【マンション管理の資格】管理業務主任者の需要と現状について
管理業務主任者とは、マンション管理会社と管理組合との管理受託契約における契約業務や、管理事務の報告などを主な業務とする国家資格の保有者です。契約締結時に必要な重要事項の説明や、契約書への記名・押印などを行います。
管理業務主任者の資格取得を検討しながら、「有資格者の需要はどれくらいあるのだろう」「どれくらいの人が活躍しているのだろう」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、管理業務主任者の資格を取得したばかりの方や、これから取得を目指す方に向けて、管理業務主任者の需要と将来性について解説します。
なお、マンションの管理に関わる資格には“マンション管理士”もありますが、管理業務主任者とは立場や業務内容が異なります。
マンション管理士の需要については、こちらの記事で解説しています。
目次[非表示]
- 1.管理業務主任者の需要
- 1.1.マンション管理の現状
- 1.2.管理業務主任者の設置義務
- 1.3.管理業務主任者の独占業務
- 2.管理業務主任者の需要が高まる理由
- 2.1.分譲マンションのストック数の増加
- 2.2.マンションの老朽化
- 2.3.マンション居住者の高齢化
- 3.まとめ
管理業務主任者の需要
管理業務主任者は、マンション管理会社に設置義務があることや独占業務を行えることから、安定した需要があると考えられます。
ここでは、マンション管理組合の運営状況のほか、管理業務主任者の設置義務や独占業務について解説します。
マンション管理の現状
マンション管理組合の運営には、マンション管理会社や管理業務主任者が活用されています。
国土交通省の『平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状』によると、管理者の選任に専門家を「活用したことがある」と回答したマンションは全体の41.8%です。
画像引用元:厚生労働省『平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状』
そのうち、管理業務主任者を活用したマンションの割合は、建築士と弁護士に続いて多いことが分かります。
画像引用元:厚生労働省『平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状』
また、マンション内で発生したトラブルの処理方法については、「管理組合内で話し合った」との回答がもっとも多く、「マンション管理業者に相談した」との回答が2番目に多いです。
マンション管理組合では、運営に際して管理会社や管理業務主任者が活用されており、建物の不具合、トラブル対応などの相談も見られます。こうした状況から、管理業務主任者には一定の需要があると考えられます。
(出典:厚生労働省『平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状』)
管理業務主任者の設置義務
マンションの管理会社には、事務所ごとに管理業務主任者の設置と専任性が求められます。
『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』第56条では、管理業務主任者の設置義務について以下のように定めています。
▼『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』第56条
マンション管理業者は、その事務所ごとに、事務所の規模を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の管理業務主任者を置かなければならない。ただし、人の居住の用に供する独立部分(区分所有法第一条に規定する建物の部分をいう。以下同じ。)が国土交通省令で定める数以上である第二条第一号イに掲げる建物の区分所有者を構成員に含む管理組合から委託を受けて行う管理事務を、その業務としない事務所については、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』
また、“国土交通省令で定める数”については、『マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則』で以下のように記載されています。
▼マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則第61条
法第五十六条第一項の国土交通省令で定める管理業務主任者の数は、マンション管理業者が管理事務の委託を受けた管理組合の数を三十で除したもの(一未満の端数は切り上げる。)以上とする。
引用元:e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則』
マンション管理会社では、管理委託を受けた管理組合30組合につき、1名以上の専任の管理業務主任者の設置が必要です。
なお、ここでいう“専任”とは、マンション管理業を営む事務所に常勤して、マンション管理業を主として従事することを指します。
(出典:国土交通省関東地方整備局『マンション管理業・管理業務主任者について』/e-Gov法令検索『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』『マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則』)
管理業務主任者の独占業務
管理業務主任者は、『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』において独占業務が定められています。管理業務主任者の主な独占業務は以下の4つです。
▼管理業務主任者の4つの独占業務
独占業務 |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 |
---|---|
管理受託契約における重要事項説明 |
第72条第1項 |
重要事項説明書の記名・押印 |
第72条第5項 |
管理受託契約書の記名・押印 |
第73条第2項 |
管理事務に関する報告 |
第77条 |
管理業務主任者の需要が高まる理由
管理業務主任者の需要が高まる背景には、マンションストック数の増加や老朽化、居住者の高齢化といった課題が理由として挙げられます。
分譲マンションのストック数の増加
国土交通省の『マンションストック長寿命化等モデル事業』によると、2020年時点の分譲マンションのストック総数は約675万戸あり、右肩上がりで伸びている状況です。
▼分譲マンションストック戸数
画像引用元:国土交通省『マンションストック長寿命化等モデル事業』
(出典:国土交通省『マンションストック長寿命化等モデル事業』)
マンションの老朽化
分譲マンションのストック数の増加に伴い、築後30〜50年超の高経年分譲マンションも今後増えていくと推測されています。
実際に2020年末時点、築40年を超える分譲マンションは約103万戸あり、ストック総数の約15%を占めています。高経年分譲マンションは、10年後には約232万戸、20年後には約405万戸まで増えると推計されています。これにより、マンション管理会社が抱える物件の数も増えていくことが予測できます。
▼高経年分譲マンション戸数
画像引用元:国土交通省『マンションストック長寿命化等モデル事業』
(出典:国土交通省『マンションストック長寿命化等モデル事業』)
マンション居住者の高齢化
国土交通省『平成30年度マンション総合調査結果』によれば、8,400の区分所有者のうち、60〜70歳代の世帯主の割合は約半数です。一方、30歳代以下の居住者は、前回の調査と比較して減少傾向にあります。
マンション居住者の高齢化や若い世代の居住者の減少によって、管理組合の担い手となる役員が不足するという課題も表れています。そのため、マンション管理に係るマネジメント業務を担う管理業務主任者が必要とされているといえます。
このように、マンション管理会社に求められる役割が増えることで、マンション管理会社にとって欠かせない存在である管理業務主任者の需要が今後さらに高まると考えられます。
(出典:国土交通省『マンションストック長寿命化等モデル事業』『平成30年度マンション総合調査結果』『マンション管理適正化法の改正概要』/総務省『マンションの適正な管理の推進等に関する調査』)
まとめ
この記事では、管理業務主任者の需要と現状について、以下の内容を解説しました。
- 管理業務主任者の需要
- マンション管理の現状
- 管理業務主任者の設置義務と独占業務
- 管理業務主任者の需要が高まる理由
マンションの管理組合の運営において、マンション管理会社や管理業務主任者を活用しているケースは少なくありません。
また、マンションの老朽化による建て替えやストック数の増加、マンション居住者の高齢化による管理組合の担い手不足などにより、今後も管理業務主任者の需要は高まっていくと推測されます。
業務範囲の拡大を検討中の不動産仲介会社・不動産管理会社や、将来的にキャリアアップしたいとお考えの方は、管理業務主任者の資格取得を検討されてはいかがでしょうか。
なお、管理業務主任者の試験概要や登録要件などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
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