【不動産賃貸仲介会社向け】売上が上がる組織をつくる仕組み化と考え方
本コラムは不動産賃貸仲介営業における「営業力向上」を目的とした、シリーズコラムです。
今回がシリーズ最終回です。
第4回までは、「LIFULL HOME'S 接客診断(以下接客診断)」の事例を基に、お客様が求める不動産営業像について考え、第5回・第6回では、成約につなげるためのヒアリングやクロージングのテクニックについてお伝えしました。
第1回から見る:不動産賃貸仲介業界向け!来店率を高める初期対応の原則とは
最終回となる今回は、売上が上がる組織をつくる仕組み化と考え方について解説します。
前回までは、個人の能力開発、意識改革という点に重点をおいておりましたが、次のステップとして“組織で業績を改善させる、向上させるために必要なことを知る”を本コラムのゴールとします。
(参考:LIFULL HOME'S 接客診断について詳しく知りたい方はこちら)
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不動産会社の特徴と課題
不動産会社というと、地域性の強い業態の1つではないでしょうか。
同じ会社の店舗が駅の北と南にあったり、沿線上の各駅に店舗を構えていたり…と、複数店舗を展開されている不動産会社は多くあります。そのように組織として分断されていることは、地域差がある商材(物件)を扱う不動産会社にとっては非常に強みになります。
一方で、営業所や店舗の雰囲気・体制は店長によって左右されやすいのも事実としてあります。
例えば、「A店は数字に厳しい店長で、ガツガツした営業を行う組織のため成績は良いが、店舗にはいつも緊張感があります。B店は、働きやすさを重視した店長で、雰囲気は良いですが、スキルUPがしにくい組織です」というように、同じ会社であっても店長によって組織のカラーが異なることがあります。どちらが悪いということではなく、組織として共通した文化がないことが課題です。
シリーズコラムでお伝えしてきたさまざまな営業テクニックについても、個人で終わらせずに、きちんと組織の文化として「うちの会社はこう対応していこう」「営業力の標準化をしていこう」という考え方を持つことが組織づくりに大事になってきます。
組織づくりには、なぜ仕組み化が必要か
個人の能力開発だけでは、店舗の売上はそこまで変わりません。1人よりも2人、2人よりも3人…と組織で共通認識を持って営業力の標準化ができると業績は上がってきます。
業績を上げるために、組織で能力を向上させるには“仕組み化”が必要です。では仕組み化って何をすればよいのか、について解説をしていきます。
仕組み化を進めていく上で、組織の変革ポイントは、ツール・制度・風土の3つです。では、皆さんが所属している組織を振り返ったときに、ツール・制度・風土はどういうことが考えられるでしょうか。
組織変革における仕組み化の考え方
変革ポイントとして3つあげさせていただきましたが、まずはツールがとても大事です。
例えば、GoogleクラウドサービスやSalesforceといったものもツールとしてあげられます。仕組み化において、なぜツールが大事なのかについて、ある不動産会社の事例をご紹介します。
とある不動産会社では、組織の中にいろいろな情報を持っている個人が点在しているが、個々人で持っている情報を組織内で共有できていないという課題がありました。共有するツールとしてクラウドサービスを持っているが、それを使う意識がなかったり、使い方がわかっていなかったりする状況です。
そこで、まずは新たな取組みとして“情報共有の活性化”を進めました。
【取り組んだこと】
- 1日1項目は、新しい情報をクラウドサービスで情報共有をする
- 共有された情報をきちんと評価する(いいね!ボタンを押す、コメントをするなど)
- 評価の高い情報を組織全体で共有する場をつくる(店長会で共有)
「情報共有をしましょう」だけでは、共有を継続することや情報の質を高めることは難しくなります。評価がされることで、「次はもっとこういう情報を共有してみよう」といった心理が働くため、きちんと評価をすることまでが大事です。
また、他の店舗への共有機会をもつことで、情報共有をすることが新たな取組みとして組織全体に浸透します。この取組みを2~3ヶ月続け、最終的には評価基準としても採用することで「評価もされるし、さまざまな情報を共有し合えるといことは、周りの方にも自分にとっても良いことだ」という意識のもと、積極的に活用しようという組織の雰囲気ができました。
最初は情報の粒度がさまざまで、取組みの姿勢も、積極的に共有する方と、そうでない方と二極化します。取組みを継続することで、情報共有を積極的にする方がどんどん増えていき、かつ成果が伸びていくと、消極的だった方も「自分も真似してみようかな」と組織の雰囲気が変化していきます。
組織の変革において3つをポイントとして挙げましたが、ツール→制度→風土の順序で考え実践していくと組織は変わっていきます。
事例ではクラウドサービスを挙げましたが、クラウドサービスの情報提供に特化した話ではありません。世の中にはいろいろなツールがあります。しかしツールだけあっても力は発揮できません。ツールや制度が整い、それを活用する人が介在してこそ真価を発揮できるのです。
心理的安全性の創出
組織の変革を行っていくにあたり“心理的安全性”についても意識してみましょう。
例えば、チームメンバーに非難される不安を感じることなく、安心して自身の意見を伝えることができる状態を心理的安全性が保てているといいます。
皆さんの所属する組織ではどうでしょうか。
こんなことしたいと思っている、とか、こんなことで悩んでいるということなどが発言しにくい環境になっていないでしょうか。
店長や管理職の方については、なかなか上がってきにくい声を拾い上げることができていますでしょうか。このような声は、積極的に拾い上げないと埋もれます。
店長や管理職の方から、気になるメンバーに対して、何か業務で困っていることがないか、何か不安に感じることがないか、と引き出さないとなかなか心理的安全性は創出しにくくなります。
文化を醸成させるための具体例
心理的安全性が保たれている前提で、先ほどお伝えした文化を醸成させるための具体的な方法を1つご紹介します。
模造紙と付箋を用意し、実際に顔を合わせて実施することをオススメします。1~4 の順番で課題を抽出し、課題に対する解決策を見いだす方法です。
組織には若手~中堅~店長と立場の違う人がいると思いますが、それぞれの目線で感じていることを情報共有する、その機会を持つということが、大事です。
全員で、出てきた課題に対して解決するためのアイディアを出し、中長期的に解決に取り組む風土が醸成されると非常に良い組織になるのではないでしょうか。
売上が上がる組織をつくる仕組み化と考え方まとめ
本コラムで伝えたいことは1点です。
組織を変えるためには、“仕組み化”が必要です。仕組み化をするためには、ツールや制度を整えて、きちんと文化を作っていく風土作りが大切です。逆にこれができないと組織は変わらないと思っていただいてもいいです。
組織を変えようと思って他の取組みをされて変わるケースもあるとは思いますが、やはりツールと制度が整わないと、継続が難しくなります。まずはそこを整えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
シリーズコラム最後に
シリーズコラム全体を通して“選ばれる不動産会社になるために”ということをテーマとしてきましたが、なぜ個人の営業力向上と組織の営業力の標準化が必要かというと顧客満足度につながっていくからです。営業個人だけでなく、組織として顧客満足度が上がることで「この不動産会社いいね」と口コミが広がり、選ばれる不動産会社になり、売上にもつながっていきます。
ぜひ、シリーズコラムを第1回から振り返っていただき皆さんが“選ばれる不動産営業”“選ばれる不動産会社”になることにつながると幸いです。