市場動向やコロナの影響は? 首都圏の新築マンション需要はどうなる?
2020年、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響により、人々の働き方や生活スタイルが変化しました。そうしたなか、首都圏の新築マンションの需要はどのように変化しているのでしょうか。
不動産販売や売買の仲介を行っている企業さまは、市場の動向やコロナの影響について把握するとともに、今後の経営計画や顧客獲得に向けた戦略を立てることが重要です。
この記事では、2020年までの首都圏の新築マンション需要の推移を踏まえ、住宅需要の変化や中古市場の動向、コロナによる影響について解説します。
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首都圏マンション新規販売戸数の推移
(画像出典:国土交通省『令和2年度 住宅経済関連データ』)
近年、首都圏マンションの新規販売戸数は2013年の5.6万戸から緩やかに減少し続けています。2016年以降、新規販売戸数は3.5万戸を下回ることはありませんでしたが、2019年には約3.1万戸と大きな減少が見られます。
この数字は、リーマンショックで経済が大打撃を受けた2009年の約3.6万戸を下回っており、バブル崩壊以降最も少ない水準です。
新築マンションの着工戸数も減少
(画像出典:国土交通省『令和2年度 住宅経済関連データ』)
首都圏マンションの新規販売戸数が減少傾向にあるなか、同様に減少傾向にあるのが新築マンションの着工戸数です。
2018年、首都圏の新築マンションの着工戸数は約6.1万戸。対して2019年は約5.5万戸と1年間で約6,000戸減少しています。
リーマンショック後の2009年の次に最も新規着工戸数が少なくなっている状況です。首都圏の新築マンションは、販売戸数だけでなく、供給戸数も減少していることが分かります。
なお、2020年からはコロナの流行により、当初の着工計画の中止を余儀なくされたケースもあります。いまだ収束の目途が立たないなか、供給戸数は2021年以降も減少する可能性が考えられます。
首都圏の新築マンションの平均価格は上昇傾向に
(画像出典:国土交通省『令和2年度 住宅経済関連データ』)
首都圏における新築マンションの販売戸数・着工戸数が減少傾向にある一方、平均価格は上昇傾向です。
2000~2013年、首都圏の新築マンションの平均価格は4,000万円台のなかで緩やかな上昇傾向にありました。ところが、2014年には5,000万円台に突入し、2019年の平均価格は6,000万円弱に上がります。
新築マンションの販売戸数・着工戸数は減少しているにもかかわらず、平均価格は上昇し続けていることから、2021年以降も平均価格は右肩上がりになる可能性が考えられます。
新築戸数の減少・価格上昇による中古市場の活発化
首都圏の新築マンションの販売戸数・着工戸数が減少する一方で、平均価格は高騰しているのが現状です。購入のハードルがさらに高くなることから、今後は新築マンションの購入需要が減少すると考えられます。
(画像出典:国土交通省『令和2年度 住宅経済関連データ』)
これに対して活発な動きを見せているのが中古市場です。マンションのストック総数は2019年時点で約655万戸に到達。2020年における新築マンションの着工戸数約5.5万戸と比較すると、物件数は100倍以上です。
これまで、首都圏の新築マンションの成約戸数は中古マンションを大幅に上回っていました。しかし、2016年にはほぼ同水準まで並び、2019年には中古マンションの成約戸数が上回る結果となっています。
コロナ収束の目途が立っていない現状を踏まえると、今後も供給戸数が絞られ、高値を維持する状況が継続すると見込まれます。首都圏のマンション需要は価格的にも手に入れやすい中古市場へと移行していくと予想できます。
(出典:国土交通省『令和2年度 住宅経済関連データ』/公益財団法人東日本不動産流通機構『首都圏不動産流通市場の動向(2020年)』)
まとめ
首都圏の新築マンションの販売戸数や着工戸数は減少傾向です。一方で、首都圏の新築マンションの平均価格は上昇。消費税増税後やコロナ禍でも価格が上昇していることから、今後も高水準を維持すると見込まれます。
そして新築マンションの供給量の減少・価格の上昇により、注目されるのが新築市場から中古市場へ住宅需要の移行です。首都圏の新築マンションに関していえば、今後はターゲット層を絞ったうえで高値を維持しながら販売するという市場に変化する可能性があります。
首都圏の新築マンション販売や仲介を行う企業さまは、中古住宅の活用も視野に入れつつ、今後の経営戦略や事業計画を見直してみてはいかがでしょうか。