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2025年問題とは?不動産市場に与える影響を解説

2025年問題とは?不動産市場に与える影響を解説

不動産会社等で勤務している方は、「2025年問題」という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。しかし、実際にはどういった問題なのか、いまいち理解できていない方も多いのではないでしょうか。
 
急速な高齢化に伴って生じる2025年問題は、不動産市場に大きな影響を及ぼすのではないかと懸念されています。そのため、2025年にどういった問題が起こり得るのかを理解し、事前に対策を取ることが重要です。
 
そこでこの記事では、2025年問題とは何かを見ていき、その結果どういった問題が生じる可能性があるかを解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.2025年問題とは?
  2. 2.2025年問題で懸念されることは?
    1. 2.1.医療費・社会保障費の負担増
    2. 2.2.相続物件の増加
    3. 2.3.空き家問題の深刻化
    4. 2.4.不動産価格の下落
    5. 2.5.都市部と地方のギャップ拡大
  3. 3.2025年問題によって不動産価格はどうなる?
  4. 4.不動産会社が取るべき対策
  5. 5.2025年問題に向けて変化が必要

2025年問題とは?

2025年問題とは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで、日本社会に起こるとされているさまざまな問題を指します。団塊の世代とは、1947~1949年の第一次ベビーブーム期に生まれた人口の多い世代を指します。
 
内閣府が公表している「令和5年版高齢社会白書」によると、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が2,155万人、65~74歳の前期高齢者人口は1,498万人に達すると予測されています。計算すると、国民の約5人に1人が75歳以上ということになります。

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高齢化の推移と将来推計。内閣府「令和5年版高齢社会白書」より

(出典:令和5年版高齢社会白書

2025年問題で懸念されることは?

この高齢化の進行により、以下のような問題の発生が懸念されています。
●     医療費・社会保障費の負担増
●     相続物件の増加
●     空き家問題の深刻化          
●     不動産価格の下落
●     都市部と地方のギャップ拡大
順に詳しく見ていきましょう。

医療費・社会保障費の負担増

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、日本の医療費や介護費の総額はさらに増加すると予測されています。
 
75歳以上の後期高齢者における医療費や介護費の自己負担は原則1割とされており、残りの9割の費用は国や自治体、そして現役世代が加入する医療保険から拠出される仕組みです。これまで原則3割負担で医療を受けていた方たちの多くが、今後は1割負担で医療サービスを受けることになるため、社会保障費の負担が短期間で急増することが懸念されています。
 
このような負担増は、国や地方自治体の財政を圧迫し、結果として社会全体の公共サービスが縮小される可能性も指摘されています。

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厚生労働省 社会保障給付費の推移

(出典:厚生労働省 給付と負担について

相続物件の増加

2025年問題の一つに、相続物件の増加も挙げられるでしょう。高齢化社会の進行に伴って相続の発生件数が増加し、併せて相続された不動産が売却されるケースが増えると予測されています。
 
その背景には、財産分与の問題があります。主な相続財産が不動産などの場合、相続人が複数いても、物理的に平等に分割することは困難なことが大半です。そのため、一度不動産を売却し、売却益を相続人間で分割する方法が一般的です。
 
相続人のうちの誰かに十分な経済的余裕があれば、不動産を売却せずに代償分割(ほかの資産や現金を代替としてその他の相続人に補償する方法)を選ぶことも可能でしょう。しかし、現実として、多くの相続人にはそのような余裕がないため、相続物件の売却が現実的な選択肢となるケースが多いといえます。

空き家問題の深刻化

以前から社会的な課題として指摘されている空き家問題ですが、今後さらに状況が深刻化することが懸念されています。総務省が発表した「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果  」によれば、国内の空き家数は右肩上がりに増加を続けています。

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空き家数および空き家率の推移-全国(1978年~2023年)。総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」より

(出典:令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果
 
この状況に加え、団塊の世代が今後亡くなったり、施設へ入所したりすることで、所有者不在の住宅が増え、空き家が一層増加することが予測されているのです。また、空き家の放置は建物の老朽化を進行させるだけでなく、災害時の倒壊や火災のリスクを高める要因ともなり得るでしょう。

