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【マンション管理適正評価制度】評価項目からメリット・デメリットまで解説

【マンション管理適正評価制度】評価項目からメリット・デメリットまで解説

年々増加傾向にある分譲マンションのストック数は、2023年末時点で約704.3万戸に達しており、これまで以上に中古マンションの流通促進が求められています。

このような背景の下、中古マンションの取引において、適切に管理されているマンションを市場で評価するために定められたのが「マンション管理適正評価制度」です。

これは、目に見えにくい部分も多いマンションの管理状態や管理組合の運営状況を評価する制度であり、うまく活用することでマンション管理の円滑化にも役立ちます。

本記事では、マンション管理適正評価制度の概要から、メリット・デメリットまでを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.マンション管理適正評価制度とは?
    1. 1.1.5分野30項目にわたるマンション管理適正評価制度
    2. 1.2.マンション管理計画認定制度との違い
  2. 2.マンション管理適正評価制度の登録件数
  3. 3.マンション管理適正評価制度のメリット
    1. 3.1.管理組合が目標設定や運営をしやすくなる
    2. 3.2.良好な管理状態の維持につながる
    3. 3.3.最新の管理状態を基に市場での評価が期待できる
    4. 3.4.リセールバリューの向上につながる
  4. 4.マンション管理適正評価制度のデメリット        
  5. 5.管理適正評価制度をうまく活用してマンション管理に役立てよう

マンション管理適正評価制度とは?

マンション管理適正評価制度は、マンションの管理状態や管理組合の運営状況を評価し、インターネット上で公開する制度です。

ここでは、評価項目や登録件数、マンション管理計画認定制度との違いについて解説します。

5分野30項目にわたるマンション管理適正評価制度

マンション管理適正評価制度では、運営主体であるマンション管理業協会が指定する講習を修了した管理業務主任者もしくはマンション管理士が、5分野30項目に沿って管理状態をチェックします。

評価項目の概要は次のとおりです。


カテゴリー
主な評価項目

ポイント

1

管理体制

・管理者の選任
・総会の開催
・議事録の保管
・管理規約の有無
・標準管理規約への準拠 など

20P

2
建築・設備
・長期修繕計画の有無
・共用部分の修繕履歴の保管状況
・建築基準法や水道法などに基づく定期検査の実施状況

20P

3
管理組合収支
・管理費・修繕積立金の滞納状況
・管理費会計・修繕積立金会計の適正な運用
・修繕積立金の積み立て状況
・修繕積立金の額 など

40P

4

耐震診断関係

・耐震性
・耐震診断の実施および耐震改修の予定

10P

5

生活関連

・緊急時の対応体制
・防災対策
・消防訓練の実施状況
・区分所有者および居住者名簿の有無 など

10P

    合計

100P

(出典:一般社団法人マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度 登録情報項目一覧表(管理状態等級評価)」

さまざまな評価項目があるなかで、全体で100P(ポイント)のうち、管理組合収支が40Pの配点であり、重視されていることがわかります。そのなかでも、管理費や修繕積立金の滞納に関する項目が16Pと多くを占めているのが特徴的です。

これら5分野30項目のポイントを合計したものを、5段階(管理不全と判断される場合も含めると6段階)で評価します。

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マンション管理適正評価制度

(出典:一般社団法人マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」
(出典:一般社団法人マンション管理業協会プレスリリース「マンション管理適正評価制度 登録件数5,000件に到達」

なお、同制度に登録しているマンションの評価状況を見ると、「星4つ」のマンションが全体の約43%と、最も多いようです(2024年7月末時点)。

マンション管理計画認定制度との違い

マンション管理適正評価制度と同様に、マンション管理を評価する制度として「マンション管理計画認定制度」があります。

次の表は、2つの制度の違いをまとめたものです。


マンション管理適正評価制度
マンション管理計画認定制度

運営主体

一般社団法人マンション管理業協会
地方公共団体

審査項目数

5分野30項目
16項目+地域独自設定項目

判定結果

6段階で評価
認定される・認定されない

有効期限

1年

5年

(出典:一般社団法人マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」
(出典:国土交通省「マンション管理計画認定の基準」

マンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化法に基づく制度です。国が定める16項目と、地方公共団体が定める独自設定項目を満たすことで認定を受けられます。

マンション管理適正評価制度では管理組合の収支が重視されているのに対し、マンション管理計画認定制度では長期修繕計画に関する項目が最も多くなっており、全体のなかで重視される項目にも違いが見られます。

