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東京は転入超過!大阪は?名古屋は?コロナ後を見据えた賃貸ユーザーの動き

LIFULL HOME’S総研の中山です。

2023年に入って海外渡航やマスク着用などが緩和され、本格的に“コロナ後”に向けて日本の社会・経済が動き出しています。高齢者や持病を抱えているなど重症化リスクの高い方は引き続きコロナへの注意が求められますが、行楽シーズンを迎えて海外・国内を問わず観光客も各地で増加しており、コロナ禍では得られなかった“自由な雰囲気”が戻って来ています。

それに呼応するかのように首都圏に流入する人口も増加し始め、特に東京都では2022年5月以降8ヶ月連続して転出超過だった東京23区の移動人口(他地域から流入してくる人口と他地域へ転出する人口の差分)が、2023年1月から転入超過へと大きく変化しています。

今回はこの移動人口の圏域ごとの推移について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.東京都&首都圏は毎年3月に大量の転入超過が発生する
  2. 2.近畿圏&中部圏は首都圏と異なる動き

東京都&首都圏は毎年3月に大量の転入超過が発生する

この移動人口は総務省統計局が住民票の移動を基に月次および年次で公表していますが、それによると首都圏(1都3県)の移動人口は2023年1月以降、明らかな転入超過傾向を示し始めました。

1月は5,044人、2月は6,149人、例年3月は大学や専門学校への新入学、および新入社員が大量に流入するため、今年も一桁多い68,987人の転入超過が発生しています。これはコロナ禍(2021年)の57,970人と比較すると1万人超、19.0%の大幅増ですから、本格的に首都圏流入が回復したという見方が可能です。

3月の内訳を見ると、東京都が39,305人(57.0%)、神奈川県が15,275人(22.1%)、千葉県と埼玉県がそれぞれ6,966人(10.1%)、7,441人(10.8%)となっており、大学や企業が集中する都内への流入が過半を占めていて、人流が回復していることが明らかです。

ただし、この転入超過を年齢・世代別に少し掘り下げると様相が大きく変わります。
東京都では20~34歳が37,419人の転入超過を示しているのに対して、35~59歳がー1,619人とわずかながら転出超過となっているのです(60歳以上もー1,210人と転出超過)。

つまり、主に若年勤労層の単身者が新入学・新入社で流入しているのに対して、35歳以上の主にファミリー層は数多く東京都から転出しているのです。
東京都では親世代と一緒に動く0~4歳もー1,210人と転出超過を記録しています。その35~59歳は、対照的に神奈川県で395人、千葉県で740人、埼玉県では最も多い1,151人の転入超過を記録しており、東京都から専ら周辺3県に転出していることがわかります。

これは例年の転入増加に加えて、コロナ後を見据えた若年層の東京都での居住ニーズが急激に高まったことによるものと考えられます。コロナ禍では周辺3県での新生活を前提としていた若年層が今年は東京に流入し、それに対してファミリー層は賃料および物件価格の上昇、さらには円安による物価上昇もあって、結婚や出産をきっかけに郊外方面へと転出する状況になっているのです。

近畿圏&中部圏は首都圏と異なる動き

一方、近畿圏(2府4県)の移動人口は2023年3月にー563人と転出超過になりました。大阪府が4,479人の転入超過となったものの、兵庫県ではー2,189人、京都府でもー677人と転出超過を記録しました。同様に滋賀県、奈良県、和歌山県も転出超過です。

全国から人口が流入する首都圏とは異なり、近畿圏の行財政の中心地である大阪府には一定の流入があっても、神戸市・京都市という政令市を抱える自治体からも東京、大阪に主に若年層が転出して移動人口がマイナスになるのです。

大阪府では20~34歳の転入超過(2,779人)は当然のこととして、35~59歳のファミリー層も174人の転入超過となっていますから、東京都とは違って賃料や物価の高騰も障害にはなっていないようです。

また、中部圏(3県)でもー3,835人と転出超過を記録しています。愛知県では0~19歳の若年層が436人および20~34歳の若年勤労層が135人とわずかに増えていますが、35~59歳のファミリー層は-534人と転出超過で、合計+43人と辛うじて転入超過となりました。三重県、岐阜県はともに転出超過で、愛知県および東京・大阪への転出が目立ち、愛知県からは専ら首都圏・大阪への転出が発生しています。

さらに2023年3月には福岡県でも203人の転入超過が発生していますが、20~34歳はー1,703人と転出超過なのに対して35~59歳は573人の転入超過、0~19歳の若年層も1,247人の転入超過となっています。大学・専門学校に入学する学生が西日本全域から数多く流入し、ファミリー層も東京・大阪からUターンしているようですが、反対に若年勤労層の20~34歳は主に東京へ転出しています。

データを見ると、首都圏中心部では単身者向け、準近郊・郊外ではファミリー向けの賃貸需要が今後活性化する可能性があり、近畿圏では賃貸ニーズが大阪一極集中、中部圏でも名古屋一極集中ですが、若年勤労層が中心でファミリー層は限られる状況です。福岡県では学生とファミリー層の需要が高まることが明らかです。

このように地域ごとにまた年齢・世代ごとに移動人口は転入・転出状況が異なっていますから、エリアごとのニーズを的確に把握して業務に活かしていただきたいと思います。

 
中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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