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中古住宅の流通価格はこれからどうなるか

LIFULL HOME’S総研の中山です。

ロシアのウクライナ侵攻が長期化する様相を呈してきました。依然としてウクライナとロシアの主張には隔たりが大きく、停戦合意するのは極めてハードルが高いといわれていますから、戦争状態が長期化することは避けられない状況です。

この軍事侵攻に伴って、我々の生活にもさまざまな変化が表れています。折悪しく日米欧の経済政策の違いから円安が発生しており、消費者物価指数(CPI)の上昇傾向に歯止めがかかりません。

今回はロシアのウクライナ侵攻に起因する経済状況の変化が、日本の中古住宅価格にどのような影響を与えるのか考えます。

目次[非表示]

  1. 1.現状は資材・エネルギーの輸入不足による価格の高騰が発生
  2. 2.ウクライナ侵攻だけでなく円安も物価上昇圧力になっている

現状は資材・エネルギーの輸入不足による価格の高騰が発生

ロシアがウクライナ侵攻を開始した2月24日以降、西側諸国は侵攻を強く非難するとともに経済制裁を相次いで打ち出しました。対象となるロシア系企業の国内資産凍結や量子コンピューターなど先端的な物品の輸出禁止などのほか、ロシア系金融機関の資産凍結も追加されています。

ただし、これらの経済制裁は直ちに効果を発揮するものではなく、侵攻の停止に直接影響するとは考えにくいです。それでも日本とロシアとの交易事業は「日ロさけ・ます漁業交渉」など一部を除いてほぼ停止している状況ですから、我々が日常使用・消費する食料品や物品などが不足することによって、CPI上昇の要因となっています。

日本とロシアの経済的結びつきは日本全体の交易額の1%程度と極めて少なく、影響は小さいとも考えられるのですが、財務省の貿易統計を確認すると2021年のロシアからの輸入額は1兆5,431億円で、そのうちLNG:液化天然ガスが3,722億円(24%)と最も多く、次いで石炭(18%)、原油(17%)など化石燃料をロシアに依存していることがわかります。

また、非鉄金属の輸入も2,923億円(19%)と多く、アルミニウムのほか、パラジウム、ニッケルといったレアメタルも含まれています。特にパラジウムはガソリン車の排ガス浄化触媒には欠かせない素材で、ロシアが世界の産出量の約4割を占めています。

これに対して、2021年のロシアへの輸出額は8,623億円と更に少ないですが、自動車が3,574億円(41%)、自動車部品が1,000億円(12%)と自動車関連が半分を占めていますから、日本の基幹産業である自動車産業には輸出入ともに相応の影響があるものと想定されます。

このように毎年輸入して活用している資材・エネルギーの調達がウクライナ侵攻によって停止してしまうと、需給のバランスが逼迫し、これらの価格の上昇要因となることは確実です。

ウクライナ侵攻だけでなく円安も物価上昇圧力になっている

このようにロシアのウクライナ侵攻による経済的な変化が、国内の資材・エネルギー価格の上昇要因となっていますが、これにとどまらず、ロシア(世界第3位)とウクライナ(同7位)は世界の小麦生産工場と言われるほどの生産量を誇っていましたから、パンやパスタの価格にも徐々に影響が出始める可能性は高いといわざるを得ません。

加えて、前々回のコラム「日本の住宅ローン金利がアメリカの利上げやウクライナ侵攻で変動する可能性は?」で解説したように主に日米の政策金利の差が拡大する状況にあり、5月4日にはアメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が実に22年ぶりの大幅な引き上げとなる政策金利の0.5%引き上げを決定し、0.75%~1%にすると発表しました。

日本は現状でもゼロ金利政策を実施せざるを得ない状況ですから日米の政策金利差は開くばかり、つまり円を売ってドルを買う動きが加速するため、円安に歯止めが掛かりにくい状況です。

こうなると、多くの資材を輸入に頼る日本の建設業界も、円安によるコストアップによって早晩建設費を引き上げざるを得なくなります。同様に輸入木材もロシアからの「北洋材」の輸入がストップすることで価格上昇の原因となり得ます(北洋材は全輸入木材の3%程度)。

新築住宅の供給サイドは、以前の大量供給による“薄利多売”によって利益率が圧迫されたことの反省から、新規の供給戸数を絞って価格を維持もしくは上昇させつつ、ニーズを喚起して売り切るという“少数精鋭”販売に切り替えています。

新築に手厚い住宅ローン減税や住宅購入目的の贈与税非課税枠、こどもみらい住宅支援事業による給付金などもあって、販売戸数を追わなくても利益を確保できる構造になっています。

したがって新築住宅の価格はウクライナ侵攻の影響に関わりなく高止まりし、資材・エネルギー価格の上昇によってさらに上振れする可能性が考えられるのです。既に1990年前後のバブル期の平均価格を超えている新築マンション価格ですが、上記の状況を考慮すれば当面価格が下がることは想定しにくいといえます。

こうなると多くの住宅購入ニーズは中古に向かうこととなり、コロナ禍で縮小していた中古流通市場も登録数が増加してきたにもかかわらず、現状では流通価格および成約価格とも上昇基調に変化はありません。新築価格がさらに上昇すれば中古も連動して価格が上昇すると考えておくべきでしょう。

特に東京、横浜、大阪、名古屋、福岡など都市圏中心部では、中古住宅の価格は今後も上昇し続ける公算が高くなります。ただし、多くの地方圏では需要と供給が安定しており、新築住宅の供給も限られているため中古市場に波及する可能性は低いと見られます。

バタフライ効果ではありませんが、ロシアのウクライナ侵攻の長期化が、国内の中古住宅流通価格の上昇につながる可能性について十分認識しておく必要があります。

 
中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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