買わない理由を顧客目線で解消する
前回は、顧客の不安要素をつぶしていく発想ということで、クロージングの失敗事例などについてお話ししました。
今回は、その続きとして、不安要素に対する説明の組み立て方法についてお話しします。
①クロージングがうまくいかない王道パターン |
今回は上記の③について話します。
③不安要素に対する説明を組み立てる
前回の最後にお話ししましたが、②の不安要素の確認の段階で、顧客が不安なところをすべて引き出し、どこがクリアになれば契約できるのかを営業担当者がすべて把握してから、顧客への説明に移ることが重要です。
顧客の不安要素が確認できたら、次はその中で契約に躊躇している理由として大きいものから順番を付けてもらうようにします。
「この中で一番の懸念点となっているのはどちらになりますか?」と聞き、顧客自身に順位を付けてもらいます。そして、まずはその一番の懸念点をどうクリアするかを考え顧客に提案することが大切です。
この説明で大切なのは、
1.売り手の売り込みたい気持ちを出さないこと
2.買い手のメリットを訴求すること
3.その他買い手が安心する客観的事実を準備すること
この3つを押さえたトークを行うということです。
1.売り手の売り込みたい気持ちを出さないこと
今回のように顧客が懸念を示しているときにやってはいけないことは、強引なクロージングです。
顧客が営業担当者に対して「この人は契約を取りたいだけなんだな」と感じてしまうと、契約する気が一気に無くなってしまい、逆効果になります。そのため、クロージングを急ごうと、営業担当者目線でクロージングトークを組み立てることはしない方がいいでしょう。
「契約が取れないと上司に叱られる」など情に訴えるのは論外ですが、「いま決めないとこの物件は他に取られてしまいます」のようなトークも「じゃあ、縁が無かったのかな」「いますぐ決めたくないな」ということになりがちです。
そういう、営業の王道クロージングは顧客側も聞き飽きているので、そうではなく、不安を払しょくする方に思考を働かせます。
2.買い手のメリットを訴求すること
顧客が感じる不安要素に対して、安心させる要素を入れていく際にポイントになるのが、顧客のメリットを付け加えるということです。
例えば、顧客が「駅から遠い点が気になっている」という場合、
- 近所のバス停までの徒歩の時間を伝える
- 駅から最寄りのバス停までの最終バスの時間を伝える
- 自転車の時間や駅に駐輪場があることを伝える
などとは思いますが、ここでもう少し突っ込んで「なぜ、駅から遠いのが気になるのか」もヒアリングします。
この場合、
- 帰りが遅くなった時に徒歩になるのが心配
- 子どもを塾に行かせるのに送迎が心配
など、もっと具体的な理由が出てくることがありますので、そこまで掘り下げた上でメリットの訴求をしていきます。
- 帰りのバスの時間がある場合、そこまでに帰るという意識が働くのでむしろ帰宅時間がいままでより早まるということが多いんですよ
- 万が一乗り遅れた場合、タクシーだと〇円くらいで帰れますよ
- 街灯が明るくて車通りも多いので歩いても比較的安全と言われていますよ
などと、単なる時間などの事実だけではなく、安心材料になるプラスワンの価値を付け加えることがポイントです。
また、その際は同時に、むしろ駅から遠いことの価値も伝えることを忘れてはいけません。
- 駅から離れている分、夜は静かなので寝るには良い環境であること
- 車の量も少ないのでお子様が小さいうちは安心できること
- 都会の便利さと郊外のゆったりした感じの両方が手に入ること
などのメリットも伝えてみるようにしてください。
3.その他買い手が安心する客観的事実を準備すること
客観的事実とは、売り手の主張ではない、第三者の事実を語るというポイントです。顧客心理の原則に「買い手は売り手の言葉は信用しないが、第三者の言葉は信用する」というものがあります。そのため、近隣物件に住んでいる人の声などを活用してトークに組み込んでいくことが安心につながります。
例えば
- この前同じ分譲地に入った方もお子様を塾に通わせていますが、距離はあるけど夜の人通りがあるから安心と仰っていました
- バスの本数が多いので、迎えに行けないときはバス停まで迎えに行くようにしているようですよ
など、他の人がどのように生活しているかを伝えることで、「それならできるかも」と思えるようにします。このような説明でお客様が納得してくれるように、一つ一つの懸念点をつぶしていくように心がけていくと、強引なクロージングをせずとも顧客から合意が引き出せるようになります。
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