不動産売買は電子契約で効率アップ! 書面契約との違いや導入メリット3選
不動産売買の取引において、書面契約の手間やコストに悩んだことがある不動産会社の方も多いのではないでしょうか。書面契約のためには、契約書の印刷から製本、郵送、収入印紙の用意まで、多くの準備をしなくてはなりません。特に、複数の取引が同時期に重なると管理も複雑化し、業務効率に影響が出ることも少なくないでしょう。
そこで本記事では、近年注目されている電子契約のメリットや、サービスを選ぶポイントなどを解説します。不動産取引の効率化を目指す不動産会社の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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不動産売買における電子契約と書面契約の違いとは?
不動産売買における電子契約と書面契約の最大の違いは「契約書の作成方法」と「承認方法」にあります。従来の書面契約では、紙に印刷した契約書に直接署名捺印を行い、物理的に承認を示します。署名したうえで印鑑を押す場合や、契約書に名前があらかじめ記載されている場合には押印のみを行うことが一般的です。
一方の電子契約では、紙の代わりに電子データで契約書を作成し、押印の代わりに電子署名を行います。電子署名には、契約者本人によるものであることを確認するための電子証明書が使用され、さらに契約内容が改ざんされないようにするためのタイムスタンプが付与されます。
電子契約は書面契約と同様、法的に有効であり、導入すれば効率的な手続きが可能です。これからの不動産取引では、電子契約が主流となるでしょう。
不動産売買における電子契約のメリット3選
不動産売買における電子契約の導入には、多くのメリットがあります。ここでは、それぞれのメリットを詳しく解説します。
費用面でコストカットできる
電子契約を導入することで、契約にかかるコストを大幅に削減できます。紙の契約書では以下のような費用が発生しますが、電子契約ではすべて不要です。
・印刷
・製本
・郵送
・印紙税
特に不動産売買契約では、印紙税だけでも最大で48万円かかります。電子契約を利用することで、この費用を削減できることは大きなメリットです。
また、契約書類の郵送では、配達ミスに備えて配達記録付き郵便(簡易書留や配達証明郵便)を利用するのが一般的ですが、これらは通常の郵便よりも割高です。2024年10月1日以降郵便料金が値上げされているため、郵送費の削減はさらに大きなメリットとなるでしょう。
さらに、契約を行うための人件費も削減できるため、コスト削減の効果は高いといえます。
契約書を保管するスペースが不要になる
紙の契約書は、不動産売買の場合、最大20年間の保存が推奨されているため、膨大な量の書類を保管するスペースが必要です。
特に、日々多数の契約を扱う不動産業界では、書類の保管場所の確保が大きな問題となります。さらに、紙の書類の保管には、専用の倉庫や保管室が必要になるだけでなく、経年劣化による破損や紛失のリスクも伴います。
一方、電子契約では契約書をデータとしてサーバーやクラウドに保存するため、物理的なスペースを必要としません。データベースで管理すれば必要な契約書を迅速に検索・参照できるほか、セキュリティ対策が強化された環境で安全に保管できることも電子契約のメリットです。
また、紙書類のように劣化する心配もなく、契約書を長期間にわたって確実に保存できます。
契約書をファイリングして長期にわたり保管する必要がなくなるため、スペースの確保が不要になります
契約締結までの工程がスムーズに進む
電子契約では、紙の契約書の作成や署名捺印の工程が不要になり、契約締結までの手続きが大幅に簡略化されます。これにより、全体的な業務効率が向上します。
一方の書面での不動産取引では、以下のように多くの関係者が関わるため、時間がかかりがちです。
・売主
・買主
・売主を媒介する不動産会社
・買主を媒介する不動産会社
電子契約であればそれぞれが署名捺印する手間が不要になり、オンラインで迅速に契約を取り交わすことができます。このように、郵送や押印の時間が省かれ、契約締結までの時間を大幅に短縮することが可能です。
不動産売買取引で電子契約を活用した業務の流れ
電子契約に移行しても基本的な取引の流れは大きく変わりませんが、書面契約とは異なる作業が発生します。ここでは、不動産売買取引において電子契約を活用する場合に発生する、書面契約とは異なる業務の流れについて具体的に解説します。
IT重説を行う
不動産取引では、買主からの購入申し込み後にIT重要事項説明(以下、IT重説)を行います。
IT重説とは、従来対面で行われていた重要事項説明を、Web会議ツールを用いてオンラインで行うことです。直接重説を行うための遠隔地への移動が不要となり、契約手続きがスムーズに進むため、「時間」と「コスト」を大幅に削減することが可能です。
なお、IT重説を行う際には、次の点を守る必要があります。
・IT重説を行うことについて相手方の承諾を得る
・電子署名を施した重要事項説明書を事前に相手方へ電子ファイルで送付する
・承諾後でも書面に変更できることを説明する
・相手方が承諾した記録を残す
・説明書が改変されていないことを相手方と共に確認する
これらの点を遵守することで、契約締結まで確実かつ安全に進行します。
契約書を電子交付する
IT重説が完了した後、契約書(37条書面)を電子交付し、正式に電子契約を締結します。電子交付では契約書がデジタルデータで送付され、売主・買主双方の署名が必要です。
ただし、対面での契約とは異なり、電子交付では目の前で署名する様子を直接確認できません。本人以外によるなりすましが発生した場合に気づきにくいというリスクがあるため、セキュリティ対策が重要です。
本人確認の徹底や、電子証明書、タイムスタンプを使用して改ざんや不正を防止するようにしましょう。
IT重説が滞りなく行えるよう社内で準備をしておきましょう
不動産会社が電子契約サービスを選ぶポイント
ここでは、不動産会社が電子契約サービスを選ぶ際に重視すべきポイントについて解説します。
操作のしやすさと使いやすさ
電子契約サービスのシステム操作が複雑すぎる場合、導入しても十分に活用できない可能性があります。特に、不動産業界では多様な取引の迅速な進行が求められます。そこで、シンプルで直感的に操作できるUI設計(操作するときに見たり触ったりする画面レイアウトや色彩、ボタンやアイコン部分の設計)が施されたサービスを選ぶことが大切です。
たとえば、無料トライアル期間が設けられているサービスを利用して、実際に使い勝手を確認してから本格的な導入を検討するのがよいでしょう。
導入後の充実したサポート体制は重要です。たとえば、サービスの操作手順やトラブル対応の支援、導入時のサポートが充実していると、現場での運用がスムーズに進みます。
また不動産取引には、宅建業法の改正などの法的な変更も多いため「法的サポート」が含まれるサービスを選ぶと安心です。サポートはメールだけでなく電話での対応もあると、緊急時にも柔軟に対応でき、業務の効率化に大いに役立つでしょう。
高度なセキュリティ対策
電子契約では、改ざんやなりすましのリスクに対応するセキュリティ対策が不可欠です。
信頼性を確保するためには「電子証明書」や「認定タイムスタンプ」を活用するとよいでしょう。また、セキュリティに優れたサービスであれば、不正アクセスやデータ改ざんを防ぐための機能がしっかりと備わっています。
不動産取引という高額な契約においては、セキュリティ体制が整った環境が重要だといえます。
不動産売買における電子契約の導入で業務効率化を実現しよう
不動産売買における電子契約の導入は、コスト削減、業務のスピードアップ、書類保管の効率化といったメリットをもたらします。
特に、紙の場合に発生する契約書作成や郵送、保管スペースに関する課題を解消できる点は、不動産業界にとって大きな効果です。自社の業務に合った電子契約サービスを選定・導入することで、取引のさらなる効率化を期待できるでしょう。