不動産開業で成功する5つのポイント
「不動産会社を設立し、独立したい」こういったお話を職業柄、定期的にお聞きすることがあります。独立を希望するかたのなかには、自身のこれまでの不動産キャリアからのステップとして独立する方もいれば、全く異業種からチャレンジするかたもいらっしゃいます。実際に、不動産会社を設立することや、独立することは、そこまで難しくありません。製造業やサービス開発をする企業の設立とは異なり、不動産会社を設立するためには、多額の資金は必要ありません。しかし、実際に不動産会社を設立したあと、事業として軌道に乗せることは、かなりのスキルが必要になります。今回は、不動産会社を設立し、独立するために必要なスキル、ポイントなどを解説していきたいと思います。
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目次[非表示]
- 1.不動産会社の独立、設立に最低限、必要なものとは?
- 2.不動産事業を成功させるポイント
- 2.1.実務経験
- 2.2.財務会計の最低限の知識
- 2.3.事業領域の設定
- 2.4.マーケティング能力
- 2.5.事業の目的の認識
不動産会社の独立、設立に最低限、必要なものとは?
冒頭に述べたように不動産会社を開業する際に、他事業と比べて大きな資金は特に必要ありません。とはいえ、それでもある程度の元手は必要になります。下記が最低必要な資金になります。
- 法人設立費用 20~30万円
- 保証協会の加入(弁済業務負担金他) 約200万円
- 事務所の賃貸借契約費用
- 開業後半年程度、耐えうる現金
まず、会社の設立と保証協会の加入で、250万円程度の資金は必要になります。そして事務所を借りる費用も必要になります。自宅で法人登記し、不動産会社を開業した場合は、事務所の契約費用は発生しませんが、実際に自宅で事業を行う場合、ハードルはかなり高くなります。免許を通すためには、しっかりとした商談スペースが必要になりますし、当然表札なども会社の名前がわかるように提示しなければいけません。さらに、シェアオフィスなどの場合は、借りているオフィス区画がしっかりとした個室でなければ、免許がおりません。
実際に、こうした事務所を借りる計画を軽視して、開業を諦めたかたはかなり多くいらっしゃいます。独立を考えている方は、改めて、事務所の場所や資金などを再確認したほうが良いでしょう。
また、独立開業後、すぐに売上が立ち始めるかといえば、そうではありません。少なくとも半年間程度、無収入でも生活ができ、事務所の賃料が払えるだけの資金は必要になります。また、元手のかからないビジネスといえども、上記の費用以外にも、事務所の什器備品や、ホームページ、各種サイトの開設費用、通信費用などが発生します。ですので、最初の資金計画は、かなり「厳しめ」に見ておくことがポイントとなります。
もちろん、全て自己資金で賄う必要はなく、政策金融公庫などの金融機関を利用することで、元手をおさえられることもできます(その際には、独立する社長自身のこれまでの不動産業でのキャリアが重要になります)。
- 宅地建物取引士の資格
開業の際、社長自身が宅建保有者でなければいけない制限はありません。しかしながら、社長自身が宅建を持っていないと、社長以外の別の方で専任登録をしなければいけません。
ここもかなり重要なポイントになります。「宅建を持っている知り合いのかたを雇用しよう」と思っても、いざそのかたが入社して、しばらくして退職してしまうと、別の宅建保有者を雇用しなければいけません。さらに言えば、別の宅建保有者を雇用できなければ、宅建業自体が取り消しになります。そう考えると、独立の段階で、社長自身が宅建を保有しておくことは、かなり重要になります。実際、この有資格者の問題でかなり苦労している社長の方を多く見てきました。しっかりと勉強し、社長自身が宅建資格を取ることは、事業の存続性を考えても、優先度は非常に高いポイントになるかと思います。
それでは次に開業を成功させるポイントを紹介してみたいと思います。
不動産事業を成功させるポイント
実務経験
さすがに全く実務経験がない状態で、不動産会社を開業することはリスクが高いと思います。仲介業であれ、管理業であれ、実務的な経験を積んでおかなければ、さまざまな業務の壁や業界の慣習の壁に当たってしまうことが多いでしょう。たとえば、仲介業を行う場合でも、顧客へのクロージングや売主、オーナーへの提案など、経験しなければわからない営業テクニックというものがあります。また、そもそも業務経験がないと、「信頼」という部分もなかなか顧客から得ることが、難しいと思います。
