媒介契約に繋げる、査定書作成5つのコツ
目次[非表示]
- 1.査定書作成を成功させる視点
- 1.1.不動産査定で成果が出ない人の共通点
- 1.2.査定書作成の失敗事例
- 2.訪問査定を獲得するコツ
- 2.1.なぜ訪問が必要なのか?
- 2.2.訪問査定をするメリットは何?
- 3.顧客が求める査定書とは?
- 3.1.査定書に求めるニーズ
- 3.2.顧客視点での欲しい情報
- 4.査定書作り方5つのコツ
- 4.1.1.価格の根拠はどこにある?
- 4.2.2.顧客の不安材料を取り除く
- 4.3.3.競合しても印象に残すには?
- 4.4.4.そのうち客対策も忘れずに
- 4.5.5.補足資料で信用信頼を獲得する
- 5.まとめ
査定書作成を成功させる視点
不動産売却の一括査定サイトから査定依頼を受けた際、どのような戦略で媒介契約に繋げているでしょうか。
査定依頼からの媒介契約がもしも15%以下なのであれば、ぜひ以下の内容をお読みください。平均媒介率20%程度を目指すために必要な基本的なノウハウをここではご紹介します。
不動産査定で成果が出ない人の共通点
よく、不動産の営業担当者から「不動産売却の一括査定サイトはどこがいいのか?」という質問をいただきます。また、「〇〇の査定サイトは媒介が取れない」などの声もお聞きします。
こういった現場の皆さんの声に対して、私は「自社やご自身の問題にも着目して解決を図ってみませんか?」と問いかけます。
もし、社内での媒介率が15%を超えている状況なのであれば、一括査定サイトに問題があるかもしれませんが、これまでの経験上、平均的な不動産会社の媒介率は3%~8%です。この場合、成果が出ない原因は、不動産営業担当者の査定書作成やその前後の対応に問題があることが多いです。
査定書作成の失敗事例
媒介率が上がらない場合、どのような失敗が多いのかについて代表的な3つの事例をご紹介します。
①査定内容よりもとにかくスピード重視
②価格を高く提示する
③訪問査定に持ち込めていない
①とにかくスピード重視
他社よりも早く査定書を出す、ファーストコンタクトを素早く行うというのは非常に重要なことです。その早さで、本気の姿勢を見せることはできますし、即決してくれる可能性もあります。しかし、相手が本当に早さを重視しているか?という視点で考えてみると違和感が残ります。
確かに、早さを求める顧客もいるでしょうが、本来の査定依頼の目的を考えてみると、早く薄い査定書を作るよりも、内容の濃い成約に繋がるものに作り込んだほうがいいと思います。
②価格を高く提示する
顧客は不動産を高い金額で売却したいので、高く提示するのはよく不動産会社も意識していることと思います。しかし、査定を取るためだけの高い価格設定をしてしまうと、結局売却ができずに売れ残ってしまい、顧客の不満やクレームになったりします。
また、このような売り方の場合、仮に値下げをして売れたとしても、顧客からの評判に繋がらず、その後の紹介に直結しにくいという点も注意です。
不動産営業においては、紹介受注というのは非常に強力な営業手法になります。短期的な受注ばかりを見ずに、中長期的な営業戦略としてどうしたらよいかを考えてみることをお勧めします。
③訪問査定に持ち込めていない
査定依頼の中には、机上査定と訪問査定の2つがあります。机上査定は、不動産の営業担当者が売却予定のお宅を訪問することなく、顧客からもらった情報を基に査定書を作成し、郵送でお送りするという方法で行います。
一方で訪問査定は、営業担当者が売却予定のお宅を訪問してチェックし、その上で査定書を作成して後日提出する方法で行います。査定依頼をする方が、営業担当者から売り込まれたりするのを嫌い、机上査定を希望されるケースは少なくありません。
しかし、媒介契約を獲得するためには、いかに顧客に机上査定から訪問査定へ希望を変えてもらえるかという点が重要となります。
訪問査定を獲得するコツ
なぜ訪問が必要なのか?
訪問査定を獲得するためには、まず顧客がなぜ机上査定でいいと思っているのか?を考える必要があります。
顧客は、「訪問しなくても家の価格はわかるだろう」「だいたいわかればそれでいい」「訪問されてぐいぐい営業されたくない」と考えていることが多いです。だからこそ、この顧客が「それなら訪問してもらったほうがいいかな」と思ってもらえるように、訪問査定の必要性をしっかりとお伝えする必要があります。
訪問査定をするメリットは何?
