賃貸住宅管理業法とは? 改正内容・施行時期などを解説
2020年6月、賃貸管理業務を適正に行うための法律『賃貸住宅管理業法』が新たに制定されました。賃貸住宅の管理事業を営む不動産会社は、法律に則った適切な対応が求められます。
この記事では、賃貸住宅管理業法の目的をはじめ、いつ・どのような法律が施行されたのかをまとめました。また、新たな法律の施行に伴い、不動産管理会社にどういった対応が必要になるのかについても併せて解説します。
目次[非表示]
- 1.賃貸住宅管理業法とは
- 2.賃貸住宅管理業法で定められる措置例
- 2.1.①サブリース契約に関する規制
- 2.2.②賃貸住宅管理業に対する登録義務
- 3.賃貸住宅管理会社に求められる対応
- 3.1.①サブリース契約の行為規制
- 3.1.1.特定賃貸借契約締結前の重要事項説明
- 3.1.2.不当な勧誘行為・誇大広告の禁止
- 3.2.②賃貸住宅管理業の登録義務・行為規制
- 3.2.1.賃貸住宅管理業の登録
- 3.2.2.業務管理者の配置
- 3.2.3.管理受託契約締結前の重要事項説明
- 3.2.4.財産の分別管理
- 3.2.5.委託者への定期報告
- 4.賃貸住宅管理業法の施行で何が変わるのか
- 5.まとめ
賃貸住宅管理業法とは
2020年6月に施行された賃貸住宅管理業法は、賃貸住宅の管理業務を適正に行うことを定めた法律です。賃貸管理会社とオーナー・入居者とのトラブルを防ぎ、賃貸住宅の良好な居住環境をつくることを目的に施行されました。
この法律が新たに施行された背景には、賃貸住宅の管理業務をめぐるトラブルの増加が挙げられます。
現在、単身世帯や外国人居住者の増加を背景に、賃貸住宅は主な生活基盤となっています。しかし、物件の所有者であるオーナーの高齢化、相続による兼業化などに伴い、管理業務を管理会社に委託するオーナーが増加しています。
加えて、不動産管理会社がオーナー所有の賃貸物件を借り上げて転貸する“サブリース方式”も増加しているのが現状です。
このように、管理会社がオーナー・入居者間に介在することで、契約内容の誤認をはじめとするさまざまなトラブルが発生しています。こうした課題に対応するため、法整備による賃貸借契約の適正化が図られることとなりました。
(出典:国土交通省『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』)
賃貸住宅管理業法で定められる措置例
賃貸住宅管理業法では、大きく2つの措置について定められています。
①サブリース契約に関する規制
物件オーナーと委託を受けるサブリース事業者が賃貸借契約を締結する場合に一定の規制が設けられました。
当該サブリース事業者と契約して勧誘を行う者についても規制の対象とされています。この規制措置は、2020年12月15日に施行されました。
②賃貸住宅管理業に対する登録義務
賃貸住宅管理業の委託を受けて行う場合には、国土交通大臣の登録を受けることが義務づけられました。
この登録制度は2021年6月15日に施行されましたが、法施行時にすでに賃貸住宅管理業を営んでいる場合には一年間猶予されることになっています。
(出典:国土交通省『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』)
賃貸住宅管理会社に求められる対応
賃貸住宅管理業法の施行により、賃貸住宅管理会社にはどのような対応が必要になるのでしょうか。“サブリース契約の行為規制”と“賃貸住宅管理業の登録義務・行為規制”の2つに分けて解説します。
①サブリース契約の行為規制
サブリース契約を締結する際、勧誘や契約締結時に一定の行為規制が設けられています。違反した場合には業務停止命令・罰金などを課せられるため、適切な対応が求められます。
特定賃貸借契約締結前の重要事項説明
特定賃貸借契約とは、賃貸住宅の所有者(賃貸人)とサブリース事業者で取り交わされる契約のことです。“マスターリース契約“ともいい、賃貸住宅を転貸する事業を営む際に締結されます。
賃貸住宅管理会社と物件オーナーが当該契約を締結する際は、契約期間や家賃保証などを定めた書類を交付し、重要事項説明を行うことが必要です。
不当な勧誘行為・誇大広告の禁止
特定賃貸借契約にあたり勧誘を行う際、所有者(賃借人)の判断に関わる事項やリスクなどを伝えない、あるいは不実を伝える行為は禁止されています。
また、特定賃貸借契約に関する広告については、「事実に反する事項を記載する」「実際よりも優良・有利な条件を提示する」ことは行ってはなりません。
②賃貸住宅管理業の登録義務・行為規制
賃貸住宅管理業を営む事業者に対しては、登録義務や一定の行為規制が設けられています。
賃貸住宅管理業の登録
賃貸住宅管理業務を行う企業は、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。この登録義務は、自己所有物件の管理を除いて200戸以上所有している管理会社が対象です。
▼賃貸住宅管理業者の登録制度
登録費用:9万円
更新:5年ごと
※200戸未満の場合、登録は任意とされています。
業務管理者の配置
賃貸住宅管理業者は、営業所・事業所ごとに賃貸住宅管理の経験・知識を有する管理者を1名以上配置しなくてはなりません。管理者が複数の営業所と兼任することはできません。
管理受託契約締結前の重要事項説明
賃貸住宅管理業者と物件オーナーが管理受託契約を締結する際は、管理業務に関する具体的な内容を書面で交付し、重要事項説明を行う必要があります。
管理業務の実施方法・内容・報酬・更新・解約などの事項を説明し、契約者間で齟齬(そご)がないようにすることが重要です。
財産の分別管理
賃貸住宅管理業者は、委託を受けて管理する賃貸住宅の家賃・共益費・敷金などの財産を分けて管理しなければなりません。管理受託契約ごとに、金銭を区別した帳簿を作成するといった管理が必要です。
委託者への定期報告
管理受託契約を結んだあと、賃貸物件の所有者(委託者)に対して管理業務の実施状況を定期的に報告しなければなりません。賃貸住宅管理業者は1年以内ごとに管理業務報告書を作成し、委託者への説明が求められます。
(出典:国土交通省『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』)
賃貸住宅管理業法の施行で何が変わるのか
賃貸住宅管理業法の整備によって大きく変わるのは、悪徳な不動産会社の排除です。
物件オーナー・サブリース事業者との賃貸借契約に関する規制が敷かれたことで、悪徳な不動産会社の排除を促し、不当・不利益な契約を締結するリスクを回避できます。
適正な管理業務を行っている管理会社が正当に評価される環境が整備されるため、低価格競争を防ぎ、適正価格での報酬設定へと改善が期待できます。
さらに、賃貸住宅管理業者の社会的信頼度も高まります。これにより、融資条件の拡充、無償での管理業務の排除といった副次的な効果を生み出すことにもつながるでしょう。
まとめ
賃貸住宅管理業法は、賃貸物件の管理業務の適正化を図るための法律です。この法律の施行により、サブリース事業者への行為規制や賃貸住宅管理業に対する登録義務が設けられました。
賃貸住宅を転貸する事業を営む企業は、物件所有者に対する不当な勧誘行為、誇大広告が禁止され、特定賃貸借契約時には重要事項説明が必要です。
また、賃貸住宅管理業を営む企業は、国土交通大臣の登録を受けるとともに、重要事項説明や業務管理者の配置などさまざまな対応が求められます。
オーナーや入居者とのトラブルを防ぎ、適正な管理業を行うために、法令を遵守した管理体制に見直すことが重要です。