不動産の賃貸・売買仲介営業で契約につなげるクロージングの方法
不動産の賃貸や売買の仲介営業をしていると「条件に合った物件を紹介したものの契約に至らなかった」というケースも、ときにはあるのではないでしょうか。
十分なヒアリングや提案を行っていても、最終的な判断を仰ぐクロージングがうまくできていない場合には、「検討します」と断られることがあります。
物件案内から契約へと導くためには、大詰めとなるクロージングを適切に行うことが重要です。この記事では、不動産営業におけるクロージングの目的をはじめ、契約につなげるクロージングの方法を紹介します。
目次[非表示]
- 1.クロージングとは
- 2.不動産仲介営業におけるクロージングの目的
- 3.契約率を高めるクロージングの方法
- 3.1.①契約に対する意欲をうかがう
- 3.2.②課題をヒアリングする
- 3.3.③契約後の流れを説明する
- 3.4.④決断のためのヒントを提供する
- 3.5.⑤選択の余地を残す
- 4.まとめ
クロージングとは
クロージングとは、営業活動で顧客と契約を締結すること、または契約締結までの一連の営業プロセスのことを指します。不動産仲介営業においては、賃貸借契約や住宅購入を希望している顧客が契約に踏み切れるよう後押しする重要な役割を持っています。
一般消費者を対象とした不動産仲介営業では、以下のようなプロセスでクロージングが行われます。
▼不動産仲介営業のプロセス(アポイントメントなしの顧客の場合)
1. ヒアリング(物件条件、予算、課題など)
2. 条件・課題の明確化
3. 物件の提案(紙資料やWebページによる物件情報案内、内見)
4. クロージング
5. 申し込み(自社・管理会社・オーナーによる審査、保証会社による審査)
6. 契約の締結
不動産仲介営業におけるクロージングの目的
クロージングを実施する目的は主に3つあります。
▼クロージングの目的
- 商談での疑問点や不安を解消する
- 契約するメリット・契約しないリスクを伝え、前向きに検討してもらう
- 契約に関わる最終決断のきっかけをつくる
顧客が疑問や不安を抱える状態では、契約に対して消極的になってしまうこともあります。クロージングでは、顧客の根底にある疑問や不安を一つひとつ取り除き、契約に対するネガティブな要素を払拭する目的があります。
「今決めるメリット」「決めないことのリスク」を整理して伝えることにより、迷いやためらいのある顧客の背中を押す目的もあります。
また、顧客の最終的な契約意思を確認することも目的の一つです。契約するか否かを決断するきっかけをつくることで、契約の見込みが低い顧客との商談が長引いたり、日程を先延ばしにされたりするのを防ぎます。
契約率を高めるクロージングの方法
ここからは、不動産仲介営業の契約率をアップさせるクロージングの方法を具体例とともに紹介します。
①契約に対する意欲をうかがう
顧客のなかには「今はまだ契約しない」という段階の人もいます。また、初回の物件提案の時点で「この会社では契約はしないだろう」と感じている人もいらっしゃるでしょう。
クロージングの際は、契約に対してどれくらいの意欲があるのか、具体的な質問を交えて顧客の反応をうかがうのが有効です。営業担当者からの問いかけに対して具体的な返答、または合意が多くなるほど契約の可能性が高くなります。
▼質問例
- 「予算・見積もりに問題はなさそうでしょうか」
- 「このまま商談を進めてよろしいでしょうか」
- 「引越しの時期はお決まりでしょうか」
②課題をヒアリングする
会話のなかで契約への迷いやためらいが感じられる場合には、顧客が何らかの疑問・不安を抱えていると考えられます。
このようなケースでは、顧客の不安や疑問点を確認したうえで自社の魅力・強みを生かした解決策を提示することが重要です。
ただし、予算やローン、ライフプランなどのデリケートな部分をうかがう場合には顧客への配慮も欠かせません。無理に聞き出すのではなく、「課題解決のために詳しく知りたい」という誠意を伝え、顧客の悩みに寄り添う姿勢を示すことが大切です。
▼質問例
- 「契約を迷われている理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」
- 「この物件で気になることはありますか」
- 「安心して契約いただくために、予算や今後のマネープランなどもおうかがいしたいのですが、よろしいでしょうか」
③契約後の流れを説明する
契約後の具体的なイメージを持ってもらうために、引越しや支払いなどの流れについて説明することも大切です。契約後の流れを具体化することにより、契約へと自然と意識を向けさせて、意欲を高められます。
また、クロージングで契約後の話を盛り込むことで、現時点では契約を考えていない段階の顧客を見極めることも可能です。
▼説明の例
- 「契約後のスケジュールは○○です」
- 「今契約となった場合、○月ごろに引越しが可能となります」
- 「支払いのタイミングと時期は○○になる予定です」
④決断のためのヒントを提供する
契約に対して意欲がある場合でも、いざ本格検討の段階になると「自身の決断が正しいのか」「後悔しないか」などの不安が生まれることがあります。
クロージングでは、顧客が安心できる言葉や決断のきっかけとなる情報を提供することが重要です。契約に対するポジティブな声掛けにより、顧客の背中を押すことにつながります。
▼声掛けの例
- 「この条件の物件はとても人気なので、タイミングがよかったですね」
- 「こちらの物件であれば、ご希望だった広めのキッチンを実現できますね」
- 「予算は少しアップしますが、毎日過ごす場所にこだわることは将来的によい判断だと思います」
⑤選択の余地を残す
クロージングの際、顧客が断る理由をなくすように契約を迫るのは逆効果です。心理的な圧迫感や一方的な印象につながり、営業担当者の信頼が失われる可能性もあります。
契約の決断について促すときには、顧客が自己判断できるように検討期間や選択肢を与えることが重要です。顧客に気持ちの余裕を持ってもらえれば、自社や物件に対する信頼、安心感につながります。
▼提案の例
- 「日当たり重視ということであれば、A・B・Cといった物件がありますがいかがでしょうか」
- 「○○にお悩みなら、一度時間をかけて検討されてみてはいかがでしょうか」
まとめ
クロージングには、顧客の不安・疑問を一つひとつ取り除きつつ、「この会社・物件を選んでよかった」と思ってもらえるようそっと背中を押す役割があります。
無理に契約を急かそうとせずに、「この物件・サービスが本当にあなたに適している」と伝えることが重要です。迷いやためらいを持つ顧客に対しては、安心できる言葉を掛けるとともに、検討時間を与える余裕も大切です。
今回紹介したクロージングの方法を取り入れて、自社と顧客の双方にとって満足のいく契約につなげましょう。