成年後見人は不動産を売却できる? 不動産会社が知っておくべき実務

認知症や障害などによって判断能力が不十分になった方の不動産を売買するにあたっては、通常の取引とは異なる手続きや確認が必要です。高齢化社会の進展に伴い、不動産会社が知っておくべき制度の一つが成年後見制度です。
この制度の理解を欠いたまま取引を進めると、後になって契約が無効になったり、トラブルに発展したりする可能性があります。
本記事では、成年後見制度の基本的な仕組みや不動産会社が確認すべき具体的な事項、必要な許可、同意の重要性などを解説します。
目次[非表示]
- 1.成年後見制度の基礎知識
- 1.1.成年後見制度とは
- 1.2.法定後見と任意後見の違い
- 1.3.後見人・保佐人・補助人の権限
- 2.居住用不動産売却の流れ
- 2.1.家庭裁判所の許可が必須
- 2.2.売買契約と停止条件
- 2.3.許可申立ての必要書類
- 3.不動産会社が確認すべき事項
- 3.1.売却の必要性の確認
- 3.2.本人確認と意思確認
- 3.3.後見監督人の同意確認
- 4.許可・同意がない売買契約は無効
- 5.まとめ
成年後見制度の基礎知識
成年後見制度とは、認知症や障害などによって判断能力が不十分となった方々を法律的に保護し、支援するための制度です。まずは、制度の基本的な内容から確認しましょう。
成年後見制度とは
成年後見制度は、成年後見人が被後見人に代わって財産管理や契約行為を行い、本人の権利と利益を守ることを目的とした制度です。
成年後見人は、被後見人の生活を法律面から支える役割を担います。具体的には、被後見人が適切に行うことが困難な法律行為について、本人の代理をしたり、本人の行為に同意を与えたりする権限を持ちます。
法定後見と任意後見の違い
法定後見制度は、すでに判断能力が低下している方を対象とした制度です。被後見人や親族などが家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が適切な後見人を選任します。後見人には親族が選ばれることもあれば、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることもあります。
一方の任意後見制度は、被後見人がまだ十分な判断能力を有しているうちに利用できる制度です。将来的に判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ自ら選んだ人と公正証書で契約を締結します。
後見人・保佐人・補助人の権限
法定後見制度は、被後見人の判断能力の程度により「後見」「保佐」「補助」の3つの類型に分かれています。それぞれの権限をまとめると、以下のとおりです。
被後見人の判断能力の程度 | 後見人等の関与範囲 | 取り消し権 | |
後見 | 判断能力がほとんどない | 原則としてすべての法律行為を代理 | 原則としてあり(本人の行為を取り消し可能) |
保佐 | 判断能力が著しく不十分 | 民法で定める行為のみ | 民法所定の行為についてあり |
補助 | 判断能力が不十分 | 被後見人の申し立てに基づく特定行為のみ | 審判で定めた範囲のみ |
後見人・保佐人・補助人は、常に被後見人の利益を最優先に考えて行動する義務を負います。
居住用不動産売却の流れ

