【資格取得】任意売却取扱主任者とは?資格の概要と業務内容を解説
不動産の購入には住宅ローンを利用することが一般的ですが、何らかの理由で返済ができなくなってしまうことがあります。
このような場合に、金融機関(債権者)による競売が行われる前に、金融機関の合意を得て債務者が住宅を売却する“任意売却”が行われるケースがあります。
任意売却の実行には、金融機関や保証会社との交渉、買主との売買契約などのさまざまな業務・フローが発生するため、専門的な知識・ノウハウが必要です。この任意売却に特化した専門家として、“任意売却取扱主任者”という資格があります。
顧客から任意売却の相談を受ける機会がある不動産会社では、業務知識・スキルの向上のために、資格取得を検討している方もいるのではないでしょうか。
この記事では、任意売却取扱主任者の資格制度や主な業務内容について解説します。
目次[非表示]
- 1.任意売却取扱主任者とは
- 1.1.任意売却取扱主任者の役割
- 1.2.資格が設けられた背景
- 2.任意売却取扱主任者試験の概要
- 2.1.試験の詳細
- 2.2.指定講習
- 2.3.任意売却取扱主任者の業務内容
- 3.まとめ
任意売却取扱主任者とは
任意売却取扱主任者とは、一般社団法人全国住宅ローン救済・任意売却支援協会が運営する民間資格です。
任意売却取扱主任者の役割
任意売却取扱主任者は、安全かつ適正な任意売却を行うために、任意売却の手続きをはじめとする債務問題の専門知識・ノウハウを持っていることを証明する資格です。
任意売却を希望する住宅ローン債務者の相談役となり、金融機関や弁護士、司法書士などと連携しながら取引をサポートする役割を担います。
資格が設けられた背景
現在、コロナ禍での不況や収入減少といった経済的な問題によって、住宅ローンの返済が困難になるケースが増えています。そうしたなか、金融機関の競売による強制的な売却ではなく、一般の市場で不動産を売却する“任意売却”のニーズも高まると考えられます。
しかし、任意売却には法令に関する知識のほか、任意売却ならではの専門知識・ノウハウが必要です。これらを備えた不動産会社・窓口は少なく、不透明な取引が行われるケースも少なくありません。
任意売却取扱主任者の資格は、健全な任意売却取引を行うための知識を備えていることの証明になります。また、債務者にとっても安全性を判断できる基準となるために設けられました。
なお、任意売却の現状や対応ポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
≫ コロナ禍で増える可能性大!任意売却の市場と対応ポイントについて
任意売却取扱主任者試験の概要
任意売却取扱主任者になるには、資格試験の合格と指定講習の受講が必要です。
試験の詳細
任意売却取扱主任者試験は、年に1回、2月中旬ごろに全国4ヶ所で実施されています。年齢制限や実務経験、特定の資格保有などの受験資格は設けられていません。
試験概要は以下のとおりです。
▼試験概要
試験の形式 |
問題数と配点 |
---|---|
4肢択一問題 |
記述問題 |
記述問題 |
2問(各10点) |
合格基準は全体の60%以上かつ、択一・記述問題のそれぞれ50%以上を獲得していることとされますが、難易度に応じて調整される可能性があります。
試験の出題範囲は、宅地建物取引業法、税法、民法、民事執行法、弁護士法などの法律問題と、任意売却取引に必要な手続きといった商慣行や実務に関する問題です。
詳しい日程や受験料、申し込み方法は、一般社団法人全国住宅ローン救済・任意売却支援協会のホームページをご覧ください。
指定講習
任意売却取扱主任者の資格登録をするには、試験の合格後に指定講習を受講する必要があります。
指定講習は各受験地で実施されており、約6時間の講義が行われます。また、受講費用も発生するため、事前の確認と準備が大切です。
指定講習の完了後、修了証書と任意売却取扱主任者認定証が発行されると、任意売却取扱主任者の名で活動できるようになります。
なお、資格の登録においては、当初5年間の有効期間が設けられていますが、5年経過したあとは1年ごとに更新が必要です。
任意売却取扱主任者の業務内容
任意売却取扱主任者は、住宅ローン債務者からの相談を受けて、弁護士や税理士、司法書士などと協力しながら適正な任意売却を行うためのサポートを行います。
任意売却に関する直接的な売買取引だけでなく、債務者の相談対応や各専門家とのやり取りなど、債務問題全般をサポートすることが主な業務です。
▼任意売却取扱主任者の業務内容
- 金融機関との交渉
- 債務者に対する任意売却の流れ・注意点の説明
- 連帯債務者や連帯保証人との合意形成のサポート
- 引越し費用や当面の生活費に関する資金計画の相談
- 住宅ローン返済プランの変更の相談
- 自己破産手続きの支援
任意売却取扱主任者には独占業務はありませんが、任意売却に特化した知識・ノウハウを活用して、債務問題に幅広く対応できるようになります。
資格を取得すれば、不動産業界での業務範囲を拡大したり、キャリアアップを目指したりすることも可能です。
また、任意売却の専門知識を有する客観的な証明となるため、資格を有することで、債務者からの信頼獲得も期待できます。
まとめ
この記事では、任意売却取扱主任者について以下の内容を解説しました。
- 任意売却取扱主任者とは
- 試験の概要
- 主な業務内容
不動産仲介会社では、住宅ローンの返済が困難になった債務者から、任意売却について相談を受けるケースがあります。任意売却には、法令に関する知識のほか、任意売却特有の専門知識・ノウハウが求められます。
任意売却のエキスパートである任意売却取扱主任者は、債務者にとって安全かつ適正な取引を実現するために、任意売却や債務問題をサポートする役割を担います。
資格を取得することで、任意売却の専門知識について客観的な証明ができるようになり、債務者からの信頼獲得も期待できます。
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なお、不動産業界で役立つそのほかの資格については、こちらでも解説しています。併せてご確認ください。