【賃貸管理】高齢者に対応した住宅のメリットと契約時の注意点
現在、国内での高齢化が進んでおり、65歳以上の単身世帯は男女ともに増加傾向にあります。今後も高齢化が進むと推定されているなか、賃貸住宅においても高齢者の入居ニーズが高まることが考えられます。
賃貸管理会社が安定した経営を行っていくためには、賃貸借契約時の注意点を理解したうえで、高齢者の受け入れを積極的に検討していくことが重要です。
この記事では、高齢化の現状を踏まえつつ、賃貸住宅の入居者として高齢者を受け入れるメリットと、契約時の注意点について解説します。
(出典:内閣府『令和4年版高齢社会白書』)
目次[非表示]
- 1.高齢化の現状
- 2.賃貸住宅に高齢者を受け入れるメリット
- 2.1.①長期間の入居が見込める
- 2.2.②入居希望者が早期に見つかりやすい
- 2.3.③若年層とは異なるアピールができる
- 3.高齢者と賃貸借契約を結ぶ際の注意点
- 4.まとめ
高齢化の現状
内閣府の『令和4年版高齢社会白書』によると、2021年10月1日時点での65歳以上の人口は、総人口の28.9%を占めています。
また、国内の総人口は1億2,550万人で、2053年には1億人を下回ると推計されています。一方で、65歳以上の人口は増加しており、2036年には高齢化率は33.3%と、国民の3人に1人が65歳以上の高齢者になる社会が到来すると推計されています。
▼高齢化の推移と将来推計
画像引用元:内閣府『令和4年版高齢社会白書』
さらに、高齢化によって世帯数にも変化が見られており、65歳以上の単身世帯は男女ともに増加している状況です。
▼65歳以上の単身世帯の動向
画像引用元:内閣府『令和4年版高齢社会白書』
今後も65歳以上の単身世帯は増加すると見込まれており、高齢者の賃貸住宅への入居ニーズも高まると考えられます。
しかし、保証人がいないことや家賃の未払い、室内での死亡・事故などの懸念があることから、高齢者の入居に拒否感がある物件オーナーも一定数存在しており、入居制限を設けているケースもあります。
2014年時点で、高齢者を含む住宅確保要配慮者に対して、オーナーが入居制限を設けているケースと割合は、以下のとおりです。
▼住宅確保要配慮者の入居制限の有無
画像引用元:厚生労働省 地方厚生局『居住支援協議会の取り組み等について』
賃貸管理会社としては、高齢者の受け入れメリットを理解したうえで、物件オーナーが安心して受け入れできるような契約・管理体制を整えることが重要です。
(出典:内閣府『令和4年版高齢社会白書』/厚生労働省 地方厚生局『居住支援協議会の取り組み等について』)
賃貸住宅に高齢者を受け入れるメリット
高齢者の入居は物件オーナーに敬遠されることもありますが、受け入れることで以下のようなメリットも期待できます。
①長期間の入居が見込める
1つ目のメリットは、長期間の入居が見込まれることです。
高齢者は、若い世代のように就職や転勤、結婚、子育てなどのライフイベントによって引越すケースは少ないと考えられます。
そのため、一度契約すると長期間入居してもらえる可能性が高く、安定した家賃収入を得やすくなります。
②入居希望者が早期に見つかりやすい
2つ目のメリットは、入居希望者が早期に見つかりやすいことです。
前述したように、高齢者の賃貸住宅の入居ニーズがあるなか、一部のオーナーは入居制限を設けています。
高齢者を積極的に受け入れていることをアピールすれば、入居希望者が集まりやすく、早期に入居が決まることが期待できます。このように、空室期間を短くできることも高齢者を受け入れるメリットです。
③若年層とは異なるアピールができる
3つ目のメリットは、若年層にとっては選ばれにくい物件であっても、高齢者にはアピールポイントとなる可能性があることです。
若年層と高齢層では、周辺の行動範囲や住宅に求めるニーズが異なります。たとえば、以下のようなニーズの違いが挙げられます。
▼物件に関するニーズの違い
ニーズ |
若年層 |
高齢層 |
---|---|---|
内装 |
フローリング |
畳 |
階数 |
2階以上 |
1階(足腰への負担や車いす移動などを考慮) |
立地 |
駅から近いエリア |
巡回バスに乗りやすいエリア |
このように、一般的に入居者が決まりにくい立地にある住宅や、リノベーションをされていない住宅でも、高齢者にとっては住みやすい物件となる可能性があります。高齢者を柔軟に受け入れることは、賃貸物件の空室対策としても有効です。
なお、賃貸物件の空室対策については、こちらの記事でも解説しています。併せてご確認ください。
高齢者と賃貸借契約を結ぶ際の注意点
高齢者と賃貸借契約を結ぶ際は、起こりうるリスクを踏まえたうえで、契約書に特約を設けたり、家族・親族を交えて相談したりすることが重要です。
高齢者は、自己資金に余裕がなくなる、認知症になるなどの理由によって、家賃の支払いが滞る可能性があります。そのため、賃貸借契約の締結前に支払い能力の審査を行うとともに、連帯保証人を立てたり、サポートしてくれる家族・親族がいるか確認したりすることが必要です。
近くに家族・親族がいない場合には、家賃保証会社と契約することも有効です。
また、高齢者の一人暮らしには、孤独死のリスクがあります。発見が遅れると、原状回復やそのあとの賃料減額などで損害を被る可能性もあるため、事前の対策が必要です。
賃貸借契約時には、家族・親族と相談しながら特約事項を設けておくと、トラブルを防ぎやすくなります。
▼特約事項の内容
- 日常の定期連絡の方法、頻度
- 賃借人(高齢入居者)と連絡が取れない場合の対応
- 賃借人(高齢入居者)が病気や認知症になった場合の対応
- 家賃滞納時の支払人、残置物処理の依頼人
- 家族の代わりに様子を確認してくれる見守りサービスの利用
高齢者との賃貸借契約のトラブルを回避するポイントについては、こちらの記事でも解説しています。併せてご確認ください。
≫ 高齢者と賃貸借契約を結ぶ際の注意点とトラブル回避のポイント
まとめ
この記事では、賃貸住宅への高齢者の受け入れについて、以下の内容を解説しました。
- 高齢化の現状
- 高齢者を受け入れるメリット
- 高齢者と賃貸借契約を結ぶ際の注意点
高齢入居者の受け入れは、早期に入居者が見つかりやすい、長期間の入居が見込める、滞納リスクが少ない、若年層と異なる点で物件をアピールできるといったメリットがあります。
一方で、契約後のトラブルを防ぐために、事前に家族・親族とよく話し合い、家賃滞納や孤独死などに至った場合の特約事項を設けておくことが重要です。
賃貸住宅の空室対策や、安定した経営に向けて、高齢者の入居に向けた体制整備・準備を進めてはいかがでしょうか。
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