枠_左上
枠_右上

業界ネタ・トピックス

枠_左下
枠_右下

徐々に活用が広がる不動産クラウドファンディング。その特徴とは?

LIFULL HOME’S総研の中山です。

ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、日米の政策金利差を背景とする円安の進行により、消費者物価が上昇し続けています。新築住宅の価格も例外ではなく、価格の上昇に伴って中古住宅の価格も連動して上昇していますから、ユーザーがなかなか条件に合う物件を見つけられないという状況が発生しています。

日米の金利差が今後さらに拡大し、円安も進行することが見込まれるため、住宅価格の上昇もまだまだ続いていく可能性が高いといえます。

前回のコラムでお伝えしたように住宅ローン金利、特に変動金利は安定推移していますから、今後も住宅需要を支えるうえで重要度を増すことになるでしょう。

目次[非表示]

  1. 1.2000年以降アメリカで始まった不動産クラウドファンディングの特徴
  2. 2.不動産クラウドファンディングのメリットとデメリット

2000年以降アメリカで始まった不動産クラウドファンディングの特徴

現状のように住宅価格が明確に上昇し始めると、不動産業界で活発になるのが不動産投資関連ビジネスです。物件価格が上昇するということは資産性がそれだけ増すことになり、価格高騰によって実需物件を購入できなくても、不動産に投資することによって価格上昇の“恩恵”を受けることができるわけですから、関心が向くのも当然のことといえます。

今回は、近年特に注目され始めている不動産クラウドファンディング(以降、不動産クラファン)について解説します。アメリカでは2000年代の初めに新しい不動産投資スキームとして始まったのですが、日本に導入され始めたのは2011年ごろですから、国内では新しい不動産投資手法といえます。

クラウドファンディング自体は、現在ではインターネットを介して不特定多数の人から資金を募るというのが最も基本的な方法で、コロナ禍によって自宅で過ごす時間が増えたことも手伝って、「ネットで」「少額から」「手軽に」というキーワードが浸透し急速に認知が広がりました。

不動産クラファンは投資型クラウドファンディングですから、調達した資金で不動産を購入・運用し、その賃料や売却益を投資額に応じて分配します。

仕組みとしてはREIT:不動産投資信託のように小口に細分化されていますが、最大の違いは、REITが複数の不動産を集めて証券化し、その証券を購入=投資するという形式なのに対し、不動産クラファンは特定の物件に投資するかしないかという判断になるということです。

つまりREITは組成されている不動産がどれなのか認識できても、個々の不動産の詳細な運用益や運転資金などを把握することはなく、それらはすべて運用側に任されていますが、不動産クラファンは物件単位で資金を募るのが一般的ですから、投資につきもののリスクを分散したいということであれば、複数の不動産クラファンに投資するといった対応が必要になります。

また、特定の不動産を対象とするという点では現物の不動産投資と同じですが、例えばワンルームマンション1戸単位、賃貸アパート1棟単位といった数千万円から億単位の資金を用意する必要もありません。

不動産クラウドファンディングのメリットとデメリット

さまざまな要因から不動産価格が上昇する局面となり、またコロナ禍で移動を伴う経済活動にまだまだ慎重にならざるを得ないという状況下で、不動産クラファンは投資家にも、また不動産投資にそれほど関心のない一般の消費者にも知られるようになってきています。

特にクラウドファンディング自体になじみがあり、またさまざまなものづくりや経済活動を購入や寄付で応援することを楽しむ若年層が増えたことで、抵抗感が薄れていることも不動産クラファン拡大の要因です。

では、不動産クラファンにデメリットやリスクはないのでしょうか。投資商品ですからもちろん投資金額が回収できないといったリスク(元本割れ)は想定内ですが、それ以外のリスクについて考えます。

まず、不動産クラファンは投資期間が事前に運用側によって決められており、その期間が満了しないと原則として売却・清算できません。つまり自分が売りたいと思ったときに売れないというリスク(流動性リスク)があります。

ただし、不動産クラファンは小口化されており、一口1万円、5万円といった不動産投資としては極めて少額なロットから投資可能であることを考慮すれば、流動性リスクは相対的に低いと見ることができます(もちろん1000口など大口投資になれば別です)。

また、不動産クラファンに投資する目的で金融機関から融資を受けるといったことも現時点ではできません。自身が保有する資産を担保として融資を受け、それを不動産クラファンに投資することはできますから結果的に同じことですが、レバレッジを効かせた投資を実施したいと考えるならば不動産の現物に投資したほうがスキームとしてはシンプルです。

さらに、不動産クラファンにおける投資先は特定のファンドであったり、中小企業であることも少なくないので、解散・倒産した際に投資資金を回収できなくなるというリスクは常にあります。

このようなリスクは不動産投資だけでなく、さまざまな投資商品にあるものなので、一様にデメリット・リスクとして避けるのではなく、リスクヘッジをしながら少額投資で自己資金を増やす手法と認識すればいいでしょう。

住宅やホテル、オフィスビルの開発に参画することによって社会インフラの整備に貢献できますから、クラウドファンディングと同じ感覚で、有望そうな不動産クラファンを“応援”することを検討してみてください。ただし、“投資は自己責任”が大原則であることもお忘れなく。

 
中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

関連する最新コラム

キーワードから検索

footer logo
不動産業・住宅業にかかわる「会社や人」の課題を発見・解決し、
成果をもたらす行動スイッチをONにするメディア
業務支援サービス提供企業の方へ
LIFULL HOME'S Businessへ自社のサービスを掲載。
全国の不動産・住宅会社様へアピールいただけます!
facebook

Facebook
コラムやセミナー、業界情報などの最新情報をいち早くお届けします。

その他のビジネス向けサービス