審査項目数や有効期限の違いを踏まえると、マンション管理適正評価制度は、マンション管理計画認定制度を補完する役割があるといえるでしょう。

マンション管理適正評価制度の登録件数

マンション管理適正評価制度への登録件数は、全国で5,000件を超えています(2024年7月末時点)。

地域別に見ると、東京都(1,524件)、神奈川県(685件)、大阪府(475件)の順に多く、全都道府県に登録マンションがある状況です。

竣工年数別に見た場合、2001年~2010年竣工のマンションが全体の27%、2011年以降竣工のマンションが全体の23%と2001年以降竣工のマンションが半数を占めています。

一方1971年~1980年竣工のマンションは全体の4%、1981年~1990年竣工のマンションは全体の17%と築年が経過したマンションは登録件数が少ない傾向です。

なお、マンション管理計画認定制度の認定実績は、2024年(令和6年)4月末時点で729件(国土交通省が把握しているもの)となっています。

(出典:一般社団法人マンション管理業協会プレスリリース「マンション管理適正評価制度 登録件数5,000件に到達」

マンション管理適正評価制度のメリット

ここでは、マンション管理適正評価制度に登録する4つのメリットについて解説します。

管理組合が目標設定や運営をしやすくなる

マンション管理適正評価制度では、30項目にわたってマンション管理の有資格者による評価を得られるため、管理組合としての目標や改善すべき課題が明確になります。

その結果、根拠を持って対策の優先順位や予算配分を決定でき、管理組合の運営がしやすくなるといえます。

良好な管理状態の維持につながる

評価を受けて明確になった課題を一つひとつ解決していくことで、良好な管理状態を維持しやすくなる点もメリットといえます。マンションの良好な維持管理のためには、管理組合の役員が変わっても、課題を共有し改善を継続することが重要です。

この点について、マンション管理に関する客観的な評価があれば、管理組合として共通認識を形成しやすく、管理組合活動に一貫性を持たせることができます。

最新の管理状態を基に市場での評価が期待できる

マンション管理適正評価制度における評価の有効期間は1年です。評価が更新されることで、最新の情報を基にマンションの購入希望者あるいは不動産会社から管理状況を判断してもらえます。

また、同制度の評価結果が、金融機関による住宅ローン融資の金利優遇条件の対象になるなど、制度の活用が進められています。

今後、同制度がマンション管理の客観的な指標としてさらに認知されることで、評価を受けていないマンションよりも取引されやすくなる可能性が考えられるでしょう。

リセールバリューの向上につながる

マンションの売却価格を決めるうえで、管理状況は重要な要素です。そのため、マンション管理適正評価制度による良好な評価は、リセールバリューの向上につながる可能性があります。

マンション売却において、管理状況の良し悪しを価格に反映させることは簡単ではありませんが、同制度の評価は売却時のプラス材料として広告活動に利用することができるでしょう。

同制度の管理評価は公式サイトだけでなく、一部の不動産会社のWEBサイトやポータルサイトでもすでに掲載されており、マンションの購入希望者の判断材料として使われています。

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マンション管理適正評価制度に登録することで良好な管理状況が維持され、マンションの価値を高めることも期待されます

マンション管理適正評価制度のデメリット        

マンション管理適正評価制度のデメリットは、登録申請に手間と費用がかかる点です。
評価を受け、登録が完了するまでの流れは次のとおりです。

1.    管理組合が評価者にマンションの事前評価を依頼
2.    評価者が事前評価をし、管理組合に結果を通知
3.    事前評価の結果を踏まえ、制度への登録申請・情報開示について総会決議
4.    登録する場合は評価者に委任し、登録申請と登録料の払い込み
5.    マンション情報をサイトに公開・登録証の発行

マンション管理適正評価制度に登録するには、登録料5,500円(税込)と、評価を受けるための費用および申請手数料がかかります。評価・申請手数料は、管理会社や評価者によって異なります。

管理適正評価制度をうまく活用してマンション管理に役立てよう

マンション管理適正評価制度を利用すると、第三者の評価によって管理状況を適切に把握することができます。

そのため、管理面や運営面における課題が明確になるだけでなく、管理組合としての共通認識を持ちやすく、管理組合の円滑な運営に役立つ制度だといえるでしょう。

同制度をうまく活用することで、管理組合とのコミュニケーションも取りやすくなると期待できます。ぜひ参考にしてください。

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吉満 博
吉満 博
不動産コンサルタント・ライター。株式会社あつみ事務所 代表取締役。不動産の購入から売却まで出口戦略、資産性を踏まえ、長期の視点で不動産コンサルティング・売買仲介サービスを提供する。また、購入・住み替え前のライフプランニングから、資金計画や住宅ローン、保険の見直しなど、お金に関するセカンドオピニオンを提供。不動産・住宅ライターとして、不動産メディアを中心に、これまでの建築設計、不動産売買の経験を踏まえた記事執筆をおこなう。

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