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2022年4月から成人年齢が満18歳に引き下げられることの意味と対応

LIFULL HOME’S総研の中山です。

新年度が始まっても相変わらずコロナ感染者は毎日4万人前後発生しており、残念ながらなかなか沈静化しません。これは“Withコロナ”の生活が丸2年を経て完全に定着し、マスク着用や手指消毒、三密の回避など身近でできる対策を講じることによって経済活動を後退させない、ことを重視しているためです。

ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー・資材価格の高騰、および前回解説した国内外の政策金利差によって為替相場が大きく円安に振れていることなどは、今後の経済環境に関する懸念材料です。

しかし、緊急事態宣言などに基づく移動の自粛やイベント収容人数の制限、飲食店の時短営業などが積み重なって生じる経済全体に対する打撃も決して小さくありません。日々の感染者数に一喜一憂せず、感染防止対策は徹底し、テレワークを併用して業務の効率化を図りつつ、引き続き業績の拡大を図りたいものです。

目次[非表示]

  1. 1.改正民法が施行 成人年齢が20歳から18歳に下がると…
  2. 2.親元を離れて一人で生活をスタートする若者を見守る視点が求められる

改正民法が施行 成人年齢が20歳から18歳に下がると…

さて、毎年4月を迎えると、国の制度が更新されて様々な仕組みに変更があるものですが、2022年は大改正を実施した民法がいよいよ4月1日に施行され、これによって成人の定義が20歳から18歳に引き下げられました(喫煙、飲酒、競馬などの公営ギャンブル、国民年金への加入義務については20歳以上で変わりません)。

成人か未成年者であるかは法律的には大きな違いがあるので、今回のコラムでは、特に不動産取引においてどのような変化があるのか解説したいと思います。

民法上18歳で成人ということは法律行為が自分の意思でできるということです。例えば契約や結婚など、これまで親や後見人など親権者の同意が必要であった行為(=同意が得られなければ取り消すことができる行為)について18歳を迎えれば単独で行うことができるということになります。

不動産に関する契約も全く同様です。つまり、不動産の売買および賃貸借契約は18歳以上であれば親権者の同意を必要とせずに締結することができます。

18歳くらいの年齢の方に身近な契約と言えば、賃貸住宅の賃貸借契約のほかにも携帯電話の契約、クレジットカードの作成にかかる契約などがイメージされますが、なかでも賃貸住宅の賃貸借契約については様々な観点から注意が必要です。ちなみに、婚姻に関しては男女とも結婚可能年齢が18歳に統一されました(従前は女性のみ16歳)。

また、罪を犯した18歳および19歳はこれまで未成年者として刑罰の適用が緩やかでしたが、これからは少年法の改正により「特定少年」として20歳以上と同様に厳罰化されることも覚えておきましょう。

親元を離れて一人で生活をスタートする若者を見守る視点が求められる

特に高校を卒業し、親元を離れて大学や専門学校に通ったり就職したりした場合に、その生活の拠点となる賃貸住宅の契約(電気・ガス・水道などの契約も同様です)はことさらに注意が求められます。

実際に住むのが18歳以上の“成人”だからといって借主とは限りません。当然のことながら、誰が契約の当事者として契約金やその他の経費、毎月の賃料を負担するのかという点が重要です。

例えば大学生や専門学校の生徒のように毎月決まった収入が得られていない人が借主となることは貸主も認めないでしょうし、実際に家賃を支払うのが親権者であれば、親権者が借主、入居者を本人とするのが現実的です。親が借主で家賃を払っていても、電気・ガス・水道代は生活費の中から本人が払うというのであれば、本人が契約当事者となることもあり得ます。

また、契約前の重要事項説明や賃貸借契約自体の説明については、まだ成人になって間もない=実務経験も一人暮らしの経験もほとんどない対象者に対して、用語解説や関連する法律の条文説明を含め、時間をかけて丁寧に実施する必要があるでしょう。

オンライン重説が可能になったからと言って、単にZOOMを介して契約書の内容を読み上げて終わりでは、十分に理解できない可能性があり、後日トラブルになった際には成人であっても消費者保護の観点から説明をしていないと判断されることも考えられるからです(これは契約者の年齢にかかわらず必要なことでもあります)。

不動産会社(宅建士)は、営業促進で無理矢理推すのではなく、契約者が十分認識し理解しているかを冷静に判断することが求められます。

さらに、日々の生活に関連する事象として、18歳で成人となって自分自身が契約者となると、携帯電話やクレジットカードなどの料金の支払い・返済を滞納した場合(長期化すれば)信用情報機関のブラックリストに登録されるケースもあります。将来住宅購入について住宅ローン審査が通らないなどのトラブルが想定されます。

法律行為を自分自身で行えるということは、必然的に責任も伴うということなのですが、経験や知識の乏しい18~19歳の“成人”に対しては、契約の仲介者としてだけでなく当事者として、また成人の“先輩”として、丁寧に理解が進むのを見守る姿勢が求められるでしょう。

18歳以上=成人だから契約には責任が伴うと一律に指摘するのではなく、将来のことも考えたうえで適切で丁寧な説明が必要であることをぜひご理解ください。

 
中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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