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エレベーターの保守点検|メンテナンス会社の選び方から補助金まで解説

エレベーターの保守点検|メンテナンス会社の選び方から補助金まで解説

エレベーターは、人や荷物を安全に運ぶ重要な役割を担っているため、保守点検が非常に重要です。そうはいっても、メンテナンスを依頼する会社選びに迷うこともあると思います。
 
この記事では、エレベーターの保守点検の義務から契約の種類、メンテナンス会社選びのポイントまで解説します。

目次[非表示]

  1. 1.エレベーターの保守点検の義務と内容
    1. 1.1.エレベーター保守点検に関連する法律
    2. 1.2.エレベーターの定期点検は1~3ヶ月ごとに行う
    3. 1.3.エレベーターの保守契約は2種類
    4. 1.4.POG契約
    5. 1.5.フルメンテナンス契約
  2. 2.エレベーターの保守点検にかかる費用の相場
  3. 3.エレベーターのメンテナンス会社選びのポイント
    1. 3.1.契約内容と合っているか確認する
    2. 3.2.相見積もりを取とる
    3. 3.3.会社の実績・サポート体制をチェックする
  4. 4.エレベーターの改修工事に活用できる補助金
  5. 5.まとめ|物件に合あわせてメンテナンス会社を選ぼう

エレベーターの保守点検の義務と内容

エレベーターの保守点検に関しては、建築基準法で定められています。ここでは、建築基準法上義務づけられている法定検査ならびに定期的に実施する保守点検の内容について解説します。

エレベーター保守点検に関連する法律

建築基準法第12条第3項では、エレベーターが設置されている建物の所有者に対し、1級建築士などの国家資格保有者に検査を依頼し、その結果を特定行政庁に報告する義務を定めています。
 
これを受け、建築基準法施行規則第6条第1項では、おおむね6ヶ月から1年の間隔で特定行政庁が定める時期に報告を行うことを規定しているため、少なくとも1年に1回の定期点検が必要です。法定点検を受けると、証明として「定期検査報告済証」が交付されます。
 
また、より高い安全性を確保するために、かごや乗り場の戸が開いたままエレベーターが昇降した場合に、自動的に制止させる「戸開走行保護装置」の設置が2009年から義務付けられています。
 
(出典:e-GOV法令検索「建築基準法」
(出典:e-GOV法令検索「建築基準法施行規則」
(出典:国土交通省「昇降機(エレベーター、エレベーター等)について」

(出典:国土交通省 戸開走行保護装置リーフレット

エレベーターの定期点検は1~3ヶ月ごとに行う

法律上定められた定期検査以外に、建築基準法第8条や国土交通省の「昇降機の適切な維持管理に関する指針」を踏まえ、物件の所有者、管理者または占有者にはエレベーターを適切に維持管理する努力義務が課されます。
 
そのため、すべてのエレベーターについて定期的な保守点検が必要です。この保守点検を実施する頻度は、エレベーターを設置する事業者によって異なります。
 
保守点検では、エレベーターの走行・着床状態の確認から清掃、各種調整、オイルの補充、状況に応じて摩耗・劣化した部品の交換などを行います。
 
(出典:e-GOV法令検索「建築基準法」
(出典:国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」

エレベーターの保守契約は2種類

エレベーターの保守契約には「POG契約」と「フルメンテナンス契約」の2種類があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットについて解説します。

POG契約

POG契約とはParts・Oil・Greaseの頭文字を取ったもので、エレベーターの装置や部品の点検と、電球やヒューズ、オイルなど、保守に必要な消耗品の交換・調整・給油が含まれている契約です。故障や劣化した部品の交換、修理費用は含まれておらず、これらについては別途見積もりが必要です。
 
月々のメンテナンス費用を抑えやすい契約形態ですが、エレベーターに故障や不具合が生じた場合は、毎回見積もりを 取り業者を手配する手間がかかります。エレベーターの使用頻度が高い場合は、修理の機会が増え、結果的に割高になる可能性もあります。

フルメンテナンス契約

フルメンテナンス契約には、エレベーター装置や部品の点検、消耗品の交換、補充が含まれるほか、故障や劣化した部品の交換、修理費用も含まれます。
 
POG契約よりも毎月のメンテナンス費用は高くなりますが、急に修理が必要となっても見積もりなどの手間がかからず、年間のメンテナンス費用を把握しやすい点が特徴です。

エレベーターの保守点検にかかる費用の相場

エレベーターの保守点検にかかる費用の目安は、次のとおりです。


メンテナンス費用(月額)
POG契約

1万~4万円

フルメンテナンス契約

2万~5万円


保守点検費用は、契約形態だけでなく依頼する会社でも変わります。

メンテナンス会社には、独立系とメーカー系の会社があり、メーカー系は三菱や日立、東芝などのメーカー系列のメンテナンス会社を指し、エレベーター保守点検市場の90%以上を占めるといわれています。

