競売物件数が15年ぶりに増加。今後の動向と参入メリットは?
一般社団法人 不動産競売流通協会は、2025年1月、2024年の競売不動産の出品データを公表しました。不動産競売流通協会は、2009年から競売不動産のデータを収集・解析しホームページで公開しています。2024年の競売物件数は、2009年から15年振りに増加しました。
競売物件の今後の動向、競売への参入メリットなどについて、不動産競売流通協会 代表理事 青山 一広氏にお聞きしました。
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競売物件が増加した背景は?
2008年のリーマンショック発生後、2009年に競売不動産の出品数は6万件超とピークを向かえ、以降は年々減少傾向にありました。2023年の出品数は1万1,086件、2024年は1万1,415件と、329件の微増ではあるものの、15年ぶりの増加となります。
増加の背景について青山氏は「2024年は長期金利が1%超上昇と大きな変化がありました。これまで都内の一部エリアでは売却時にプラス、もしくはプラスマイナスゼロくらいで売れていた物件もありましたが、基本的に物件価格は売却時に目減りするのが一般的です。現在も物件価格は高騰傾向にあるとはいえ、売却時に債務超過になってしまう人が増加しています」と話します。
不動産競売流通協会による2024年の都道府県ごとの出品数を見ると、最も出品数が多かったのは東京都で854件、次に神奈川県776件、大阪府748件、千葉県633件、埼玉県621件と都市圏で多い傾向にあります。物件種別は一戸建てが7,832件(69%)、マンションが2,322件(20%)、土地が1,261件(11%)と多くを一戸建てが占めています。
今後の競売物件数は?
増加に転じた競売物件数ですが、青山氏は今後の動向をどう見るのでしょうか。
「現在、住宅ローン返済のリスケ(返済額の減額)件数は50万件ほどあると分析しています。そのすべてが債務超過になるわけではありませんが、一定の割合で競売に出品されるため、2025年度はやや増加すると予想しています。今後、大幅に減少することも増加することもなく、マーケットとしては恐らく1万5千件~2万件ほどで推移するでしょう」
不動産競売流通協会競売データ統計より。月ごとの物件数推移
(出典:一般社団法人 不動産競売流通協会)
占有者と残置物。リスクにいかに対処するかが鍵
不動産競売物件といえば、やはり市場価格より割安で購入できる点が大きなメリットではありますが、その一方でリスクがあることも周知の事実です。
青山氏はデベロッパーで分譲マンションや一戸建て分譲事業を手がけ、大手ハウスメーカーの執行役員を経て、2008年より競売サポートを行う会社を設立。不動産競売流通協会 代表理事として、これまでの経験や法的知識に基づき、一般消費者や不動産会社向けに講師としても活躍しています。多くの取引を見てきた青山氏はこう話します。
「占有者と残置物の処理は、法律に基づいて対応をしていかないと、あとあとで蒸し返されて大きなトラブルにつながります。これまで見てきたなかでは、占有者への対応が後手に回ってしまいトラブルになるケースが多い。民事執行法などの法的知識や、所有者となった後の対応の手順が分かっていないと、先導して対処することができません。占有者自身もどうしたらいいか分からないので混乱していますし、お互いが慣れていなければスムーズに進めることはできません」
不動産競売は民事執行法の知識はもちろん、通常の不動産取引とは流れも異なるため、事前の準備と取引後にどのように対応するべきかの理解が必須といえます。
一般社団法人 不動産競売流通協会 代表理事 青山 一広氏
競売物件の流通をオープンに
不動産競売というと、リスクもあり敬遠されがちなイメージがありますが、前述のリーマンショックが発生して以降、法整備が進み、2020年には民事執行法の改正がなされ「今では安心して取引ができる状態にある」(青山氏)といいます。
「不動産競売流通協会は、981.jpという一般消費者向けの競売検索サイトを運営しています。このサイトを利用し、競売流通協会会員の不動産会社のサポートを受けることで、消費者は一般のマーケットのように取引ができます。競売物件の8割はスムーズに取引ができるものがほとんどで、トラブル回避のため、競売のプロが介在したほうがいいだろうという物件は2割くらいでしょうか」(青山氏)
現在、一般社団法人不動産競売流通協会に加盟する不動産会社は200社ほど。不動産競売流通協会によれば、落札者の約8割は法人で、2割は個人。不動産競売は買い手を保護する法律がないことから、落札価格の値決め、占有者への退去手続きの案内、修繕など、すべてにおいて自己責任で進めなくてはなりません。
「競売に参加したい個人の顧客は、プロのサポートを必要としています。981.jpには競売物件の情報と併せて入札サポートの問合せフォームを設けており、不動産競売流通協会の会員になると、サイトを通して新しい顧客からの競売の相談が入ってきます」(青山氏)
不動産競売流通協会競売データ統計より。落札者属性
(出典:一般社団法人 不動産競売流通協会)
競売に関するセミナーを開催
これから不動産競売に参入したい不動産会社にとって懸念なのが、通常の売買取引の宅地建物取引業法とは関わる法律が異なることや(不動産競売の主な関連法は民事執行法や民法など)、競売サポートをする場合、そもそも自社で完遂きるのか、といった点でしょう。
「消費者の円滑な取引のため、不動産競売流通協会の会員にはセミナーや勉強会などで競売事業をサポートしています。契約書のひな形やノウハウ、過去の競売資料の提供などの競売サポートモデルがあり、会員になればこれらをすべて利用することができます」(青山氏)
不動産競売流通協会は、入会時に会員向けに競売の基礎知識を教える6時間の講習を開催。競売に参入するにあたりどういった勉強が必要かなど、レクチャーしているといいます。
不動産競売流通協会では、定期的に入会希望の不動産会社向けにセミナーを開催しています
競売を扱うことで不動産のプロに
不動産競売で入札したい消費者をサポートする、もしくは自社で落札し再販する場合でも、不動産競売の基本である、3点セット(物件明細書、現況調査報告書、評価書)の読み込み、権利関係の確認、落札予想金額の算出、物件調査、改修費用の見積もりなどは変わらないといいます。
「競売は収益が見込めそうかを見極める内見ができないので、3点セットの読み取り、現地調査、転売するのであれば今の不動産価格の動向を見ていくらで売れそうであると見るのか、居住や賃貸するのであればリフォーム費用も鑑みていくらくらいになるのか。通常の売買取引でレインズの価格を参照するだけでは、物件の立地や条件から分析し入札価格を見極める力はなかなか身に付きません。競売を扱うことで、すべての不動産のスキルが底上げされるんです」(青山氏)
青山氏は、特に売買仲介で開業を目指すのであれば、不動産競売も取り扱うことを強く勧めます。
「開業して数年はこれまでの付き合いで経営が継続できても、5年、10年経つとそれも減ってきて、廃業してしまうケースをよく聞きします。不動産業でやっていくなら法律を学び、自ら仕入れができて初めてプロであると言えます」(青山氏)
不動産業界では、競合との差別化や、在庫の確保が難しいという声をよく聞きます。「特に、5人くらいの小規模の会社に不動産競売への参入をお勧めしたい」と青山氏。
「通常の物件で成約に至らなかったお客さまも、不動産競売の事例を紹介すると他社に流れずに契約に至るケースが多くあります。ほかの会社が取り扱わない競売の実績があるというのは大きな差別化であり、不動産会社としての信頼度も増します」(青山氏)
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