では、訪問査定をする顧客にとってのメリットとは何でしょうか?
例えば、「家のリフォーム状況によって査定価格が変わる」「劣化状況や建物の状態によって評価額を上げることができる」「より正確な査定価格を伝えることで今後のプランが立てやすくなる」など、様々な価値があると思います。これらをしっかりと電話口で顧客にお伝えし、理解していただくことが重要です。
しかし、顧客によって、どんな情報があれば訪問してほしくなるかは変わります。ここはじっくりと顧客の要望を確認し、ニーズに合わせたアプローチをすることを心掛けてください。そうすることで、訪問査定ができる確率が上がっていきます。
このようにして訪問した後、どのように査定書を作成することが媒介契約に繋がるのかについては次の章で説明します。
顧客が求める査定書とは?
査定書は不動産会社が書きたいように作るのではなく、顧客のために作成します。目的は媒介契約の獲得です。ここから逆算して、どのような情報が掲載されていれば媒介契約に繋がるかを考えることが査定書作成において大切です。
査定書に求めるニーズ
顧客は査定書に何を求めているのかを考えたことはありますか?査定書は機械的に作成するのではなく、どうしたらその顧客が媒介契約を結んでくれるかを考えていく必要があります。
特に専任媒介を取るためには、自社を選ぶべき理由が明確になっていなくてはいけません。こういった点も踏まえて、クロージングツールとして査定書を作成していく視点を持ちましょう。
顧客視点での欲しい情報
では、顧客としてはどのような情報があると安心なのでしょうか?
例えば以下のようなポイントです。
①査定書の内容の信ぴょう性
②査定書を出した会社の信ぴょう性
③査定額を算定した営業担当者の信ぴょう性
不動産の業界で働いている方は感じていると思いますが、顧客や一般の方から見える不動産業界というのは「営業が強い」「契約を取るために嘘をつきそう」などのマイナスイメージが先行しています。
そのため、単に金額を提示するだけでは不十分で、いかに信用・信頼を書面で獲得するかが重要なポイントとなります。不動産会社はマイナスイメージからスタートするので、そのマイナスイメージをどう払しょくしていくのか?を考えながら具体的なコンテンツ内容について考えていきましょう。
査定書作り方5つのコツ
では、どのような査定書作成をすればよいのか、重要な発想をお伝えします。
1.価格の根拠はどこにある?
前述の通り、査定額は他社より高ければよいというわけではありません。また査定書を作成する側としては納得できるものだったとしても、不動産のことをよく知らない顧客が見たときに納得できるかはまた別の話です。
そのため、どんな計算根拠でこの数字が出たのかを、顧客にわかりやすいように示すことが大切です。計算式の記載を顧客にとってわかるようにすることや、文字を大きくして読みやすくすることもポイントです。
また、自社の販売事例だけではなく、周辺事例も載せてほしいと思います。この周辺ではいくらぐらいでどんな家が売れているのかが示されていると「この価格なら確かに売れそうだ」という感覚を顧客も掴むことができます。
この辺りの情報を隠してただ高い金額を設定してしまうと、後から顧客と営業担当者がもめてしまいます。目先の契約も大切ですが、そのあとのクレームを防ぐ方法を考えることも忘れてはいけません。
2.顧客の不安材料を取り除く
先にも述べましたが、顧客は、不動産業界に対するマイナスイメージを抱えていることが少なくありません。そのため、「だまされているのではないか?」という不安を常に頭の片隅にかかえながら査定をしてもらっています。
そのため、「この会社が一番信頼できるな」「この担当者なら安心して任せられそうだな」といかに思ってもらえるかが専任媒介を獲得する上で重要です。
例えば、その土地の歴史や過去の災害情報、ハザードマップによる情報、今後の対象地域の展望などはインターネットを調べればすぐに出てきます。ただ単に家を見るのではなく、買主の目線に立った視点でどう売るかを考えて提案するだけでも顧客の印象は大きく変わります。
あとは「無理強いしません」といくらいっても顧客は信用しないので、いかに営業担当者として正しいことを言っていると信じてもらうかも意識をしましょう。
そのためには、プラスの情報だけでなく、マイナスの情報や懸念事項もすべてお伝えすることです。そして、そのマイナス情報に対して自社だったらどうするのか、までお伝えできるとよりよいでしょう。
不動産のプロフェッショナルとして中立的な立場で仕事をしている姿を査定訪問時に見せることで、「この人の言っていることは本当なんだろうな」と思ってもらえるようになります。
3.競合しても印象に残すには?
