【不動産業開業の資金調達】日本政策金融公庫の融資制度の種類と注意点
現在、不動産会社に勤めながら、将来的に不動産業を開業したいとお考えの方もいるのではないでしょうか。不動産業の開業には、約400〜500万円の費用が必要です。すべてを自己資金で準備することは決して容易なことではありません。
自己資金に不安があり、独立開業をするか決めかねているという方は、日本政策金融公庫の融資制度を活用することも一つの方法です。
この記事では、日本政策金融公庫で利用できる融資制度の種類と注意点について解説します。
なお、不動産業の開業に必要な初期費用や運転資金、補助金制度については、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
≫ 不動産業の開業資金はいくらかかる? 初期費用や運営資金などを解説
目次[非表示]
- 1.日本政策金融公庫とは
- 2.不動産業開業で利用できる融資制度
- 3.日本政策金融公庫で融資を受ける際の注意点
- 3.1.借り入れ条件によって金利が異なる
- 3.2.事業計画の遂行能力が精査される
- 4.まとめ
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫とは、資金調達が困難な中小企業・小規模事業者や、自然災害の影響を受けやすい農林水産事業者に対して、融資・信用保険などの支援を行う政策金融機関です。日本金庫とも呼ばれます。
国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫を前身とした政策金融機関として、2008年に設立されました。日本政策金融公庫では、新事業をはじめ、事業の再生・継承、海外展開・農林水産事業の新たな展開に向けたさまざまな支援を行っています。
不動産業の開業資金を調達する際は、新たに事業を始める方を対象とした融資制度を活用できる可能性があるため、事前に確認しておくことが大切です。
不動産業開業で利用できる融資制度
日本政策金融公庫の融資制度のなかで、不動産業の開業に利用できる可能性があるのは、“新規開業資金制度”と“新創業融資制度”です。
ここでは、それぞれの制度について詳しく解説します。
新規開業資金制度
1つ目は、新規開業資金制度です。新規開業資金制度とは、新たに事業を始める方を支援する融資制度です。
対象者や資金の使途、融資限度額などは、以下のように定められています。
▼新規開業資金制度の概要
対象者 |
いずれかに当てはまる方
|
---|---|
資金の使途 |
新事業の開始後に必要な設備資金および運転資金 |
融資限度額 |
7,200万円(うち4,800万円は運転資金) |
貸し付け期間 |
設備資金:20年(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年(うち据置期間2年以内) |
※2022年8月2日時点の情報
以下のいずれかに該当する方は、通常よりも有利な条件で融資が受けられる可能性があります。
- 女性・若者(35歳未満)・シニアの方(55歳以上)
- 廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方
- 中小会計を適用して創業する方
制度の詳細や利率については、日本政策金融公庫のホームページでご確認ください。
(出典:地方創生サイト『新規開業支援資金【日本政策金融公庫(国民生活事業)】』)
新創業融資制度
2つ目は、新創業融資制度です。新規開業資金制度と同様に、新たに事業を始める方を対象とした融資制度ですが、原則、担保や保証人が不要とされています。
ただし、事業計画の内容や融資金額、自己資金の割合によっては、担保・保証人が必要になるケースもあります。なお、法人として融資を受ける場合において、代表者が連帯保証人となる場合には、利率が0.1%低減されます。
▼新創業融資制度の概要
対象者 |
以下2つの要件を満たす方
|
---|---|
資金の使途 |
新事業の開業、または事業開始後に必要な設備投資・運転資金 |
融資限度額 |
3,000万円(うち1,500万円は運転資金) |
貸し付け期間 |
各融資制度に定める貸し付け期間 |
※2022年8月2日時点の情報
制度の詳細や利率については、日本政策金融公庫のホームページでご確認ください。
※現在勤務中の企業と同じ業種の事業を始める方や、『産業競争力強化法』に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方は、本要件を満たすものと見なされます。
(出典:経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室『経済産業省の女性活躍推進に向けた起業支援の取組』)
日本政策金融公庫で融資を受ける際の注意点
日本政策金融公庫の融資制度を利用する際は、自己資金額や金利について事前に確認が必要です。
ここからは、不動産業の開業に新規開業資金制度・新創業融資制度を活用する際の注意点について解説します。
借り入れ条件によって金利が異なる
新規開業資金制度・新創業融資制度の金利は一律ではなく、融資期間や担保の有無などによって異なります。
一般的に、自己資金の割合が多い方や、事業の実現性・成長性が高いと判断される方は、低金利で融資を受けやすいといわれています。
ただし、原則無担保・無保証人で利用できる新創業融資制度の場合、担保を提供する融資と比べて基準利率が高く設定されている点には注意が必要です。
事業計画の遂行能力が精査される
新規開業資金制度・新創業融資制度には、融資の限度額が設定されていますが、限度額内であっても、必ず希望する額の融資を受けられるわけではありません。
自己資金額や事業計画書の内容によっては、上限額まで借り入れできない可能性や、融資を受けられない可能性があります。
融資制度を活用する際は、不動産業の開業に必要な資金を踏まえて、適正な事業計画と返済計画を立てたうえで申請することが重要です。
まとめ
この記事では、不動産業の開業に活用できる日本政策金融公庫について、以下の項目を解説しました。
- 日本政策金融公庫とは
- 不動産業開業で利用できる融資制度
- 日本政策金融公庫で融資を受ける際の注意点
不動産業の開業にかかる多額の資金を自己資金でまかなうことが難しい場合、日本政策金融公庫の融資制度を活用することも一つの方法です。
融資制度を活用することで、開業に必要な設備資金や運転資金の融資が受けられる可能性があります。
ただし、担保や保証の有無によって金利が異なるほか、事業計画によっては上限額まで借り入れできないことがあります。
不動産業の開業を検討している方は、必要な費用と自己資金額を基に、事業計画や返済計画をきちんと立てたうえで融資を受けることが大切です。
なお、不動産業の開業にかかる初期費用や運転資金、活用できる補助金についての詳細はこちらの記事で解説しています。ぜひご一読ください。
≫ 不動産業の開業資金はいくらかかる? 初期費用や運営資金などを解説