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カーボンニュートラルの実現に向けて賃貸事業者ができることは

LIFULL HOME’S総研の中山です。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界情勢は急激に不安定になっています。ウクライナのNATO加盟を阻止することが目的とされ、一義的にはウクライナ東部の親ロシア派住民を守るためと称しての侵攻です。

これによって多くの尊い人命が失われ、多くの建物・施設が破壊され、数多くの武器や弾薬が使用されることで環境に与える負荷も極めて高く、侵攻前の状態に戻すことは極めて困難といわれています。

また世界の小麦倉庫といわれるエリアでもあり、今後穀物価格の高騰やエネルギー価格の上昇によるインフレも予測される状況ですから、一刻も早く侵攻が終わることを願わずにはいられません。

今回は、カーボンニュートラルの実現に向けて賃貸事業者ができることについてまとめました。

目次[非表示]

  1. 1.2050年カーボンニュートラルを目指すには建築物の省エネ性能の向上が不可欠
    1. 1.1.1. 建築物の省エネ性能の一層の向上について
    2. 1.2.2. CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進について
    3. 1.3.3. 既存建築ストックの長寿命化について

2050年カーボンニュートラルを目指すには建築物の省エネ性能の向上が不可欠

戦争行為は環境負荷に与える影響が極めて大きいのですが、平常時においてもカーボンニュートラル=温室効果ガス(主に二酸化炭素の排出量と吸収量を同じにして実質ゼロにするための施策)は待ったなしです。温室効果ガスの排出が増え続けてきたことで、地球規模の温暖化が進み自然災害が年々激甚化していることはご存じの通りです。

災害の激甚化によって大勢の人が被災すること、伝染病・感染症が多発すること、難民が発生することなどは地域経済に大きな打撃となるだけでなく、社会全体に深刻な影響を及ぼすことにつながります。

では、温室効果ガスの大幅削減、および2050年までに温室効果ガスの排出量と削減量が拮抗するカーボンニュートラルの実現に向け、建築業・不動産業ができることとしては何があるのでしょうか。

日本のエネルギー消費量の約30%、木材需要の約40%を占める建築物の分野については、当然のことながら大規模かつ徹底的な対策が求められることになります。

この命題に関して国が施策として打ち出したのが「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物の対策を取りまとめ」です。

主に、建築物の省エネ性能の一層の向上、CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進、既存建築ストックの長寿命化の3点に集約されます。

これらを順に確認していきましょう。


1. 建築物の省エネ性能の一層の向上について

①新築の住宅・建築物

  • 2025年度以降に新築される住宅を含む、原則すべての建築物に省エネ基準適合の義務付け
  • 省エネ性能向上の促進を誘導すべき基準をZEH・ZEB基準へ引き上げること
  • 住宅性能表示制度の省エネ基準を上回る、新たな多段階等級の設定

 (他3項目)


②住宅・建築物

  • 増改築部分のみ省エネ基準への適合を求める合理的な規制の実施
  • 部分的・効率的な省エネ改修、耐震改修と合わせた省エネ改修や建て替えの促進

 (他2項目)


③住宅・建築物における再生可能エネルギーの利用促進

  • 地域の実情に応じた再生可能エネルギーの利用促進を図るための制度の導入
  • ZEH・ZEB等に対する関係省庁連携による支援、ZEH等の住宅の融資・税制面での支援

などが求められています。新たに建設される住宅だけでなく、②以降は既存住宅、つまり現存する中古住宅も対象とされています。

ですので、今後売買を手掛ける物件について、その省エネ性能の確認と必要に応じた省エネ性能の向上対策、それが将来的な資産性=再販売時の価格維持につながる可能性などについて、イメージを持っておくことが流通事業者には求められることになります。住宅の省エネ性能に関して意識の高い売主・買主と交渉する場面は、今後確実に増えてくるからです。


2. CO2貯蔵に寄与する建築物における木材の利用促進について

  • 高さ16m以下/3階建の建築物の構造計算合理化、建築士の業務区分の見直し
  • 構造計算が必要となる木造建築物の面積規模を300m2に引き下げ
  • 防火上区画した部分への防火規定の適用を除外し、木造化を可能とする

など、全部で9項目が挙げられています。

物件の売買に伴うリフォームに際して、これら木材の利用促進についても買主にアドバイスできる程度に知識・情報を更新しておくことで信頼性が高まることが期待されます。


3. 既存建築ストックの長寿命化について

  • 既存不適格物件に対する防火避難規定・集団規定の既存部分への遡及適用の合理化
  • 連担建築物設計制度等の対象に大規模の修繕・大規模の模様替えを追加

など4項目が盛り込まれています。

特に既存不適格物件についての対応は今後ハードルが上がることが想定されるので、築年数によらず既存不適格物件の取り扱いには留意する必要があります。

実際に上記の施策を推進するためには、住宅の安全確保や、用途変更時の柔軟で合理的な手続き方法、住宅への木材利用について主要構造部規制以外の構造基準や内装制限などの規制緩和なども検討されなければなりませんから、上記の対策を着実に実施していくのには課題が多いと言わざるを得ません。

ただし、大命題である2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにして実質ゼロにするのであれば、これら住宅産業に示された課題は、確実に、しかも速やかに対応していかなければならないのも事実です。

将来の世代に大きな禍根を残さないためにも、取り扱う賃貸物件のリフォームや建て替え、もしくは省エネ性能の向上について、大家さんに前向きな提案ができるよう情報収集を進めていただきたいと思います。

 
中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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