<第一回>コストをかけずに空室を優良物件化。時代に沿った市場の見極めが稼働率アップのカギ
物件オーナー様と管理会社様は常に空室を早期に解消して、満室経営をするにはどうすればいいのかと頭を悩ませているのではないでしょうか。コロナ禍も相まって都心の賃貸物件の空室率は年々増加しています。
人口は減り、世帯数が増えていないにもかかわらず賃貸物件の着工数はあまり減っていないことによる供給過多※と、相続税対策で不動産投資、アパート経営をする人が増えたことも原因のひとつといえます。
(出典:総務省統計局「住宅・土地統計調査」)
これから賃貸集合住宅の空室率が30%を超える時代が到来するといわれるなか、対策としての高額な設備投資を伴う「稼働率を向上させる施策」は数多くあります。
そのような状況下で、モノやサービスの提供だけでなく、幅広い事業バックグラウンドと5000社以上のICTコンサルティング実績を持つ通信企業株式会社アイテムが、デジタルマーケティングから見る、新たなマーケットをお探しの管理会社様に、賃貸物件稼働率アップの施策のひとつとして解説いたします。
WEB上から見えるデータを基に今後拡大が予想されるマーケットを可視化し、物件オーナー様や管理会社様が取り組むべきことについて全6回にわたって連載します。今回はその一回目です。
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都心部で加速する空室率の増加
RC造、SRC造などの「マンション系」の賃貸物件の空室率は2019年以降あまり変わっていませんが、市部など大学が多い地域では学生向けの賃貸物件が多く、昨今のリモート授業の取入れで、大学近くの物件を借りない学生も出てきています。
実際にはフルリノベーションされた最新設備の物件や、立地の良い物件は空くことなく常に人気です。では、お金をかけて設備投資を行い、最新設備にすれば空室率の増加は回避できるのでしょうか。
入居者の転居で部屋が空くたびに高額投資を行い、募集をかけて入居者を待っているのではコストがかかりすぎてしまいます。洗練された物件で他物件と差別化を図り、一部の層のみを対象にした賃貸物件提供だけを行っていくことは、果たしてこれからの対策として正しいのでしょうか。
高齢者の住み替え事情
総務省統計局のデータで高齢者のいる主世帯は一戸建てが59.9%、長屋建てが4.9%、共同住宅が34.9%で一戸建てに居住する割合が高いと出ています。
しかし、一戸建てを購入していても子の自立や伴侶の死去などで独居になった場合、一戸建てに住み続けることは、維持管理も含めて生活動線などを考慮すると、困難といえます。そこで老後の住まいとして家賃の安いワンルームへの転居を考えている人も少なくありません。
Googleの検索ボリューム数※※では「高齢者 一人暮らし」や「シニア 一人暮らし」等の関連性の高いワードで検索されている回数は2022年の平均で約38,000件/月間あり、約2万件が平均であった2021年と比較としても関心が高まっていることが分かります。
サービス付き高齢者向け住宅やシニア向けの分譲マンションなどもありますが、入居時の費用や月額が高額であること、住人同士でトラブルが起こっても簡単に転居ができないなどの理由から、自由度の高い賃貸物件への住み替えを希望する人が少なくないのです。
新たなマーケットへの訴求でターゲットを広げる
物件が溢れている現在、競合と同じような物件では差別化ができません。コストをかけずに差別化を図る方法は「ターゲットの見直し」です。ペットを飼いたい入居者や高齢者など、ターゲットを絞る、入居者の幅を広げることで費用をかけずに空室対策が可能です。
株式会社アイテムではその中でも、長期入居が多く、立地や設備へのこだわりが低い65歳以上のシニアマーケットに着目しました。企業のテレワークの導入やIターンの推奨などで、転居をする人は2019年に比べ2021年は全体で18%程度減少したといわれています※※※
学生は卒業までの期間が決まっていますし、社会人は条件のいい物件に転居しがちで、同じ物件に長く住むとは限りません。最新設備を整えても長期入居が期待できなければ採算が合わず、結果空室のまま放置になってしまいます。
高齢者への賃貸物件提供は危険?
高齢者への物件提供で多くの賃貸物件オーナー様、管理会社様が懸念することは大きく分けて二つ、
- 事故や孤独死のリスク
- 金銭面での不安
ではないでしょうか。
事故や孤独死などで発見が遅れると、場合によっては瑕疵物件となり、新たな入居者に敬遠される、家賃を下げる、フルリフォームのコストなど大きなリスクを負うことになります。また高齢入居者が年金のみの収入の場合、家賃の支払いが滞るのではないかといった不安もあります。
しかし逆に考えれば、孤独死を防止さえすれば高齢者は失業で収入がなくなるリスクがなく、長期入居で安定した家賃収入が見込める「質の良い入居者」といえるのではないでしょうか。
安定した家賃収入で稼働率アップを狙う!
若い人たちに人気の物件は話題にもなり、そのほかの物件も見てもらえるようになります。しかし全体的な稼働率を考えると「長期入居が見込めるかどうか」はかなり重要なポイントになります。
高齢者の入居を「稼働率が上がるから受け入れる」「何の対策もせずに受け入れればよい」というわけではありません。高齢者の入居に対してリスクを回避する対策として現在増えているのが「見守りサービスの導入」です。
入居の際にサービスに加入いただくことを条件にしたり、物件に付帯して家賃に上乗せして利用いただくなどすることで、物件オーナー様や管理会社様は安心して高齢者に物件を貸すことができ、高齢者も「もしもの事態」を懸念されて断られることがなくなるため双方にメリットとなります。
「コストをかけずに空室を優良物件化。時代に沿った市場の見極めが稼働率アップのカギ」のまとめ
一回目は「コストをかけない空室対策は時代に沿った市場の見極めが重要」というお話をさせていただきました。
次回は安定した入居者の獲得で空室対策と稼働率アップを狙う施策について、お話しさせていただければと思います。
<出典>
※賃貸住宅市場レポート2020
※※Googleキーワードプランナーより抽出
※※※転入・転出の動向調査【第2弾】-コロナ禍における引越し者数の変化
≫ お役立ち資料『空室率30%時代に向けた訴求すべきマーケット』