です。
開業後の運営資金
開業時の初期費用に加えて、ランニングコストも考慮する必要があります。毎月かかる費用としては、以下が挙げられます。
▼事業運営に必要なランニングコスト
- 事務所の賃料
- 光熱費
- 通信費
営業所の数や賃料によっても異なりますが、3ヶ月で約60万~200万円の資金が必要です。
人件費
開業にあたり従業員を雇用する場合には人件費が発生します。人件費には、以下のような費用が含まれます。
▼人件費の目安
項目 |
費用の目安 |
---|---|
給与(初任給の場合) |
20万円前後 |
宅地建物取引士の資格手当 |
5,000~3万円 |
上記のほかにも、従業員の交通費やボーナス、社会保険料の支払いが必要です。役員の場合は、さらに人件費がかかることも考慮しておかなければなりません。
まとめ
不動産業の開業では、宅建協会へ加入するか否かで初期費用が大きく変わります。事務所の設置費用や免許申請手数料なども含めて、必須となる開業資金を用意しておくことが重要です。
また、経営が軌道に乗るまでの間、資金繰りに困らないように、開業後の運営資金を備えておくことも欠かせません。将来を見通したうえで、計画的な資金管理を行いましょう。
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