成年後見人が居住用不動産を売却する場合、通常の不動産取引とは異なる手続きが必要となります。特に重要なのは、家庭裁判所の許可が求められる点です。
家庭裁判所の許可が必須
民法の規定により、成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却する際には、必ず家庭裁判所の許可を得なければなりません。この規定は、被後見人の生活基盤を守るために設けられています。
「居住用不動産」とは、被後見人が現に居住している不動産だけではありません。現在は施設に入所しているものの将来的に戻る可能性がある不動産、あるいは過去に居住していた不動産も含まれる場合があります。
家庭裁判所の許可を得ずに売却契約を締結した場合、その契約は無効となります。契約書を作成し、手付金の授受や所有権移転登記まで完了していても、法律上は契約が成立していないものとして扱われてしまうのです。
売買契約と停止条件
被後見人の不動産を売却する契約には、「家庭裁判所の許可が得られることを停止条件とする」という特約を付けるケースが一般的です。
停止条件とは、一定の条件が成立するまで、契約の効力が発生しないという特約です。この条件を付けることで、家庭裁判所の許可を得られなかった場合には契約は初めから効力を持たなかったものとして扱われ、当事者双方が契約前の状態に戻ります。
これにより、買主は手付金の返還を受けることができ、買主保護が図られる仕組みとなっています。
許可申立ての必要書類
家庭裁判所への許可申し立てには、以下のようなさまざまな書類の準備が必要です。
- 申立書
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 不動産会社による査定書
- 売買契約書
- 売却の必要性を説明する資料 など
家庭裁判所は、売却価格が適正であるか、被後見人に不利益がないかを慎重に審査します。そのため、査定書では価格の根拠を明確に説明し、市場相場と比較して妥当な価格であることを示す必要があります。
また、売却の必要性も審査対象です。被後見人の介護費用や医療費の支払い、被後見人がもはやその不動産に居住する見込みがないことなど、売却が被後見人にとって必要かつ有益であることを具体的に説明しなければなりません。
不動産会社が確認すべき事項

成年後見人との不動産取引において、不動産会社は単なる仲介者にとどまらず、取引の適正性を確認する重要な役割を担います。必要な書類や手続きの不備は契約の無効につながる可能性があるため、通常の取引以上に慎重な対応が求められます。
売却の必要性の確認
取引を進めるにあたり、「なぜ被後見人の不動産を売却する必要があるのか」という理由の確認が重要です。成年後見人は被後見人の財産を守る立場にあり、安易な売却は認められません。
被後見人の介護費用や医療費の捻出、施設入所費用の確保など、売却が被後見人の利益になることを具体的に確認する必要があります。
また、後見人や保佐人などの資格を証明する「登記事項証明書」の取得が必須です。この証明書には、後見人や保佐人の氏名や権限の範囲、代理権の有無などが記載されています。
本人確認と意思確認
後見の類型によって、本人の関与の程度が異なります。後見の場合、契約手続きは原則として成年後見人が被後見人を代理して進めます。居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可が前提となるため、許可取得の見通しと手続きのスケジュールを踏まえて取引を進めましょう。
一方、保佐・補助の場合は、同意型(被後見人が契約するにあたって保佐人・補助人の同意が必要)か代理型(保佐人・補助人に代理権が付与されている)かで進め方が異なります。事前に登記事項証明書や審判書謄本で、権限の範囲を確認しましょう。
後見監督人の同意確認
後見監督人が選任されている場合、不動産売却には監督人の同意も必要です。監督人は後見人の職務を監督する立場にあり、その同意を得ることで取引の適正性がより確保されます。
監督人の有無は登記事項証明書で確認でき、選任されている場合は同意書と印鑑証明書の取得が必要です。
許可・同意がない売買契約は無効
成年後見人が家庭裁判所の許可を得ずに被後見人の居住用不動産を売却する場合、その売買契約は無効となります。
契約書の作成や代金の授受や登記まで完了していても、契約そのものが法的効力を持ちません。買主は所有権を取得できず、後日、契約の無効を理由に原状回復を求められる可能性があります。
不動産会社としては、契約前に必ず必要な許可書や同意書を確認し、原本の確認や写しを保管しておくことが不可欠です。後日のトラブルを避けるため、これらの確認は取引の最重要事項として位置づけるべきでしょう。
まとめ
成年後見制度が関わる不動産取引では、通常の取引以上に慎重な対応が求められます。不動産会社は、後見人の資格を登記事項証明書で確認しなければなりません。
また、家庭裁判所の許可を欠いた契約は無効となり、重大なトラブルに発展するおそれがあります。そのため、契約前の確認作業を徹底し、必要書類をすべてそろえることが不可欠です。
さらに、成年後見関連の不動産売却でも、適切な買主を見つけることが重要です。LIFULL HOME'Sの不動産売却査定サービスなら、4年連続訪問査定率No.1を誇る質の高いサービスで、スムーズな売却をサポートします。