不動産価格の下落

空き家の増加に伴い、市場に出回る売却物件が増えることになります。その一方で、少子化の影響により、不動産の需要は減少していくと予想されています。
 
このような需給バランスの崩れにより、不動産の資産価値が下がり、市場全体での不動産価格の大幅な下落が懸念されているのです。特に地方の不動産市場では需要の減少が顕著で、売却が難しくなるエリアが拡大するともいわれています。

都市部と地方のギャップ拡大

都市部と地方のギャップの拡大も、2025年問題が引き起こすと予測される不動産市場の大きな変化の一つです。高齢者を含む多くの方が利便性を求めて都市部へ移住する傾向が強まることで、都市部の人口はさらに増加し過密化が進む一方、地方では人口減少が一層加速する可能性があるでしょう。
 
この社会動態の変化は、不動産価格にも大きな影響を与えます。具体的には、都市部では不動産需要が高まって価格が上昇する一方で、地方では需要の低迷によって不動産価格が下落するという二極化が進行すると予測されています。

2025年問題によって不動産価格はどうなる?

ここまで2025年問題について解説してきましたが、不動産関連の企業にとって最も気になることは、今後の不動産価格の動向ではないしょうか。結論から言えば、2025年を境に不動産価格がいきなり大暴落を起こす可能性は低いと考えられます。
 
なぜなら、少子高齢化や空き家の増加といった問題はすでに進行中であり、2025年に突然これらの状況が劇的に悪化するわけではないためです。また、高齢者人口の増加やその影響も不動産市場にはある程度織り込み済みであり、特に都市部では不動産価格が大幅に下落する可能性はほとんどないといえるでしょう。
 
一方で、地方における不動産価格については、都市部への人口流入が今後も進むことで、緩やかに下落していく可能性があります。このように、不動産価格は地域ごとに異なる動きを見せることが予想され、都市部と地方での価格の二極化が一層進む可能性があります。
 
また、不動産価格は景気にも大きく影響されます。そのため、リーマンショックのような金融危機が再び発生すれば、2025年問題とは関係なく、全体的な価格暴落のリスクも否定できません。不動産価格の安定が維持されるかどうかについては、経済全体の安定性が重要な要素となるでしょう。

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地方と都市部においての不動産価格の二極化がさらに進むことが懸念されます

不動産会社が取るべき対策

前述のとおり、2025年を境に不動産価格が大幅に暴落することは考えにくいとされています。しかし、今後も深刻化が予想される空き家問題や相続物件の増加といった課題への対応が求められます。
 
不動産会社としては、具体的に次のような対策が必要になるでしょう。
●     物件の魅力向上
●     物件のバリアフリー化
 
今後はリノベーションやリフォームを通じて、老朽化した物件を魅力的な住宅に変える取り組みが重要です。また、空き家となった物件も有効活用し、資産価値を高める工夫を行うことで、空き家問題の解決にもつながるでしょう。
 
さらに、高齢化は今後も進むため、高齢者が安心して暮らせるバリアフリー住宅の需要がますます増加すると予想されます。具体的には、段差のない設計や手すりの設置、広い廊下やバスルームなど、高齢者に優しい設計を取り入れることが重要です。

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今後も少子高齢化は継続されることが予想されており、バリアフリー化された物件の需要は高まると考えられます

2025年問題に向けて変化が必要

2025年問題とは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで、日本社会に起こるとされているさまざまな問題のことです。
 
不動産市場においては、相続物件の増加や空き家問題の深刻化による不動産価格の下落が懸念されています。しかし、2025年を境に不動産価格が大きく下落するとは考えにくく、特に都市部においては影響はほとんどないとの予想が出ています。
 
一方で、高齢化社会が進むなかでは、バリアフリーに対応した物件が今後はますます求められることになりそうです。このように、時代ごとに求められる物件の特徴やニーズは変化していくため、各時代に応じた柔軟な対応と変化が求められるでしょう。
 
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辻本 剛士
辻本 剛士
神戸で活動中の独立型FP。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。

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