不動産業は自宅で開業できる? 要件やメリット・デメリットを解説
今後、独立して不動業を開業しようと検討している方のなかには、「自宅でも開業できるのだろうか」「自宅で開業することでどのようなメリットがあるのだろう」などの疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
不動産業の開業には事務所の設置が義務づけられており、独立性や継続性など、さまざまな要件が設けられています。
また、事務所をどこに設置するかは、開業後の集客にも影響するため、立地やコストなどを踏まえて選定することが重要です。
本記事では、不動産業における事務所の設置要件や、自宅を事務所とするメリット・デメリットを解説します。
不動産業は自宅での開業が可能
不動産業を開業する際は、原則として、一般的な一戸建て住宅やマンションの一室など、自宅の一部を事務所とすることは認められていません。ただし、一定の要件を満たせば受理されるケースもあります。
不動産業における事務所の定義は、以下のとおりです。
▼不動産業の事務所の定義
- 継続的に業務を行える
- 社会通念上、事務所として認識される独立した形態を備えている
自宅の一室を事務所として利用したい場合は、都道府県庁の窓口へ事前に相談することで、可能になる場合があります。
ただし、生活空間と事務所を区別する必要があるため、場合によっては間取りの変更や改修などが求められます。
(出典:国土交通省『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』/東京都『宅地建物取引業免許申請の手引』)
自宅を事務所にするための要件
自宅を事務所にする場合、独立した形態を持ち、継続的かつ専属的に利用できるスペースを確保する必要があります。
一般の一戸建て住宅の一部を事務所にする際の要件は次の3つです。
▼一戸建て住宅の一部を事務所とする場合の要件
- 自宅の出入り口とは別に、事務所専用の出入り口がある
- ほかの部屋と壁で間仕切りされている
- 事務所の用途のみに使用して、内部に事務所としての形態を備えている
ここでいう“事務所としての形態”とは、接客用の机や椅子など、事務所として必要な設備が備わっていることを指します。
▼要件を満たす事務所の例
- 事務所専用の出入り口があり、生活空間を通らずにアクセスできる
- 事務所を家族の個室や生活空間として使用していない
上記の要件を満たせない場合は、自宅を改修するか、レンタルオフィスやテナントなどの利用を検討する必要があります。
レンタルオフィスやテナントを借りて開業する場合の事務所の設置要件については、こちらの記事で詳しく解説しています。
(出典:東京都『宅地建物取引業免許申請の手引』)
自宅で不動産業を開業するメリット・デメリット
不動産業を自宅で開業するにはメリット・デメリットがあるため、開業後の集客や経費などを考慮して検討することが重要です。
メリット
自宅の一部を事務所にする主なメリットは次のとおりです。
- 開業費用を抑えられる
- 毎月の運営費を抑えられる
- 経費を削減できる
たとえば、レンタルオフィスやテナントを借りる場合、賃料・管理費などの固定費が毎月発生するほか、入居時には敷金・礼金の支払いも必要です。
自宅の一部を事務所にすれば、事務所の賃料や賃貸借契約時の敷金・礼金がかからないため、開業資金、経費の削減につながります。
デメリット
一方で、デメリットには次の2つが挙げられます。
- 立地によって新規顧客の獲得が難しいことがある
- 仕事とプライベートの区別が難しい
自宅の立地によっては、「足を運びづらい」「車で行きにくい」などの理由から、顧客が来店に至らないというケースも考えられます。
また、自宅内に事務所があることで「仕事とプライベートの切り替えが難しい」「家族への配慮が必要でプライバシーの不安から生活のしづらさを感じる」といった運営面での懸念もあります。
特に、事務所の設置場所は開業後の業績にも影響する可能性があるため、開業時の費用だけでなく、来店を促しやすい立地やアクセスなども踏まえて検討が必要です。
まとめ
この記事では、自宅で不動産業の開業を検討している方に向けて、以下の内容を解説しました。
- 一定要件を満たすと自宅での開業が可能なこと
- 自宅を事務所にするための要件
- 自宅で不動産業を開業するメリット・デメリット
一戸建ての自宅で不動産を開業したい場合は、「出入り口が独立している」「ほかの部屋と壁で区切られている」「事務所の用途に限られている」など、一定の要件を満たすことで、開業が可能です。
ただし、自宅の間取りやつくりが要件を満たしていない場合、改修やテナントの賃借などの選択肢を検討する必要があります。
不動産業を開業する際は、集客や運営資金など、メリット・デメリットを理解したうえで、事務所の設置場所を選定することが重要です。不動産業の独立開業にかかる費用や運営資金などについては、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
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