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賃貸不動産経営管理士とは? 国家資格化された背景と業務内容について

賃貸住宅管理業を営む不動産会社では、事務所・営業所ごとに賃貸住宅管理の知識を有する“業務管理者”を1名以上配置することが義務づけられています。この業務管理者の要件を満たす者に、国家資格の“賃貸不動産経営管理士”が含まれています。

不動産仲介会社・管理会社の勤務者のなかには、業務範囲の拡大やキャリアアップに向けて、賃貸不動産経営管理士の資格取得を検討している方もいるのではないでしょうか。

この記事では、賃貸不動産経営管理士の資格概要をはじめ、国家資格となった背景、主な業務内容について解説します。

(出典:国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト『業務管理者について』)

目次[非表示]

  1. 1.賃貸不動産経営管理士とは
  2. 2.賃貸不動産経営管理士が国家資格化された背景
    1. 2.1.賃貸住宅ニーズ・空き家ストック数の増加
    2. 2.2.受託管理・サブリース契約の増加
  3. 3.賃貸不動産経営管理士の業務内容
  4. 4.まとめ

賃貸不動産経営管理士とは

賃貸不動産経営管理士とは、賃貸住宅管理の適正化・健全化に貢献するための知識や技能、倫理観を持つ専門家のことです。

賃貸不動産経営管理士の資格は、国土交通省が2021年3月に施行した『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』第12条、『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則』第14条に基づき、国家資格に位置づけられました。

第十二条 賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、一人以上の第四項の規定に適合する者(以下「業務管理者」という。)を選任して、当該営業所又は事務所における業務に関し、管理受託契約(管理業務の委託を受けることを内容とする契約をいう。以下同じ。)の内容の明確性、管理業務として行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の妥当性その他の賃貸住宅の入居者の居住の安定及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の円滑な実施を確保するため必要な国土交通省令で定める事項についての管理及び監督に関する事務を行わせなければならない。

引用元:『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』第12条

第十四条 法第十二条第四項の国土交通省令で定める要件は、管理業務に関し二年以上の実務の経験を有する者又は国土交通大臣がその実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者で、次の各号のいずれかに該当するものであることとする。

一 法第十二条第四項の知識及び能力を有すると認められることを証明する事業(以下「証明事業」という。)として、次条から第二十九条までの規定により国土交通大臣の登録を受けたもの(以下「登録証明事業」という。)による証明を受けている者

二 宅地建物取引士(宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第四号に規定する宅地建物取引士をいう。第十七条第一項第二号ロにおいて同じ。)で、国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習を修了した者

引用元:『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則』第14条

委託を受けて賃貸住宅管理業を行う不動産会社は、事務所・営業所ごとに業務管理者を1名以上配置する義務があります。賃貸不動産経営管理士は、この業務管理者として業務を行う資格を有しています。

賃貸不動産経営管理士になるには、年に1回実施される賃貸不動産経営管理士試験に合格して、賃貸住宅管理業の資格者登録を受ける必要があります。

賃貸不動産経営管理士はこれまでは民間資格でしたが、2021年度以降の試験から国家資格として法制化されました。

(出典:e-Gov法令検索『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則』/国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト『業務管理者について』)

賃貸不動産経営管理士が国家資格化された背景

賃貸不動産経営管理士が国家資格化された背景として、賃貸住宅のニーズ・ストック数の増加、受託管理・サブリース契約の増加が挙げられます。


賃貸住宅ニーズ・空き家ストック数の増加

総務省統計局の『平成30年住宅・土地統計調査結果』によると、2018年における住宅総数のうち、民営借家は28.5%となっており、全体の約3割を占めています。

少子高齢化や晩婚化による単独世帯の増加、外国人居住者の増加などに伴い、賃貸住宅のニーズは今後増えていくと考えられます。

また、国内における人口減少や住宅供給過多によって、空き家の増加も見られます。空き家総数の848万9千戸のうち、432万7千戸が賃貸用住宅と、“その他の住宅”(※1)に次いで多くなっています。

このように、賃貸住宅のニーズや空き家ストックの増加により、物件の維持管理・活用などを行う賃貸住宅管理の重要性が高まっています。専門知識を持つ賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理の適正化を図る人材として、今後欠かせない存在になると考えられます。

