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宅建業の開業に必要な“営業保証金”の仕組みをわかりやすく解説

宅地建物取引業(以下、宅建業)は、『宅地建物取引業法』に基づいて業務を行う業種です。同法律では、宅建業を開業する際は、“営業保証金”を供託することが義務づけられています。

保証協会に加入する場合は、営業保証金を供託する代わりに、“弁済業務保証金分担金”を納付する必要があります。営業保証金と弁済業務保証金分担金は金額や納付先などが異なるため、違いについて理解しておくことが重要です。

この記事では、宅建業の開業に必要な営業保証金の仕組みのほか、弁済業務保証金分担金との違いについてわかりやすく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.営業保証金とは
    1. 1.1.営業保証金の金額
    2. 1.2.供託手続きの流れ
  2. 2.営業保証金の供託が必要な理由
  3. 3.弁済業務保証金分担金との違い
  4. 4.営業保証金の保管替え・取戻しについて
    1. 4.1.保管替えとは
    2. 4.2.取戻しとは
  5. 5.まとめ

営業保証金とは

営業保証金とは、宅建業の取引において相手方に損害が発生した際に、相手方の利益を保護するために供託する金銭等のことです。

宅建業を開業して営業を始める前に、営業保証金を供託することが『宅地建物取引業法』第25条第1項で義務づけられています。

第二十五条 宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。

引用元:『宅地建物取引業法』第25条第1項


営業保証金の金額

営業保証金は、『宅地建物取引業法施行令』第2条の4によると、主たる事務所につき1,000万円、その他事務所につき、事務所ごとに500万円の割合による金額の合計額を供託すると定められています。

第二条の四 法第二十五条第二項に規定する営業保証金の額は、主たる事務所につき千万円、その他の事務所につき事務所ごとに五百万円の割合による金額の合計額とする。

引用元:『宅地建物取引業法施行令』第2条の4

たとえば、本店と2つの支店を開業する場合は、次のように計算できます。

▼例:本店と2つの支店を開業する場合

本店の営業保証金
1,000万円
支店の営業保証金
500万円 × 2=1,000万円
営業保証金の合計
1,000万円 + 1,000万円=2,000万円

なお、金銭のほかに有価証券を供託することも可能です。

(出典:e-Gov法令検索『宅地建物取引業法施行令』/法務省『供託Q&A』)


供託手続きの流れ

宅建業を開業する前に、国が管轄する最寄りの供託所に営業保証金を供託します。供託所とは、一般的に法務局・地方法務局とその支局です。

▼供託手続きの流れ

 1.免許申請後、国土交通省または都道府県知事から免許登録の通知はがきが届く

 2.主たる事務所の最寄りの供託所に営業保証金を供託する(法務局、地方法務局および支局)

 3.免許登録を受けた国土交通大臣または都道府県知事に、供託物受け入れが記載された供託書の写しを添付して届け出る

 4.免許証の交付を受ける

 5.営業開始

なお、宅建業の免許登録日から3ヶ月以内に、供託手続きと届出を完了しなければなりません。その後、国土交通大臣または都道府県知事から催告が到達した場合、その日から1ヶ月以内に届出を行わなかった場合、免許が取り消される場合があるため、注意が必要です。

(出典:e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』)

営業保証金の供託が必要な理由

営業保証金は、取引の相手方を保護する観点から、宅建業の安全な取引のために必要です。

不動産売買や仲介などの宅建業の取引では、債務不履行などの事故が発生した場合に、相手方の損害に対する弁済が必要になることもあります。

特に不動産売買においては取引金額が高額になりやすいため、損害発生時に多大な賠償金の支払いが求められるケースも考えられます。手元に資金が準備できない場合、相手方への弁済ができない可能性があります。

営業保証金の供託は、そのような場合に、相手方の債権の弁済が実行できる仕組みになっています。弁済額の上限は、供託した営業保証金の相当額とされています。

弁済業務保証金分担金との違い

営業保証金は、万が一に備えるお金です。しかし、主たる事務所につき1,000万円という費用が、宅建業を開業する方にとって大きな負担になることも考えられます。

こうした負担を軽減するために、営業保証金の供託に代わり、“弁済業務保証金分担金”を納める制度もあります。

弁済業務保証金分担金は、保証協会に加入する際に納付するお金です。弁済業務保証金分担金を納付することで、営業保証金の供託が免除されます。

弁済業務保証金分担金は、主たる事務所につき納付金額が60万円に設定されているため、開業時の初期費用を抑えられるメリットがあります。


▼営業保証金と弁済業務保証金分担金の違い


営業保証金
弁済業務保証金分担金
金額
  • 主たる事務所:1,000万円
  • その他事務所ごと:500万円
  • 主たる事務所:60万円
  • その他事務所ごと:30万円
納付先
最寄りの供託所