イメージとしては、3年程度のキャリアは必要になるでしょう。2、3年の経験を積み、その業務をひととおり把握することができて、初めて事業に対して現実的なイメージが湧いてくるのではないでしょうか。
財務会計の最低限の知識
開業するにあたり、少なくても決算書の読み方や財務会計の最低限の知識は必要になります。売上とコストのバランスなどを見ておかなければ、あっという間に資金は尽きてしまいます。また上記でも述べましたが、開業後は思いのほか、人件費や広告宣伝費などにコストがかかってきます。一番良くないのは、「どんぶり勘定」で、売上が出たらとにかく経費を使う、というパターンです。
決算の2ヶ月後には、利益があった場合は法人税等の納税をしなければいけません。また決算内容は、金融機関との付き合いにおいても非常に重要になります。信頼できる税理士にお願いするだけではなく、自分自身で財務会計の知識を身に付け、しっかりと決算書を読み込むことができる能力が必要になります。また月次での営業成績を振り返り、細かく経営分析を行うスキルも重要になります。
事業領域の設定
独立する場合、「仲介業」で事業を行うのか、それとも「買取再販業」で事業を行うのか、「管理業」で事業を行うのか、それともすべての領域で事業を行うのか、どの領域で事業を行うのかを設定しなければいけません。
仲介業の場合、毎月の売上にはムラが出てきます。高い売上を達成する月もあれば、低い月もあるでしょう。いっぽうで原価はそこまで発生せず、おもに人件費や広告宣伝費などの販管費がメインのコストになります。
買取再販業の場合は、金融機関との連携が重要になりますし、在庫リスクもあります。開業前に事前にこのあたりを精緻に計画することがポイントとなります。
管理業の場合、毎月一定の売上は見込めるものの、売上単価自体は大きくないので、どれだけ管理戸数を取得できるかの「量」がポイントになります。ある一定の管理戸数を超えると、収益は安定してきますが、一定数を超えるまでは経営が大変になります。
このようにそれぞれの事業には一長一短があります。ベストは、それぞれの事業をうまく組み合わせて推進していくことですが、まずは、どの領域を伸ばしていくのか、そしてそれに応じた経営計画をどのように立てていくのかを考える必要があります。
マーケティング能力
開業して数年で大きく成長する不動産会社の共通点として、「集客力」や「独自のネットワーク力」が強いことがあげられます。
集客力に関しては、たとえばポータルサイトで他社よりも多くの反響を獲得できることや、SNS等を含む自社媒体の集客力が強かったりすることがこれに該当します。また、独自のネットワークとは、紹介やリピーターが多く、それのみで、ある程度の収益を見込むことができることです。集客力であれ、紹介リピーターであれ、他社と差別化し、しっかりと集客できる不動産会社が、創業時期にうまく事業を軌道に乗せることができる可能性が高いと感じます。
逆に、この集客力や独自のネットワーク力がなく、ゼロから集客活動を行うこととなれば、かなり創業期は事業運営が厳しくなるでしょう。事業を軌道に乗せるためには、この集客力や独自のネットワーク構築を最優先に考えるのが、得策だと思います。
事業の目的の認識
最後に重要になるのが、「事業の目的の認識」です。最後の紹介となりますが、一番重要なポイントかもしれません。創業期は、売上や利益を上げることに必死になりますが、数年経過し、ある程度事業が軌道に乗ったタイミングで、多くの企業が岐路に立ちます。このまま今の事業を継続するのか、それとも今の事業をさらに大きく成長させるのか、はたまた別事業を行い拡大するのか、多くの経営者がこの問題に直面します。
また事業が拡大していくと、当然雇用も必要になります。会社の方向性がわからないまま、人を雇用すると、事業の方向性を再定義するタイミングで、離脱が発生します。
このようなことが起こらないように、会社の「ビジョン」や「目的」などを明確にしておかなければいけません。可能であれば、創業期の段階でしっかりと設定しておいたほうがいいでしょう。もちろん、ことあるごとに定期的に見直しておけばいいですが、何もビジョンなどを設定しないまま拡大していくと、必ず諸々の問題に当たってしまいます。起業する際に是非、このあたりを検討してみてはいかがでしょうか。
実際に不動産業を行うと、多くの課題や問題点などにぶつかりますが、それ以上に事業を軌道に乗せる喜びや顧客から感謝の言葉を頂く喜びは、とても大きいものです。是非、上記を参考にしていただければと思います。