※1・・・“その他の住宅”とは、賃貸用・売却用・二次的住宅以外の空き家のこと。長期にわたって不在の住宅や取り壊し予定になっている住宅、空き家の区分判断が困難な住宅などを含む。

(出典:総務省統計局『平成30年住宅・土地統計調査結果』)


受託管理・サブリース契約の増加

賃貸不動産経営管理士が国家資格化された背景には、賃貸住宅の管理において、受託管理・サブリース契約(※2)をするオーナーが増えていることも挙げられます。

国土交通省が2019年に実施したアンケート調査をまとめた『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査』によると、賃貸住宅の管理の一部または全部を管理会社に委託しているオーナーの割合は、全体の約80%を占めています。

▼賃貸住宅の管理方法

画像引用元:国土交通省『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査

管理業務を管理会社に委託する理由には、「管理に関する専門知識が不足していると感じるから」「契約更新・終了時のトラブルをなくしたい」などが挙げられています。

▼賃貸住宅の管理業務を委託している理由

画像引用元:国土交通省『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査

受託管理やサブリース契約が増加するなか、入居者・オーナー・管理会社間のトラブルが多様化・複雑化している問題も見られます。

このような現状を踏まえると、所有者と入居者の間に入り、公正中立な立場で問題解決をサポートする賃貸不動産経営管理士の必要性は高いと考えられます。

なお、管理業務に関する一定の知識を持つ賃貸不動産経営管理士は、オーナーの信頼を得やすくなり、競合他社との差別化を図れるといったメリットもあります。

※2・・・サブリース契約とは、サブリース会社がオーナーから賃貸住宅を一括して借り上げて、入居者に賃貸する契約のこと。

(出典:国土交通省『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査』『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』)

賃貸不動産経営管理士の業務内容

賃貸不動産経営管理士は、業務管理者としての業務に加えて、賃貸住宅管理業を営む不動産管理会社が実施する業務を行うケースもあります。

業務管理者としての主な業務には、オーナーとの管理受託契約や管理会社の業務に対して、管理・監督を行うことが挙げられます。

具体的には、以下のとおりです。

▼業務管理者として賃貸不動産経営管理士が行う業務

  • 重要事項の説明
  • 管理受託契約時の書面の交付
  • 帳簿の備えつけ
  • オーナーへの定期的な報告
  • 秘密の保持に関する業務
  • 入居者からの苦情処理に関する業務 など

また、国土交通省の『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査』では、賃貸住宅のオーナーが管理会社に委託する管理業務として、以下の割合が多くなっています。

▼管理会社に委託している業務

業務内容
委託状況
入居時の契約支援
81.0%
賃貸借契約の更新
79.1%
敷金精算・原状回復
76.8%
家賃催促
70.6%

このように、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律で義務づけられている業務のほか、入居者管理や契約管理などの業務についても受託しているケースが多いことが分かります。

(出典:国土交通省『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査』)

まとめ

この記事では、賃貸不動産経営管理士の資格と業務内容について、以下の項目を解説しました。

  • 賃貸不動産経営管理士とは
  • 賃貸不動産経営管理士が国家資格化された背景
  • 賃貸不動産経営管理士の業務内容

近年では、賃貸住宅のニーズや空き家ストック数の増加、受託管理・サブリース契約の増加によって、賃貸住宅管理会社に求められる役割が大きくなっています。

また、入居者・オーナー・管理者間のトラブルが多様化・複雑化していることも問題です。このような背景から、賃貸住宅に関する幅広い専門知識・倫理観を持つ有資格者は、今後も需要が高まると考えられます。

不動産仲介業や管理業を営む不動産会社に勤めている方は、業務スキルの向上やキャリアアップに向けて、資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、不動産業界で役立つ資格はほかにもあります。詳しくは、こちらの記事をご確認ください。

 ≫ 不動産業界で役立つ9つの資格! 概要と難易度を一挙解説

  不動産業界で役立つ9つの資格! 概要と難易度を一挙解説 | LIFULL HOME’S Business 仲介・管理 不動産業界で役立つ9つの資格について、難易度とともにご紹介します。 LIFULL HOME'S Business 仲介・管理




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