加入する保証協会に納付

 1.公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会

 2.公益社団法人 全日本不動産協会

保証協会に弁済業務保証金分担金を納付すると、協会から法務大臣および国土交通大臣の定める供託所に弁済業務保証金が供託されます。

宅建業の取引によって生じた相手方の損害については、弁済業務保証金から弁済が行われる仕組みとなっています。

(出典:e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』)

営業保証金の保管替え・取戻しについて

事務所を移転した際や免許が失効した場合、供託した営業保証金の保管替え・取戻しを行うことが可能です。


保管替えとは

保管替えとは、主たる事務所を移転した場合に、営業保証金の供託先を変更する手続きです。

宅地建物取引業法』第29条によると、宅建業の事務所の移転に伴い、管轄の供託所が変更する場合は、従前の供託所に対して事務所移転先の最寄りの供託所への保管替えを請求するよう定められています。

第二十九条 宅地建物取引業者は、その主たる事務所を移転したためその最寄りの供託所が変更した場合において、金銭のみをもつて営業保証金を供託しているときは、法務省令・国土交通省令の定めるところにより、遅滞なく、費用を予納して、営業保証金を供託している供託所に対し、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求し、その他のときは、遅滞なく、営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』第29条

金銭のみで供託している場合は、遅滞なく費用を従前の供託所に予納します。金銭ではなく有価証券を供託している場合は、手続きが異なるため、最寄りの供託所へ問合せをしてください。

保管替えが完了した後は、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に、営業保証金供託済届出書・供託書の原本とその写しを遅滞なく提出する必要があります。

(出典:e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』『宅地建物取引業法施行規則』/千葉県『宅地建物取引業に係る営業保証金等について』)


取戻しとは

取戻しとは、廃業や免許取消しなどで営業保証金を供託しておく必要がなくなった際に、供託所に対して営業保証金の返還を請求することです。

取戻しを請求できるケースには、以下が挙げられます。

▼取戻しを請求できるケース

  • 廃業
  • 免許の期限切れ失効
  • 免許取消し
  • 一部事務所の廃止

営業保証金の取戻し請求には、以下の手続きが必要です。

※移転に伴う取戻しは除く

▼取戻し手続きの流れ

 1.廃業・支店の廃止などの届出

 2.官報公告の掲載依頼

 3.営業保証金取戻し公告済届出書の届出

 4.債権の申し出に関わる証明の交付申請・交付(債権申し出がない場合)

 5.営業保証金の取戻し

取戻しを請求する場合は、宅建業者が債権の弁済を受ける権利を有する者(取引において損害が発生した相手方)に対して申し出るよう官報で公告します。公告から6ヶ月以内に申し出がなかった場合に取戻しの手続きができます。

なお、保証協会に加入しており、弁済業務保証金分担金を納付している場合の対応については、各協会に問合せをしてください。

(出典:e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』/国土交通省『営業保証金取戻し公告済届出書』/大阪府『営業保証金の取戻しについて』/東京都住宅政策本部『営業保証金の取戻し手続』)

まとめ

この記事では、宅建業の開業に必要な営業保証金について、以下の項目を解説しました。

  • 営業保証金とは
  • 営業保証金の供託が必要な理由
  • 営業保証金と弁済業務保証金分担金の違い
  • 営業保証金の保管替え・取戻しについて

営業保証金の供託は、宅建業の取引において相手方を保護する観点のほか、取引の安全性を高めるために重要です。

今後、宅建業の開業を視野に入れている方は、営業保証金の仕組みと併せて、事務所を移転する際の保管替えや、廃業時などの取戻しについても把握しておくことが重要です。

また、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納めた場合は、営業保証金が免除されます。開業に伴う初期費用の負担を抑えたい場合には、加入を検討してみてはいかがでしょうか。

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