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不動産業界におけるカスタマーハラスメントとは? 判断基準や対応方法を解説

不動産業界におけるカスタマーハラスメントとは? 判断基準や対応方法を解説

カスタマーハラスメントとは、顧客からの暴言や暴行、脅迫、不当な要求といった著しい迷惑行為を指します。カスタマーハラスメントは顧客との接点があるあらゆる業界に関連する問題であり、不動産業界も例外ではありません。

今回はカスタマーハラスメントに関する判断基準や、従業員を守るための対応方法について解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.不動産業界におけるカスタマーハラスメントとは?
    1. 1.1.厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』
    2. 1.2.カスタマーハラスメントの定義
    3. 1.3.カスタマーハラスメントの弊害
  2. 2.カスタマーハラスメントに関する国の基準
    1. 2.1.厚生労働省のマニュアルにおける判断基準
    2. 2.2.マンション管理における判断基準
  3. 3.企業として従業員を守る法的な根拠
  4. 4.カスタマーハラスメントへの対応策
    1. 4.1.企業に求められる事前の準備
    2. 4.2.実際に起こったときの対応方法

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不動産業界におけるカスタマーハラスメントとは?

「カスタマーハラスメント」とは、顧客からの過度な暴言・暴行・脅迫・不当な要求などの総称です。カスタマーハラスメントは業務の遂行を妨げたり、従業員の精神的な健康を害したりするリスクがあることから、さまざまな業界で問題となっています。

不動産業界においても、顧客と接する機会が多い職種では、カスタマーハラスメントによる悪影響が生まれやすいといえます。ここでは、厚生労働省のマニュアルをもとに、カスタマーハラスメントの基本的な定義について見ていきましょう。

厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』

カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』は、企業に対してカスタマーハラスメント対策の必要性を呼びかけ、自主的な取り組みを促すことを目的に作成された厚生労働省の資料です。マニュアルは「カスタマーハラスメントの実態」や「判断基準」「対策の必要性」「企業が取り組むべき対策」などから構成されており、企業が従業員を守るうえで知っておくべきポイントがまとめられています。

カスタマーハラスメントの定義

カスタマーハラスメントは比較的に新しい用語であり、まだ法的な定義は設けられていません。しかしマニュアルによれば、カスタマーハラスメントは以下のような行為を指すものとされています。

カスタマーハラスメントの定義

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当のものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの。


つまり、単なるクレームを指すのではなく、「要求の内容が妥当性を欠く」「要求を実現するための手段や態様が不相当」なものがカスタマーハラスメントにあたるということです。さらに、具体例として次のようなものが想定されています。

要求の内容が妥当性を欠く場合の例

  • 企業が提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
  • 要求の内容が、商品・サービスの内容に関係ない場合


要求を実現するための手段や態様が不相当な場合の例

要求内容にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
  • 威圧的な言動
  • 土下座の要求
  • 継続的な(繰り返される)執拗な(しつこい)言動
  • 拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
  • 差別的な言動
  • 性的な言動
  • 従業員個人への攻撃、要求


要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの

  • 商品交換の要求
  • 金銭補償の要求
  • 謝罪の要求(土下座を除く)


これらの行為・言動は、不動産業界の業務においても被る可能性が十分にあり得るものです。それだけに、企業としてはカスタマーハラスメントの内容をきちんと把握しておき、該当する行為・言動が発生していないかをチェックできる仕組みを構築することが重要といえます。

(出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」)

カスタマーハラスメントの弊害

マニュアルでは、カスタマーハラスメントによる影響にも触れられています。以下のように、従業員や企業はもちろん、ほかの顧客へも影響を及ぼすことから、企業には早急な対応が必要となります。

従業員への影響

  • 業務パフォーマンスの低下
  • 健康状態の悪化
  • 現場対応への恐怖、苦痛による配置転換
  • 休職、退職


企業への影響

  • 時間の浪費
  • 業務上の支障
  • 金銭的損失
  • ブランドイメージの低下
  • 欠員による採用・教育コスト増


ほかの顧客への影響

  • 来店時の雰囲気の悪化
  • サービス利用環境の悪化
  • ハラスメント対応によるサービス提供の遅延

カスタマーハラスメントに関する国の基準

ハラスメントは状況や条件によって多様なケースがあり、企業によって考え方も異なることから、一概にどの行為・言動が該当するのかを決めることは難しいといえます。しかし、カスタマーハラスメントの弊害を避けるためには、企業としての判断基準を明確にしたうえで、社内の考え方や方針を現場と共有しておく必要があります。

ここでは、厚生労働省や国交省の文書をもとに、カスタマーハラスメントに関する国の基準を確認しておきましょう。

厚生労働省のマニュアルにおける判断基準

厚生労働省のマニュアルでは、前述のように「顧客等の要求内容に妥当性はあるか」という点が重要な基準とされています。お客さまの主張に関して、自社に過失がないか、要求に根拠があるかなどを踏まえて妥当性を判断する必要があります。

また、「手段や態様が社会通念上相当か」という点も大きなポイントです。たとえば、長時間におよぶクレームは業務の遂行に支障をきたすことから、相当性を欠く場合が多いと考えられます。

