あなたの店舗は何点? 不動産会社向け『LGBTQ接客チェックリスト』に挑戦しよう
LIFULL HOME'Sが進めている社会貢献活動で、あらゆる人の“したい暮らし”を実現する取組み「LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL」。
活動のひとつとして、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の方々にまつわる住まいの問題に注目し、不動産会社が接客の際に活用できる『LGBTQ接客チェックリスト』の提供を、2021年4月19日より開始しました。
電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT調査2020」によると、日本の人口のうちLGBTQ当事者が占める割合は8.9%。LGBTQフレンドリーと称する不動産会社が増えていますが、当事者にとって本当にフレンドリーといえるのでしょうか。
この記事では、LGBTQフレンドリーの指針となる『LGBTQ接客チェックリスト』の制作背景と、詳しい内容をご紹介します。
『LGBTQ接客チェックリスト』ができた背景
「LGBTQ」という言葉。よく耳にしますが、何の略称か正確に知っていますか?
LGBTQとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時の身体的な性別とは異なる人)、Questioning(クエスチョニング、性自認や性的指向が定まっていない人)ないしQueer(クィア、男女という性や異性愛を前提としない個人の主体性に価値基準を置く概念)の頭文字をとった言葉です。
このアルファベット5文字は、セクシュアル・マイノリティを表す総称のひとつとして、用いられることがあります。
マイノリティ=社会的少数者は往々にして、社会的な偏見や差別、少数者の事情を考慮していない社会制度の不足から損失や害を被る、といった困難を強いられることがあります。
これは、セクシュアル・マイノリティにおいても同様です。長い人権活動を経て今でこそ認知は広がりましたが、いまだ大小さまざまな「不自由」がつきまとっています。
住まいの分野ではどうでしょう。
追手門学院大学の葛西リサ教授がLGBTQ当事者の方を対象に行った調査によると、「セクシュアリティを理由に不動産屋に行くことに抵抗や不安がある」という質問に、「不安がある」「やや不安がある」と答えた人が合わせて48%。
「部屋を借りる、契約するときに自分のセクシュアリティを開示することにストレスを感じる」という問いには、「強く感じる」「やや感じる」が合わせて全体の64%を占める結果となりました。
お部屋探しの第一歩である不動産会社を訪れることに心理的ハードルが存在している――顧客を迎える側の不動産仲介業にとって、これは見過ごせない問題です。
当事者の方々がそうしたネガティブな感情を抱くに至ったのは、「不動産会社でカミングアウトできない」「名前や性別欄を記入する際にためらいがある」「同性の2人暮らしで断られる場合がある」「性別と外見のギャップで断られる場合がある」といった体験や不安感を、不動産会社で経験したからだといいます。
一方の不動産会社からも、「LGBTQ」という言葉は知っていても、どんな人が住むのかイメージができない」という声も上がっています。
つまり、不動産会社のセクシャル・マイノリティに対する理解を深め、双方において意識の共有ができていれば、互いの不安感を払しょくできるのではないでしょうか。
この『LGBTQ接客チェックリスト』は、セクシュアル・マイノリティの顧客への理解を促進し、不動産会社の意識をアップデートすることを目的に作成されました。
『LGBTQ接客チェックリスト』とは?
『LGBTQ接客チェックリスト』は、LGBTQと冠してはいますが、セクシャル・マイノリティの方に限らず、オールフレンドリーな接客方法をもとに制作されています。
監修は、LGBTQ当事者のライフプランニングサポートや不動産仲介を行う株式会社IRISの代表取締役CEO須藤啓光さんが担当しています。
内容は、初級編と上級編の2パターン。それぞれ基礎知識編、店舗接客・内見編、申込・契約編、入居後対応編の4部構成、全20問で構成されています。
このチェックリストは、正答率だけでなく解説を通して理解を深めることができるのが特徴です。
どんな設問があるのか、実際に見ていきましょう。
初級編
初級編では、「LGBTQに関する基本的な知識を有しているか」「適切な接客ができているか」の2つの点に注目して設問が用意されています。
たとえば、こちらの問題。
店舗接客・内見編の問題。ヒアリングシートや申込書のフォーマットについてです。性別を尋ねる項目があるままになっていませんか?
性の形は男性、女性の2つにはっきりと分けられるものではなく、グラデーションのようになっています。また、性についての質問を行うこと自体がカミングアウトの強要にもつながるので、特に接客時の必須事項でない限り、聞かないことも一つの配慮の形かもしれません。
また、同様の観点から「男・女・LGBT」のような選択項目を設定することは行わないことも忘れてはいけません。
次はこちらの問題。
申込・契約編からの1問です。この問いはアウティング(本人の了解を得ずに、他の人に公にしていない性的指向や性自認等の秘密を暴露する行動)の危険性について示唆しています。店舗接客時、パーテーションを隔てて別の顧客の声が耳に入る…といった状況もよく聞かれます。
入居申込・買入申込を行う際、さまざまな場所や状況が想定されます。貸主・売主から関係性や契約者について質問され、確認した上で回答をする必要が生じることもあります。その場合、自社の店舗でいつも確認できるとは限りません。屋外や電話などで確認を行う場合でも、相手の周囲の状況に配慮し、アウティングが起きないような場所で質問する必要があります。
上級編
上級編は、さらに一歩踏み込んだ意識の確認になります。「LGBTQに関する基本的な知識を有しているか」もより具体性が強く、「より顧客満足度の高い接客ができているか」にポイントが置かれています。
それでは実際の問題を見てみましょう。
基礎知識編からの1問。場のアイスブレイクや親密さを出すために、何の気なしに相手の配偶者の性を指す表現をする方も多いかもしれません。
しかし、こうした「配偶者やパートナーがいる」と自己申告された場合に対応した従業員が言いがちな表現も、固定概念からの発言であり、相手によっては不快に感じてしまう可能性があります。
次の設問は、入居後対応編からです。
こちらは、トランスジェンダーの問題への提起になっています。
性自認は生涯変わらないものではありません。たとえば、入居当時男性だった方の見た目が、治療により変化することもあります。その場合、男性専用物件に住み続けることができるのかどうかは、物件により判断が異なると思われます。そのため、まずは相談に乗る、柔軟に対応していくという姿勢が重要です。
チェック後、改善に向けたアクションを起こした不動産会社も
『LGBTQ接客チェックリスト』はリリース後、関心ある不動産会社の方々に利用されています。チェックを通して現状を把握することは大切ですが、ただ使うだけでなく、次につながるアクションとして活用されている不動産会社もあります。埼玉県のある不動産会社では、申込書の見直しを図り、性別の欄を削除したそうです。
小さなアクションではありますが、チェックを通して気づきを得て、「変えよう」という動きは大きな変化の一歩といえます。
おわりに
先に触れた日本の人口のうちLGBTQが占める割合である8.9%は、換算すると11人に1人の割合です。マイノリティと言われますが、実は身近にいることを示す数字だと思いませんか?
どんな方にも満足のいくお部屋探しを提供するには、それぞれの顧客への心配りが必要不可欠。より良い店舗の運営のためにも、『LGBTQ接客チェックリスト』を活用して、状況の可視化に役立ててみてはいかがでしょうか。