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2022年の賃貸住宅市場を占う

LIFULL HOME’S総研の中山です。新年明けましておめでとうございます。2022年も本コラムをよろしくお願い申し上げます。

年初にあたり、今年の不動産&住宅流通市場の動向について展望してみたいと思います。

昨年は新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が市場動向にも大きく影響したといえますが、一方で“コロナ慣れ”といえる現象が起き、ネガティブな方向ではなく需要が強含みになったり、価格が上昇したりと、投資家や賃借人の動向が読み切れない不安定な市況だったと思います。

コロナ後を見据えた2022年の住宅流通市場がどうなるか、予測していきます。

目次[非表示]

  1. 1.賃貸マンションに対する投資家の姿勢はコロナ禍でも一貫して積極的
  2. 2.賃料推移はどの圏域も安定推移していることが需要堅調の証

賃貸マンションに対する投資家の姿勢はコロナ禍でも一貫して積極的

2021年2月にLIFULL HOME’Sが公表した「借りて住みたい街ランキング」では、特に首都圏で“ユーザー意向の郊外化”が見られました。それまで4年連続1位だった「池袋」が5位に転落し、代わって1位になったのは神奈川県央部に位置する「本厚木」でした。

また「本厚木」だけでなく多くの首都圏郊外に位置する駅名が上位に登場し、これまで人気の高かった都心やその周辺エリアの駅はランキングを大きく下げたのです。

実際に郊外方面に住み替えたユーザーがそれほど多くないということはその後の調査で明らかになっています。

しかし、テレワークやオンライン授業の普及および定着によって毎日通勤・通学しなくてもいい環境に徐々になじんできたユーザーは多く、居住コストが軽減できるメリットと通勤・通学する時間的な負荷をトレード・オフの関係と考えれば、今後のコロナ次第で需要が郊外化する可能性はあると考えておくべきでしょう。

またこの“ユーザー意向の郊外化”は、もっぱら首都圏のみで、近畿圏、中部圏、また地方4市といわれる札幌市、仙台市、広島市、福岡市などの大規模な事業集積地ではほぼ見られず、コロナ前と同様に市街地中心部への一極集中が継続しています。

これは上記のテレワークの定着度合いの違いだけでなく、圏域の広さの違い、また市街地中心部と郊外での賃料コストの格差などにも起因します。

したがって、コロナ禍が一年を通じて継続した2021年も、コロナ慣れも手伝ってなのか、賃貸ユーザーの利便性や人気のある街であることを考慮したエリア選択には(首都圏を除いて)大きな変化はなかったと見ることができます。

この状況に対して、賃貸住宅運営に前向きな国内外の機関投資家は、安定したキャッシュフローを前提としてコロナ禍においても賃貸マンションの売買を活発化させており、2020年度の投資総額は前年度から約40%増加して9,000億円超に達しています。

つまり、需要堅調と判断した投資家が、安定的な賃貸マーケットに資金を投入しているということです。

特に2021年では賃貸マンションのバルク購入(まとめ買い)が相次いで発生しており、中長期のポートフォリオを組成したうえで賃貸マンション数棟から20棟程度をまとめて購入するケースが目立ちます。

このような機関投資家による賃貸マンションへの積極投資は今後もしばらく継続することが見込まれますから、2022年も転売を見越した物件建設および取得は増加する可能性が高いと考えられます。

賃料推移はどの圏域も安定推移していることが需要堅調の証

前回のコラムでお伝えしたとおり、コロナ禍においても三大都市圏の賃料推移は大きく変わっていないことが明らかです。

圏域によって多少の違いはあるものの、首都圏では都心および近郊を中心に一時的に下げた後持ち直しており、近畿圏では安定上昇、中部圏ではいったん2020年春にピークがあって以降はわずかに弱含みという結果でした。

これはコロナ禍においても他の地域から流入してくる人口があるということが大きなポイントです。

首都圏、特に東京都および東京23区では他地域からの流入が赤字(転出超過)となる状況が発生していますが、毎年春には入学・就職によってまとまった転入超過が発生しているため、年間を通してみると黒字(転入超過)となっています。

首都圏では周辺3県への転入超過も継続していることから、コロナ禍で人口が減少するのではないかとの憂慮は一時的なものだったといえるでしょう。

同様に近畿圏では大阪府も大阪市も転入超過が継続、中部圏では愛知県からの転出は多いものの名古屋市への転入が続いているため、人口が全体として減少するような事態には至っていません。

コロナ禍においても依然として都市圏への人口流入は一定数発生し続けていることが、大都市圏での賃料動向をより安定させているとみることができます。

このような賃貸住宅に対する機関投資家の需要、および賃料相場の安定を背景に、賃貸住宅の着工戸数も徐々に増加しています。

2018年9月から2021年2月までは月次ベースでは前年同月比マイナスでしたが、2021年3月以降は最新統計公表月である11月まで9ヶ月連続でプラスに転じています。賃料水準の安定および上昇を背景として、今後も賃貸住宅、特に賃貸マンションの着工戸数は増加していくものと考えられます。

需要堅調との判断によって、2022年の賃貸市場は安定的な拡大が期待できるといえるでしょう。

中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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