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2022年の住宅流通市場を占う

LIFULL HOME’S総研の中山です。新年明けましておめでとうございます。2022年も本コラムをよろしくお願い申し上げます。

年初にあたり、今年の不動産&住宅流通市場の動向について展望してみたいと思います。

昨年は新型コロナウィルス感染症(以下、コロナ)が市場動向にも大きく影響したといえますが、一方で“コロナ慣れ”といえる現象が起き、ネガティブな方向ではなく需要が強含んだり価格が上昇したりと、投資家や実需の動向が読み切れない不安定な市況だったと思います。

そのため、コロナ後を見据えた2022年の住宅流通市場がどうなるか、予測していきます。

目次[非表示]

  1. 1.中古住宅のローン減税控除率が0.7%に縮小&期間は10年を維持
  2. 2.中古住宅の価格高騰はまだまだ続くのか?

中古住宅のローン減税控除率が0.7%に縮小&期間は10年を維持

昨年末の税制改正大綱で概要が公表されたとおり、住宅ローン減税の控除率が従来の1%から0.7%に縮小されることが決まりました。

住宅ローン控除を受けることを主たる目的として中古住宅を購入するユーザーはほぼいないと思われるものの、住宅ローン減税は、住宅ローンの金利が歴史的低水準であることと並んで購入動機の上位に挙げられます。

ですから、制度自体は維持・継続されても“お得感”が薄れるのは否ず、中古住宅に対する需要の減退につながる可能性は考えられます。2021年から現在に至るまで、コロナ禍であるにもかかわらず中古住宅に対する需要は堅調でした。

その主な要因は、新築住宅のコスト高による価格高騰および供給の絞り込みで条件に合う物件が見つからないユーザーが中古住宅も積極的に探し始めたこと、もう一つは株価の安定推移によって利益を得た投資家が現物資産である不動産にその資金を付け替え始めたこと、が挙げられます。

つまり都心や市街地中心部およびその周辺部に立地している条件の良い中古住宅は、実需と投資という二段重ねのニーズの受け皿となったのです。

日経平均株価は2022年に入っても大きな変化は示しておらず、おおむね安定した推移と言えますが、社会不安や日本に限らず世界で日々発生する事象によって大きく変動する可能性が常にありますから、資産の付け替えを急ぐ投資家は少なくありません。

その意味では現物資産として希望すれば比較的早く取得可能な中古住宅に2022年もニーズが向くことは想定内といえるでしょう。それでも投資と実需ではそのパイは大きく異なるため、住宅ローン減税の縮小の反動は今後徐々に表れるとみるべきです。

また、前回のコラムでも示したとおり、中古住宅を購入して住宅ローン減税を受けるには、(もちろん投資目的の購入は減税対象となりませんが)新築住宅よりもさまざまな制限が設けられていることも、需要減退の一因となる可能性があります。

中古住宅の価格高騰はまだまだ続くのか?

需要と供給のバランス、もしくは制度の変更による需要の減退の可能性については上記のとおりですが、一方の価格面についてはどうなるのでしょうか。

結論から述べると(あくまでも個人的な見解ですが)、私は中古住宅の価格は(特に需要の旺盛な都市圏中心部および近郊エリアでは)住宅ローン減税が縮小されても下がらない、もしくは上昇率が若干縮小するものの引き続き安定的な価格上昇が起きると考えています。

その主な理由は、新築住宅の価格推移の見込みです。これもまた住宅ローン減税の話題に戻りますが、新築住宅は2022年4月以降中古住宅同様に控除率が0.7%に縮小されるものの、減税期間は13年に据え置かれています。

さらに2022年度からは長期優良住宅などの認定住宅はローン元本の上限が5,000万円であることに加え、エネルギー効率の高いZEH住宅は上限4,500万円、最近の新築住宅では当たり前のようになってきている省エネ基準適合住宅も上限4,000万円とされています(これらが新設されたのは2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けた施策とされています)。

この条件に沿って減税総額を単純計算すると、それぞれ最大で認定住宅は455万円、ZEH住宅は409.5万円、省エネ基準適合住宅は364万円となります。

つまり、新築住宅に関するローン減税の総額は事実上大きく変わっておらず、依然としてまとまった金額のローン控除という恩恵を受けることができるため、控除率が0.7%に縮小されただけでは、コスト高や住宅ローン金利が低水準であることも含めて価格が下がることはほぼ想定できないのです。

したがって、価格の高騰によって新築住宅の購入を諦めたユーザーが中古住宅を検討することになっても、(もちろん個々の条件次第ではありますが)価格が現状よりも弱含みになるという状況は考えにくいといえます。

地域差はあるものの、テレワークの普及・定着によってニューノーマルといわれる新しい生活様式が選択されるケースが増え、それに応じてユーザーの住まいおよび住まい方に関する考えの変化が生まれて、住宅を買い替えること、また住み替えてコロナ後にも対応できる生活をイメージすることに関心が集まっています。

こういった傾向があることも背景として、2022年も中古住宅に対する需要は高い水準で続くものと考えられます。

中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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