不動産会社の独立開業で失敗するケースと成功するためのポイント
現在、不動産会社に勤めながら、将来的には独立しようと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その際に考慮しなければならないのが、独立後の資金繰りやお客さまの開拓です。不動産業を独立開業したものの、その後の経営がうまくいかずに失敗してしまうケースもあります。
不動産会社の独立開業で成功するためには、現在の営業成績や資金だけでなく、今後を見据えた事業計画が必要です。
この記事では、不動産業を独立開業しようと考えている方に向けて、失敗に陥りやすいケースと成功するためのポイントを解説します。
目次[非表示]
- 1.不動産会社の独立開業で失敗するケース
- 1.1.経営資金不足
- 1.2.信用・知名度の低さ
- 2.不動産開業を成功へと導くポイント
- 2.1.1.資金繰り表を作成する
- 2.2.2.システムを導入する
- 2.3.3.顧客や同業他社との人脈を形成する
- 2.4.4.物件流通サービスを活用する
- 3.まとめ
不動産会社の独立開業で失敗するケース
たとえ営業成績がトップの人でも、独立開業した不動産会社が失敗に終わってしまうケースもあります。独立開業が失敗する主な原因には、以下の2つが挙げられます。
経営資金不足
独立開業に失敗してしまう原因としてはじめに考えられるのが、資金不足です。資金計画を十分に行わずに開業に踏み切ってしまい、経営資金が不足することで経営難に陥るケースがあります。
安定した経営を維持するためには、開業に際して発生する資金だけでなく、開業後の資金について準備しなければなりません。オフィスの賃料、物件を掲載するための広告費用などを考慮するとともに、収益と支出などの資金管理も必要です。
よくある失敗例:
会社勤務での営業スキルはあったため、会社勤めのときより収入は増加していました。 その一方で、経理や支出管理の知識・ノウハウがなく、事務作業を怠っていました。その結果、支出が収益を上回り、赤字という事態に。最終的にはオフィスの賃料や広告掲載費用などを支払えずに資金不足となり経営を継続できなくなりました。 |
信用・知名度の低さ
次に考えられる原因は、信用や知名度の低さです。不動産営業では、過去に取引した企業や関わりのある会社からの紹介で契約に至ることがあります。
しかし、独立後は会社が培ってきた信用や知名度がない状態でのスタートとなるため、思うように顧客を獲得できないことがあります。
会社の信用や知名度は、顧客が不動産会社を選ぶ際に重要な要素の一つです。そのため、信用・知名度の低さが顧客にとっての不安材料となり、競合他社に案件が流れることもあります。
こうした失敗は、知名度のある大手不動産会社で成果を出していた人が陥りやすいケースの一つです。
よくある失敗例:
会社勤務のときは営業成績トップで案件量も多かったため、独立したほうが得られる利益が大きいと考え、独立しました。 しかし、会社とのつながりがなくなったことで紹介による契約が減少し、売り上げは半減するまでに至りました。大手や知名度の高い不動産会社に埋もれてしまい、顧客を獲得できなくなったことで経営に必要な収益が得られなくなり、閉業せざるを得なくなりました。 |
不動産開業を成功へと導くポイント
不動産業の独立開業で成功するには、失敗する原因を踏まえ、資金管理や知名度に関する対策を行うことが重要です。ここでは、成功へと導く4つのポイントを紹介します。
1.資金繰り表を作成する
経営活動で必要になる資金を適切に管理するために、資金繰り表を作成するのがポイントです。管理する主な資金には以下が挙げられます。
管理が必要な主な資金:
資金 |
内容 |
---|---|
経常運転資金 |
売上原価、人件費、家賃など、決済条件などに変化がない場合につねに必要となる資金 |
増加運転資金 |
仕入れコストや変動費など、売り上げが急増したり企業内外の経営環境に変化が生じたりした場合に必要な資金 |
決算資金 |
法人税の支払いに必要な納税資金や決済に伴う株主への配当金を支払うための配当資金 |
賞与資金 |
夏や冬など、賞与支払月に従業員への賞与を支払うための資金 |
経営活動を継続していくためには、運転資金の確保は不可欠です。どの時期にいくらの資金が必要になるか、項目別に予算を設定する必要があります。
また、予算の設定後は実際にいくらの収支があったのか実績を記録します。長期的な視点で資金需要を把握することで、適切な資金計画を立てられます。
2.システムを導入する
支出を適切に管理するために、システムを導入するのも有効です。開業後は、物件の仕入れや集客業務、事務作業などさまざまな業務が発生します。そうしたなかで、すべて手作業で資金を管理することは容易ではありません。
システムを活用することで、転記作業や計算を自動化し、資金管理の効率化を図ることが可能です。
たとえば、資金繰り表の自動作成、資金計画の策定、財務管理ができるシステムなどがあります。収入・支出の流れを可視化することで経営計画や融資計画などの見直しもできます。
3.顧客や同業他社との人脈を形成する
自社の認知度が低いなかで独立開業後の経営を成功させるには、顧客や同業他社との人脈形成がカギといえます。案件獲得につなげるためには賃貸や売買を問わず、物件・オーナー・顧客の情報をいち早く入手することが重要であるためです。
不動産業界で人脈を形成する方法
- 独立前の顧客と継続的な関係性を築く
- 全国宅地建物取引業協会連合会主催の研修会に参加し、同業他社との情報交換を行う
- 管理会社や保証会社、リフォーム会社に顧客を紹介する
- 同業他社と共同仲介を行う
同業他社や不動産関係者とのつながりを持つことで、紹介によって契約に至るケースもあります。開業のスタートダッシュを有利に進めるためにも、人脈の形成は重要なポイントです。
4.物件流通サービスを活用する
不動産取引に関する情報を素早くキャッチするために、物件流通サービスを利用する方法もあります。
不動産仲介会社と管理会社、オーナーと物件情報を共有できるため、紹介や知名度による顧客獲得が期待できない場合にも案件を獲得しやすくなります。
また、他社物件の情報を仕入れたり、その情報を自社ホームページやポータルサイトなどに掲載したりすることも可能です。オンラインで物件情報の収集が可能になるため、業務効率化や生産性の向上にも貢献します。
さらに、最新の物件情報を提供すれば住宅検索ユーザーの目に留まりやすくなる効果も期待できます。
まとめ
不動産会社の独立開業を成功させるためには、開業資金だけでなくその後の経営資金を確保することを考えなくてはなりません。
適切な資金管理、顧客獲得に向けた取り組みを怠っている場合、資金不足や顧客獲得数の低下によって経営が失敗してしまうケースもあります。
資金繰り表の作成により将来を見据えた資金計画を立てることはもちろん、一部の業務を自動化して効率的に業務を進めることも重要です。
また、知名度や紹介に頼れないケースでは、物件流通サービスを利用する方法も検討しましょう。同業他社との共同仲介や研修会への参加なども視野に入れつつ、人脈形成にも力を入れてみてはいかがでしょうか。