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4月から大きく変わる住宅ローン控除の仕組み

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LIFULL HOME’S総研の中山です。

新年度が始まっても相変わらずコロナ感染者は毎日4万人前後発生しており、残念ながら沈静化していません。これは“Withコロナ”の生活が丸2年を経て完全に定着し、マスク着用や手指消毒、三密の回避など身近でできる対策を講じることによって経済活動を後退させないことを重視しているためです。

ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー・資材価格の高騰、および前回解説した国内外の政策金利差によって為替相場が大きく円安に振れていることなどは、今後の経済環境に関する懸念材料です。

しかし、緊急事態宣言などに基づく移動の自粛やイベント収容人数の制限、飲食店の時短営業などが積み重なって生じる経済全体に対する打撃も決して小さくありません。日々の感染者数に一喜一憂せず、感染防止対策は徹底し、テレワークを併用して業務の効率化を図りつつ、引き続き業績の拡大を図りたいものです。

目次[非表示]

  1. 1.住宅ローン減税は控除率が4月から0.7%に引き下げ
  2. 2.住宅ローン減税は何がどう変わったのか
    1. 2.1.①住宅ローン減税の控除期間
    2. 2.2.②元本の上限
    3. 2.3.③年収上限

住宅ローン減税は控除率が4月から0.7%に引き下げ

新年度は、毎年様々な制度や仕組みが更新されます。不動産業界においては、住宅ローン減税の控除率が2022年4月に年末元本の1%控除から、0.7%控除へと引き下げられたのが大きな変化と言えるでしょう。

この制度変更によって事実上初めて新築と中古住宅の住宅ローン控除に差が生まれています。控除率の引き下げは、もともと住宅ローン金利負担分以上の控除が実施されていていわゆる“逆ザヤ”の状態にあることが会計検査院から指摘されたことを受けたものです。

確かに現在の住宅ローン金利は変動金利で0.3~0.4%台、固定金利(35年)でも1.2%程度ですから、特に変動金利で借り入れているユーザーは1%の控除によって“利益”を得ることになるという指摘は間違っていません。

会計検査院の指摘をそのまま受け入れれば、住宅ローンの金利負担分を計上し、その金額を確定申告によって控除すれば良いのですが、手続きの煩雑さを考慮して、国は一律0.7%に控除率を引き下げたわけです。

つまり、現状の変動金利で住宅ローンを借り入れる前提であれば、0.7%に引き下げられても“逆ザヤ=金利負担分以上の控除”は依然として発生する余地があり 、客観的に買いやすい環境であることには何も変化はないと言えるでしょう。

住宅ローン減税は何がどう変わったのか

このような経緯で住宅ローンの控除率は1%から0.7%へと引き下げられたのですが、他にも変わったことがあるのでチェックしておきましょう。


①住宅ローン減税の控除期間

これまで一律10年と定められていた住宅ローン減税の控除期間が13年へと引き延ばされました。昨年度までの新築住宅に対する13年控除は消費税増税の特例でしたが、今年度からは特例としてではなく恒常的に13年へと拡大されました。

ただし、これは新築住宅が対象で、中古住宅はこれまで通り10年に据え置かれていることに留意してください。


②元本の上限

これも今年度から実施される仕組みで、新築住宅のうち、長期優良住宅などの認定住宅は年末元本の上限が5,000万円、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなるような仕様で建設されたZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:通称ゼッチ)は上限4,500万円、現在新築マンションの7割程度を占めるとされる省エネ基準適合住宅も上限が4,000万円に各々設定されました。新築住宅でこれ以外の一般住宅の上限は3,000万円、中古住宅は2,000万円です。

このように高性能で環境負荷のより少ない住宅には控除を大きくするという国の意向が反映される結果になりました。中古で長期優良住宅やZEH住宅を購入しても住宅ローン控除の元本上限が2,000万円であることには得心が行きませんが、これは来年度以降の制度改正に期待したいと思います。

これらの制度変更により、単純計算では、新築認定住宅は13年で最大455万円、ZEH住宅は同409.5万円、省エネ基準適合住宅は同364万円、新築一般住宅は同273万円、中古住宅は10年で最大140万円の住宅ローン負担が控除されることになります。


③年収上限

世帯年収上限は、これまで通り3,000万円に据え置かれています。ただし、昨年度から緩和された新築住宅の面積要件である40m2以上50m2未満(壁芯面積ではなく内法面積であることに注意)の住宅については上限が1,000万円となっており、毎年の確定申告で世帯所得が1,000万円を超えた場合、その年は控除されないこともあらかじめ説明する必要があるでしょう。

このように、今年度からは住宅ローン減税の仕組みがより細分化され、住宅の省エネ性能や住宅ローン元本上限、世帯の所得上限にも違いが設けられましたから、住宅購入を希望されるユーザーの条件を正確に把握し、個別に異なる控除について説明することが求められます。

また、この住宅ローン減税の仕組みに加えて、住宅購入目的の贈与税の非課税枠が1,500万円まで設定されており、さらには「こどもみらい住宅支援制度」も新設(ここでは詳細は省きます)されていて、対象者には住宅購入などについて100万円~最大250万円まで補助金が支給されます。

なお、中古住宅の購入者に対しては、長期優良住宅化リフォーム推進事業によって住宅性能を引き上げるリフォームを実施した場合に補助金が支給される仕組みもあります。

これら“住宅購入支援セット”によって、2022年度も住宅購入に関しては手厚い支援策があることがご理解いただけたことでしょう。住宅ローン控除が引き下げられたと悲観することなく、これらの制度内容を把握&的確に説明することによって購入希望者の心理的なハードルを低くし、良質な住宅の普及促進の一翼を担っていただきたいと思います。

 
中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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