また、当然ながら暴力的・威圧的・差別的・性的な言動、態度も社会通念上不相当と考えられるため、カスタマーハラスメントに該当し得るとされています。

マンション管理における判断基準

国交省は、マンション管理の適正化を図るための指針として策定している「マンション標準管理委託契約書」を2023年9月に改訂し、カスタマーハラスメントに関する条項を盛り込みました。「有害行為の中止要求」の条文が設けられた第12条は、カスタマーハラスメントという用語が明記されていることで、「カスハラ条項」としても広く知られています。

第12条では、組合員による「管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為(カスタマーハラスメントに該当する行為を含む)」が見られた場合、中止を求めることができるとされています。また、第12条関係ではカスタマーハラスメントの具体例として、次のように記載されています。

第12条関係のカスタマーハラスメントに関する記述

組合員等が、管理業者の使用人等に対し、本契約に定めのない行為や法令、管理規約、使用細則又は総会決議等(以下「法令等」という。)に違反する行為を強要すること、侮辱や人格を否定する発言をすること、文書の掲示や投函、インターネットへの投稿等による誹謗中傷を行うこと、執拗なつきまといや長時間の拘束を行うこと、執拗な架電、文書等による連絡を行うこと、緊急でないにもかかわらず休日や深夜に呼び出しを行うことなどが含まれる


あくまでもマンション管理上の具体例ではありますが、国交省の基準として考えることもできるため、企業の判断基準に生かすのも有効な方法です。

(出典:国土交通省「マンション標準管理委託契約書を改訂しました~マンションの管理の適正化に向けて~」)

企業として従業員を守る法的な根拠

企業がカスタマーハラスメントを放置すると、業務に支障をきたすだけでなく、法的な責任を問われる可能性もあります。たとえば、労働契約法第5条では労働者への「安全配慮義務」が定められています。

これは、身体的・精神的な労働災害を未然に防止するための管理上の義務です。第5条に照らし合わせて考えれば、従業員が顧客からカスタマーハラスメントを受けた恐れがある場合、企業は適切な対策を講じなければならないと判断することができます。

また、厚生労働省のマニュアルにおいても、カスタマーハラスメントへの不適切な対応によって使用者側に賠償責任が生じた事例や、反対に十分な対策によって安全配慮義務の責任を免れた事例が紹介されています。

カスタマーハラスメントへの対応策

カスタマーハラスメントについて、企業はどのように対応していくべきなのでしょうか。ここでは、厚生労働省のマニュアルをもとに、具体的な対応策をご紹介します。

企業に求められる事前の準備

まずは、カスタマーハラスメントに関する対策の基本方針や姿勢を明確にする必要があります。判断基準や具体的な対策方法を社内マニュアルとしてまとめ、社内への周知・啓発を行いましょう。
また、実際にハラスメントが生じたときに備えて、従業員が相談できる体制を整えることも大切です。相談窓口を設置したり、相談対応者を決めたりしたうえで、必要に応じて教育を行って適切に対応できるようにしましょう。

そのうえで、相談窓口の活用を促すためにも、「相談者のプライバシーを保護すること」「相談したことを理由に不利益な取扱いを行わないこと」を明文化し、従業員への周知徹底を行うことが重要です。

実際に起こったときの対応方法

カスタマーハラスメントが発生したら、まずは事実関係のチェックを行う必要があります。顧客と従業員双方から事情を伺うとともに、客観的な証拠や証言も集めながら事実確認を済ませましょう。

契約時の説明に不備がある場合や、物件に関する説明に不備がある場合などに、適切な対応を取ることが大切です。一方、瑕疵や過失が見られない場合は要求に応じず、必要な措置を講じましょう。

厚生労働省のマニュアルには、「時間拘束型」「暴言型」「威嚇・脅迫型」「権威型」といった各種のハラスメント行為について具体的な対応例が紹介されているので、参考にしながら社内の対応方法を相談しておくのがおすすめです。また、対応後は被害を受けた従業員に対して、適切な配慮の措置を行う必要があります。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:カスタマーハラスメントとは?
A:
厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』では、カスタマーハラスメントについて、顧客等からのクレームのうち「要求の内容が妥当性を欠く」あるいは「要求を実現するための手段や態様が不相当」なものをカスタマーハラスメントとして定義しています。

Q:カスタマーハラスメントの具体例は?
A:
暴力や暴言、威圧的な言動、性的な言動、妥当性を欠くサービス・謝罪の要求、土下座の強要、長時間の拘束などが該当します。また、国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」第12条(いわゆるカスハラ条項)関係では、インターネットへの投稿等による誹謗中傷もカスタマーハラスメントに該当し得るとされています。

Q:企業が講じるべきカスタマーハラスメント対策は?
A:
まずはカスタマーハラスメントに対する姿勢や方針を明確化し、対応方法などを記載したマニュアルを作成したうえで、社内に周知することが大切です。また、「具体的なハラスメント行為ごとに現場での対応方法を話し合っておく」「相談窓口を設置する」といったことも重要となります。​​​​​​​

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