不動産一括査定サイトを使った査定依頼は、あなたの会社にしか査定依頼が来ないということはありません。必ずと言っていいほど近隣の他社と競合します。
では、他社と競合したとき、あなたや、あなたの会社は、「他社ではなく、自社を選ぶべき理由」や「他の営業担当者ではなく、私を選ぶべき理由」をどのように伝えているでしょうか?
この問いかけに対して「情熱」「誠実」「迅速な対応」「正直な姿勢」などあり方の価値しか伝えられない場合は要注意です。これらはどの不動産会社や営業担当者も言うことであり、違いが顧客には伝わりません。また、会社の社歴・知名度・規模・近さ・価格・自身の業界歴で戦おうとすると地域一番店しか査定で勝てなくなります。
では、小規模の不動産会社や、実績では先輩に負ける営業担当者はどのようにして顧客に選んでもらえばよいのでしょうか?
ここで重要になる発想は「ブランディング」です。ブランディングが確立されている状態というのは、他社との違いが明確に価値として打ち出されて、顧客が安心して購入できる状態を指します。
このように書くとすごく難しいものと思われてしまうかもしれませんが、どんな会社でも、誰でもブランディングをすることは可能です。
例えば、
①どの会社よりも分厚く詳細な査定書を作成する
②どの会社よりもわかりやすく見やすい査定書を作成する
③顧客への個別メッセージを載せたページを最初に入れる
などがあります。
分厚い査定書を作成することで「この会社はすごい調べたな」と思ってもらうこともできますし、図や写真を挿入して「この査定書は、読みたくなる」というものを作成することもできます。また、営業担当者から顧客への個別のお手紙を添えることで「ここまで丁寧にやってくれるんだ」という印象を残し、信頼を得ることもできます。
このように、ブランディングは、いまできる一歩から行っていくことが大切です。
4.そのうち客対策も忘れずに
一括査定サイトから査定依頼が来る顧客の中には、一定数「そのうち客」と呼ばれる人が混在しています。
そのうち客とは、いますぐ家を売却する予定はないけれど、相続やその他理由で、数年後に売却を考えている顧客のことを指します。そのうち客はそもそも今のところ売却する予定がなく「将来のためにとりあえず今の金額を知っておきたい」と考えています。
今すぐ売却したい顧客とは違い、すぐに売却する予定はありませんので、営業担当者としては失注になってしまいます。しかし、このそのうち客に数年後に依頼をしに来てもらうための戦略を立てているかどうかは、将来の収益を左右します。
この将来の顧客を囲い込むためには、まずは良い断られ方をして好印象を残すことが大切です。断ったときの態度が悪い不動産会社には二度と顧客は依頼をしようとは思いません。だからこそ、顧客の立場になって、印象よく次に繋げるような対応を忘れないようにしましょう。
5.補足資料で信用信頼を獲得する
最後に、査定書に併せて添付することで効果を上げる資料についてご説明します。必ず添付してほしい書類としては以下の2つです。
①個人プロフィールシート
②会社実績シート
初対面で不動産の営業担当者が家に来る場合、一番の不安要素は「営業担当者の素性がわからない」という点です。だからこそ、「私はこんな人間です」、「当社はこんな会社です」と先に自己開示をすることが大切です。営業担当者側が情報をオープンにしてプライベートの部分も少し明かすことで顧客も安心します。
また、初対面の顧客から個人情報を得たいのであれば、先に自分から情報を開示するというのが原則です。営業担当者が情報を開示するから顧客も情報を開示してくれる、といった「返報性の法則」を意識していただきたいと思います。
まとめ
不動産会社の営業戦略として、売主を獲得することはとても大事です。しかし、インターネット上に多数のライバルがいる状況ですから、戦略なき大量行動ではなかなか成果が上がりません。
だからこそ、査定書作成も単なる作業になってはもったいないと思います。いかに顧客の気持ちに応えた、査定書を作成するかが専任媒介の契約獲得という成果に繋がるポイントになります。ぜひ1つでもできるところから改善していってほしいと思います。