メンテナンス費用はメーカー系列ではない独立系の会社のほうが抑えられる傾向です。

(出典:JEMAエレベータメンテナンス事業協同組合「業界の現状」

エレベーターのメンテナンス会社選びのポイント

エレベーターのメンテナンス会社を選ぶ際のポイントについて解説します。

契約内容と合っているか確認する

まず、マンションやエレベーターの稼働状況が契約内容と合っているかを確認しましょう。
建物自体の築年数が浅い、もしくはエレベーターの使用頻度がそれほど高くなければ、部品交換の必要性や不具合の可能性は低く、POG契約を選ぶことでコストを削減できる場合があります。

反対に、築年数が経過した建物、あるいは戸数に対してエレベーターの台数が少なく、使用頻度が高い場合ほど、フルメンテナンス契約のほうが向いているといえます。

相見積もりを取とる

メンテナンス費用は会社によって異なるため、2〜3社程度から見積もりをとって比較しましょう。保守点検の回数もメンテナンス会社によって異なることがあるため、同じ契約内容で見積もりを取ることでコストダウンできる場合があります。

また、メンテナンス費用を抑える方法として、築年数が浅い間はPOG契約、築年数の経過に応じて途中からフルメンテナンス契約に切り替えることも考えられます。メンテナンス会社が両方の契約に対応しているか、あらかじめ確認しましょう。

会社の実績・サポート体制をチェックする

メンテナンス会社のWebサイトで実績や社歴をチェックし、信頼できる会社を選びましょう。
保守点検業界で長期間運営してきた実績があれば、さまざまなノウハウや技術力を持っている可能性が高く、信頼性も高いといえます。

また、24時間利用されるエレベーターのメンテナンス会社を選ぶ基準としては、サポート体制も重要です。24時間対応のコールセンターを設置している会社であれば、緊急のトラブルが発生した場合でも早い対応が期待できます。

なお、複数のエレベーターが設置されているマンションでは、製造メーカーが統一されていない場合もあり、メンテナンス会社によっては系列ではない会社が製造したエレベーターのサポートを対象外としているケースもあります。

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メンテナンス会社は相見積もりの上、マンションのエレベーターの稼働状況なども踏まえて検討したい

エレベーターの改修工事に活用できる補助金

エレベーターの安全性を高めるための改修工事に活用できる補助金があります。
 
東京都千代田区では、一定の条件を満たした分譲マンションの管理組合に対し、エレベーターの地震時管制運転装置ならびに戸開走行保護装置の設置費用の1/3かつ上限30万円の助成を行っています。
 
さらに、停電時自動着床装置※1を含むリニューアル工事を行う場合は、設置費用の1/3かつ上限100万円の助成を受けることが可能です。

また、大阪府大阪市では、マンションオーナーや管理組合に対して、P波感知型地震時管制運転装置※2や戸開走行保護装置などの設置費用の補助を行っています。
 
建物が建てられた時期、延床面積など、一定の基準を満たす必要がありますが、補助対象となれば、補助対象工事にかかる費用の23.0%の補助(上限218万5,000円/台)を受けることが可能です。
 
※1 停電時自動着床装置とは、停電時に電源を専用バッテリーに切り替え、最寄り階に着床させることで閉じ込めを防止する装置
※2 P波感知型地震時管制運転装置とは、本震(S波)の前に到達する初期微動(P波)を感知してエレベーターを最寄り階に自動的に停止させる装置
 
(出典:東京都千代田区「千代田区で活用できるマンション関連支援制度」p.13
(出典:大阪市「大阪市エレベーター防災対策改修補助事業について」

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補助金の要件や最新情報は各自治体のホームページを参照

まとめ|物件に合あわせてメンテナンス会社を選ぼう

エレベーターの安全性を確保するためには、法定点検だけでなく定期的な保守点検が大切です。メンテナンス会社を選ぶ際は、マンションの築年数やエレベーターの稼働状況、設置環境などを踏まえ、最適な契約形態を選ぶようにしましょう。
 
また、メンテナンス会社や契約形態によって費用は異なります。適切な形態の契約について複数社に相見積もりを取ることで、サポート体制やメンテナンス費用を比較し、管理コストを削減することができます。
 
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吉満 博
吉満 博
不動産コンサルタント・ライター。株式会社あつみ事務所 代表取締役。不動産の購入から売却まで出口戦略、資産性を踏まえ、長期の視点で不動産コンサルティング・売買仲介サービスを提供する。また、購入・住み替え前のライフプランニングから、資金計画や住宅ローン、保険の見直しなど、お金に関するセカンドオピニオンを提供。不動産・住宅ライターとして、不動産メディアを中心に、これまでの建築設計、不動産売買の経験を踏まえた記事執筆をおこなう。

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