生産緑地問題(2022年問題)と不動産市場への影響
皆さんは、生産緑地問題や2022年問題という言葉をご存じでしょうか?
2022年問題とはどんな問題で、不動産市場(売却市場)にどのような影響があるのでしょうか。
今回は20年以上不動産業界に携わり、不動産ディベロッパーにも所属していた不動産鑑定士である三輪 歩己さんから「生産緑地問題(2022年問題)について」教えてもらいました。
目次[非表示]
- 1.生産緑地法とは
- 2.生産緑地に関する2022年問題とは
- 3.不動産市場(売却市場)への影響は、いつからどのように起こるのか
- 3.1.(1)生産緑地法の改正
- 3.2.(2)都市農地賃借法制定
- 4.さいごに
生産緑地法とは
生産緑地法を理解するには、時代背景や社会的要請を把握すると理解しやすくなります。
1974年6月に生産緑地法が制定されたときの時代背景としては、高度経済成長期で都市部の急激な人口増加が起こり、住宅不足が問題となっていました。
そこで都市計画法上の市街化区域に残る「作物を栽培するための土地」である農地を、固定資産税を宅地並みに値上げすることにより、「住宅を建てるための土地」である宅地に変更することを促す目的で、生産緑地法が制定されました。
一方で市街化区域内の農家の方々の中にも、農業を続けていきたいという要望が数多くありました。また、その後時代が進み、都市部に残る農地などの緑地を保全することにより、都市部で暮らす人々の生活が豊かになるという考え方に変化していきました。
そこで、1991年4月に生産緑地法が改正され、宅地化すべき農地である宅地化農地と保全すべき農地である保全農地の2つに区分され、保全農地がいわゆる「生産緑地」として指定されることとなりました。
つまり、この時点において生産緑地法は、都市部に所在する農地などの緑地を保存することを目的とした法律に改正されたのです。
では、いわゆる「生産緑地」として指定されるとどのような影響があるのでしょうか。
メリット
デメリット
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生産緑地に関する2022年問題とは
生産緑地の解除要件の1つに、生産緑地に指定されてから30年経過するという要件があり、そうなると上記の固定資産税が軽減されるなどの税制優遇措置が受けられなくなります。
すなわち、生産緑地法の改正が適用されたのは1992年度からで、生産緑地の約80%は初年度に指定を受けているため、2022年で生産緑地法の改正から30年が経過し、固定資産税や相続税の優遇措置がなくなります。
かつ、生産緑地のほとんどは三大都市圏に集中しています。短期間で三大都市圏の市街化区域において多くの土地が売却される可能性があり、土地価格の急激な下落が懸念されています。
以上が生産緑地に関する2022年問題です。
不動産市場(売却市場)への影響は、いつからどのように起こるのか
2022年に営農義務が外れても、必ずしもすぐに多くの土地が売却されるとは限りません。しかし、生産緑地の所有者の多くは高齢者であるようで、近い将来農業を継続できなくなる可能性もあるでしょう。また、国や地方公共団体も2022年問題の対策を打ち出しています。
(1)生産緑地法の改正
2017年4月に生産緑地法が改正され、生産緑地の一部を「特定生産緑地」として、生産緑地の指定期限を10年単位で延長できることとなりました。
(2)都市農地賃借法制定
2018年4月に都市農地賃借法(正式名:都市農地の貸借の円滑化に関する法律)が制定され、相続税納税猶予が継続されるまま、第三者に対して生産緑地を貸し付けることもできるようになりました。
これらの対策が功を奏したとしても、2022年以降に営農義務者の高齢化や相続等をきっかけとして、徐々に都市農地が売却され宅地化されていく流れは、出てくるものと考えられます。
さいごに
生産緑地に関する2022年問題により開発用地となる売却物件も出てきて、現在の仲介会社の担当者やディベロッパーの仕入担当者を悩ませている、都心部における開発用地不足を解消してくれる可能性があります。