枠_左上
枠_右上

業界ネタ・トピックス

枠_左下
枠_右下

2023年以降の住宅流通に大きな影響を与えることになりそうな“ある変化”

LIFULL HOME’S総研の中山です。

今回は、2022年末に決まった「2023年度(令和5年度)税制改正大綱」の内容について、住宅および相続に関連する改正点を中心に解説します。

なお、住宅ローン減税の制度については2022年度から引き続き変更がありませんが、翌2024年度からは、新築住宅について住宅性能の高さに応じて積み増していた住宅ローン元本が引き下げられることが既に決まっていますから(例:ZEH住宅は元本上限が4,500万円から3,500万円になります)、なるべくお得に新築住宅を購入したい、もしくはご家族に新築住宅を購入させたい、とお考えの方は今年中に購入することをおすすめします。

中古住宅については2025年度まで現行の制度が維持されます。また、土地売買など所有権移転登記に対する登録免許税の軽減措置も3年延長されています。

目次[非表示]

  1. 1.中古マンション固定資産税減額の特例措置(2023年度創設)
  2. 2.贈与税の暦年課税と相続時精算課税制度の見直し(65年ぶりの大改正)
  3. 3.住宅購入目的の贈与税非課税枠の終了(見込み)
  4. 4.相続空き家売却益3,000万円特別控除の対象拡大

中古マンション固定資産税減額の特例措置(2023年度創設)

今回の税制改正大綱で創設された重点項目です。近年、築年数40年以上のマンションが増えてきていますが、その高経年のマンションで特に大規模修繕が実施されていないケースが増えており、このまま放置すると社会問題化しかねないとの指摘があります。

大規模修繕が行われない理由は、住民の高齢化による修繕積立金の不足や意識の低下によるものとされていますが、国は解決に向けて“長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンション”(この要件を満たすことがポイントです)に対し、工事翌年の建物部分の固定資産税を1/6〜1/2に減額することにしました。減税割合は市町村の条例で今後定められることになっています。

対象となるマンションの要件は
①築後20年以上が経過した総戸数10戸以上のマンション
②長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していること
③長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保していること

の3点です。

なお、この特例は2023年4月1日から2年間の適用期間となっていますから、条件に該当するマンションにお住まいの方は早めの活用がポイントです。

贈与税の暦年課税と相続時精算課税制度の見直し(65年ぶりの大改正)

親や祖父母から子や孫に資産継承するためには、「贈与」あるいは「相続」という手続きを経る必要がありますが、贈与税も相続時精算課税も非課税枠や控除制度の利用について別途手続きが必要で、資産継承の障害になっているとの指摘が以前からありました。

これについて今回見直しが行われ、2023年4月から、贈与税の「暦年課税」と「相続時精算課税」の制度が次のように改正されます。

①相続税に加算する生前贈与の期間を7年に延長
これまで相続開始前3年間の贈与については生前贈与として相続税加算の対象でしたが、これを7年に延長することにより、いわゆる“駆け込み贈与”を抑制し、より計画的に早い段階での資産継承を促進することが目的とされています。

②相続時精算課税制度の簡略化
これまで相続時精算課税制度の適用を受けるには「相続時精算課税選択届出書」の届出が必要で、贈与を受けるごとに確定申告しなければなりませんでしたが、年間110万円までの贈与であれば確定申告が不要になります。

上記2点の改正は、2024年1月1日以降の贈与・相続によって取得された資産にかかる贈与税および相続税に適用されます。

住宅購入目的の贈与税非課税枠の終了(見込み)

親や祖父母からの贈与についても原則としてもちろん贈与税が課されますが、
教育資金(1,500万円まで)、結婚・子育て資金(1,000万円まで)、そして住宅購入資金(2023年は省エネ住宅1,000万円/一般住宅500万円に縮小)については各々非課税枠が設けられています。

2023年度税制改正大綱では、教育資金および結婚・子育て資金については延長が明記されましたが、住宅購入資金に関しては何ら触れられておらず、したがって2023年末に協議される2024年度の税制改正大綱で再度(業界団体などからの)要望が通らない限り、住宅購入目的での贈与税非課税枠は2023年12月31日をもって終了する公算が高いと思われます。

なお、教育資金、結婚・子育て資金の贈与は、これまでは子や孫が対象の年齢を超えても特別税率での課税でしたが、改正後は一般税率で課税されます。この改正は2023年4月1日以後に贈与される資金から適用されます。

相続空き家売却益3,000万円特別控除の対象拡大

相続または遺贈によって取得した空き家および敷地等の売却益(=譲渡所得)を控除することができる「相続空き家の3,000万円特別控除」は、2023年度税制改正によってその対象が拡大します。

これまでは1981年5月31日以前に建築された住宅を解体もしくは耐震リフォームして売却した際の売却益(区分所有物件ではないことと相続開始前に被相続人以外に居住者がいないことが条件)について最大3,000万円までの特別控除が適用されていました。

改正後は売却後に買主が解体もしくは耐震リフォームした場合も控除の対象とされることになりました。ただし、買主による解体・耐震リフォームは売却した翌年の2月15日までに実施しなければならないことに留意してください(例年2月16日から確定申告期間に入るため)。

加えて、今回の税制改正大綱には“タワーマンション節税”について言及されているのが気になります。具体的な内容は記されていませんが、市場価格と相続税評価額の乖離について相続税法の時価主義を前提に適正化を検討するとされており、2024年度以降の制度変更はほぼ確実です。

昨年解説した相続税算定の“最終兵器” 財産評価基本通達総則6項が与える衝撃①および②を、今一度読み返していただきたいと思います。

相続税算定の“最終兵器” 財産評価基本通達総則6項が与える衝撃①
相続税算定の“最終兵器” 財産評価基本通達総則6項が与える衝撃②

今回の税制改正大綱の改正内容を見ると、2023年以降の住宅流通の重要なキーワードの1つは”相続”であるといえるでしょう。

 
中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

関連する最新コラム

キーワードから検索

footer logo
不動産業・住宅業にかかわる「会社や人」の課題を発見・解決し、
成果をもたらす行動スイッチをONにするメディア
業務支援サービス提供企業の方へ
LIFULL HOME'S Businessへ自社のサービスを掲載。
全国の不動産・住宅会社様へアピールいただけます!
facebook

Facebook
コラムやセミナー、業界情報などの最新情報をいち早くお届けします。

その他のビジネス向けサービス