【不動産仲介業の役割】売買契約をスムーズに結ぶポイント
不動産売買では、不動産仲介会社が売主・買主の間に入って取引を仲介するのが一般的です。
不動産売買を仲介する際は、価格やさまざまな条件の交渉が伴います。仲介会社は、これらの交渉をスムーズに行い、適正な取引につなげるための重要な役割を担っています。
本記事では、不動産売買における仲介会社の役割とスムーズに契約を結ぶポイント、契約締結時の注意点について解説します。
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不動産の売買契約における仲介会社の役割
不動産仲介会社は、売主・買主の間に立ち、トラブルがないように不動産売買の手続きや契約を成立させる役割を担っています。
▼不動産仲介の主な業務
- 物件査定:机上査定・訪問査定で査定価格を提示する
- 広告掲載:自社ホームページや不動産ポータルサイトなどで広告を掲載し、物件を広く周知させる
- 条件交渉:売主・買主の希望を聞き、価格や手続きについて調整する
- 売買契約:重要事項の説明、売買契約書の内容説明を行う
- 不動産引渡し:物件の引渡しに立ち会い、決済や登記を実行する
不動産の売買には、取引の際に契約書の作成や税金、住宅ローンの手続きなどの専門的な知識が必要です。個人間で取引をする場合、不動産取引に関する知識がないと、売買金額や契約内容の認識にズレが生じて、トラブルが発生することも考えられます。
また、取引相手が見つかるまでに時間がかかるケースもあります。仲介会社が売主・買主の間に入ることで、取引相手の紹介や契約内容の確認、契約書類の作成などをスムーズに行えるため、トラブルを未然に防止できます。
不動産売買契約をスムーズに結ぶポイント
不動産の売買契約をスムーズに結ぶポイントは主に3つあります。
①希望条件を明確にする
依頼主の希望に沿って仲介業務を行うために、売主・買主それぞれにヒアリングをして、希望条件を明確にします。売主・買主には、次のような項目をヒアリングします。
▼売主(売却の仲介)
- 売却希望価格
- 引渡し時期
- 媒介契約の種類 など
これらに加えて、不動産査定や物件調査を実施することで、具体的な売却計画を立案できるようになります。売主の希望と物件に関する情報を踏まえたプランニングによって、効率的に売却活動を進めることが可能です。
▼買主(購入の仲介)
- 物件の種類
- エリア
- 間取り
- 広さ
- 購入希望価格
- 入居時期 など
これらを明確にすることで、買主のニーズに合った物件探しや提案ができるようになります。また、買主から資金計画の相談を受けた際は、仲介会社が住宅ローンを紹介することもあります。
売主・買主の希望条件をヒアリングすることで、顧客がまだ気付いていなかった潜在的な課題やニーズなどが見つかるケースもあります。
②業務内容・手数料について説明する
不動産売買の仲介をする際に、仲介業務の内容や手数料について説明します。これらの説明がないと、売主・買主の認識にズレが生じてトラブルになる場合もあります。
▼売主・買主に対して説明が必要な内容
媒介契約の種類
不動産売買を仲介するとき、依頼主と媒介契約を交わします。この媒介契約は3種類あり、仲介会社の対応範囲や業務が異なります。
一般媒介 |
専任媒介 |
専属専任媒介 |
|
---|---|---|---|
同時依頼できる 不動産仲介会社 |
複数可 |
1社のみ |
1社のみ |
依頼主の自己発見
による直接取引
|
可 |
可 |
不可 |
依頼主への報告義務 |
なし(任意) |
あり (2週間に1回以上) |
あり (1週間に1回以上) |
レインズ
への登録義務
|
なし(任意) |
あり
(媒介契約締結時 から7日以内)
|
あり
(媒介契約締結時 から5日以内)
|
業務内容
レインズへの登録や広告掲載、仲介業務の実施状況の報告、その他サービスなど、仲介会社の業務内容を詳しく説明します。
仲介手数料
売買が成立した場合、媒介契約をした依頼主から仲介手数料を受け取ります。仲介手数料の上限額は法律で定められており、取引額を3つの区分に分けて算出、合算します。
▼売買価格の区分と仲介手数料の法定上限額
売買価格の区分 |
仲介手数料の法定上限額 |
---|---|
200万円以下の部分 |
売買価格の5.5% |
200万円超~400万円以下の部分 |
売買価格の4.4% |
400万円を超える部分 |
売買価格の3.3% |
不動産売買を仲介して契約が成立した際は、取引の当事者に対して契約書(37条書面)を交付することが義務付けられています。仲介手数料や契約書については、口頭でも説明しておくことで、依頼主との認識のズレを防げます。
(出典:国土交通省『宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額』『重要事項説明・書面交付制度の概要』)
③条件交渉の範囲を決める
売主・買主が見つかった場合、仲介会社が双方の希望をヒアリングしたうえで契約の条件を調整します。この際、条件交渉の範囲を決めておくとスムーズに交渉を進めやすいです。
▼条件交渉の範囲
- 売却価格の下限額、購入価格の上限額
- 手付金の金額
- 引き渡し時期
- 確定測量の実施有無、費用負担
- 固定資産税清算金
不動産売買契約を締結する際の注意点
不動産売買を仲介する際は、いくつか注意点があります。ここでは、トラブルを防ぐための注意点を2つ紹介します。
①買付証明書・売渡承諾書は契約書ではない
買付証明書・売渡承諾書は、不動産の購入意思・売却意思を売主・買主に示すために、仲介会社を通して提出する書面です。
ただし、いずれの書面も契約書ではなく、あくまでも、取引相手とスムーズに交渉を進めるための確認書類とされています。
そのため、買付証明書・売渡承諾書を取り交わしたとしても、手付金(※)は発生せず、相手方からキャンセルされる可能性もあります。
買付証明書・売渡承諾書を正式な申し込みとして捉えられるとトラブルに発展するリスクがあるため、売主・買主に契約書とは異なる書面であることを伝えておくことが重要です。
▼トラブル例
買付証明書・売渡承諾書を取り交わした後、正当な理由なく一方的に契約締結を拒んだ結果、その損害に対して賠償責任が生じた。 |
このようなトラブルを防ぐには、場合によっては損害賠償につながることを説明しておく必要があります。
※手付金とは、契約締結後の解約権を留保することや債務不履行があった場合の違約金を目的として、買主が売主に対して支払う金銭のこと
②契約解除には手付金の放棄・返還が必要
不動産売買契約の締結後に契約を解除する場合には、手付金を放棄、または返還します。
不動産売買では、契約締結時に買主が売主に対して、取引価格の5〜20%を手付金として支払う慣習があります。解約手付として手付金を授受していた場合、契約成立後であっても、双方どちらかの意思によって解除が可能です。
ただし、契約を解除する場合には、以下の対応が必要です。
- 売主が契約を解除する場合:手付金の倍額を買主に返還する
- 買主が契約を解除する場合:売主に支払った手付金を放棄する
この手付金をめぐるトラブルには、次のような例が挙げられます。
▼トラブル例
不動産売買契約の締結後、買主の都合で契約解除の申し出を受けた。その際、買主から手付金の倍額を請求された。 |
こういったトラブルを防ぐためには、売買契約の締結時に手付金の取扱いについて売主・買主の理解を得ることが重要です。
まとめ
不動産売買仲介は、物件の売主・買主の間に立って契約を成立させる役割を担っています。
売買契約をスムーズに進めるには、依頼主と媒介契約を締結することが重要です。その際、仲介の依頼主(売主・買主)の希望条件を明確にしたうえで、仲介会社の業務内容や手数料について説明し、条件交渉の範囲を決めることがポイントです。
また、売買契約を締結する際、買付証明書・売渡承諾書は契約書ではないこと、締結後の解除には手付金の放棄もしくは返還が必要になることを説明します。
トラブルを防ぐためにも、法律に基づいた書類の交付をはじめ、媒介契約の内容や注意点の説明を忘れないようにしましょう。