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2023年の民法改正で不動産に影響する部分は? 所有者不明の不動産を管理・処分する制度が新設

2023年4月に施行された改正後の民法では、不動産の権利や相続に関するルールが大きく変化しています。今回の改正では、所有者不明のまま不動産が放置されてしまうという社会問題を解消することが主な目的です。

不動産事業者の業務にも大きく関わるテーマであることから、内容を正しく理解しておく必要があります。この記事では、民法改正の具体的な内容について、従来との違いも踏まえながら詳しく見ていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.民法改正前の問題点
    1. 1.1.従来の制度
    2. 1.2.代理人の業務範囲が広すぎた
  2. 2.特定の土地・建物の管理に特化した管理人を選ぶ2つの制度
    1. 2.1.所有者不明土地等管理制度
    2. 2.2.管理不全土地等管理制度
  3. 3.具体的に変更があったポイント
  4. 4.相続財産精算制度とは
  5. 5.不動産業界に与える影響

民法改正前の問題点

まずは、所有者不明の不動産の処分・相続について、民法改正前はどのような仕組みが用いられていたのかを簡単に確認しておきましょう。


従来の制度

従来の制度では、所有者不明の「空き地・空き家」については裁判所を通じて「中立的な代理人」(不在者財産管理人・相続財産管理人・清算人)を選定してもらい、必要な手続きを任せることとなっていました。

中立的な代理人の種類 ​​​​​​​

  • 不在者財産管理人:行方不明、所在不明な方が所有者の場合
  • 相続財産管理人:全員が相続放棄している場合
  • 清算人:所有していた会社がすでに解散している場合

これらの中立的な代理人が、「境界確定測量の手続き」「通行・掘削承諾の取得」「土地の売買または時効取得の主張」を行い、問題を解決するのが一般的な流れです。


代理人の業務範囲が広すぎた

それでは、従来の制度では具体的にどのような点が課題とされていたのでしょうか。その課題の原因は、中立的な代理人の業務範囲の広さにあります。

改正前の制度では、以下のように、管理しなければならない範囲があまりにも広く設定されていました。

中立的な代理人の管理対象

  • 不在者財産管理人:不在者のすべての財産
  • 相続財産管理人:被相続人のすべての財産
  • 清算人:対象法人のすべての財産

そのため、対象とする土地のみの権利を確定したくても、申立人側は対象とする不在者・人の財産額全体にかかる手続きを任せなければなりませんでした。これでは、当然ながら手続きの数や種類が増えてしまうため、土地の処分をなかなか進めることができません。

また、財産管理を依頼する際に支払う「予納金」も、業務範囲が広ければ高額になります。その結果、「土地の処分を依頼したくても、金銭的な問題で行えない」というケースも少なくありませんでした。

こうした問題を解消するために、今回の民法改正によって「所有者不明土地管理制度」が創設されたのです。

特定の土地・建物の管理に特化した管理人を選ぶ2つの制度

改正後の民法では、大きく分けて2つの制度が新設されました。ここでは、それぞれの内容について解説します。


所有者不明土地等管理制度

所有者不明土地等管理制度とは、「所有者不明土地管理制度」「所有者不明建物管理制度」の総称であり、所有者が不明な土地・建物(土地等)について管理が必要であると認められる場合に、裁判所が管理人を選定する制度です。具体的には、利害関係人が地方裁判所に申し立てを行うことにより、適切に管理されていない土地や建物の管理人を選任してもらえます。

なお、利害関係人とは、次のような人を指します。

  • 土地等を時効取得したと主張する者
  • 土地を取得し、より適切な管理をしようとする公共事業の実施者あるいは民間の買い受け希望者
  • 土地等の管理不全によって不利益を被るおそれがある隣接地の所有者

選任された管理人は、対象の土地等の管理処分権を「専属的」に有し、次のような行為を行うことができます。

裁判所の許可なしで行える行為

  • 保存行為
  • 土地の性質を変えない範囲での利用・改良行為

裁判所の許可を得たうえで行える行為

  • 売却
  • 債務の弁済
  • 建物の取り壊し
  • 訴えの提起


管理不全土地等管理制度

こちらは、適切な管理が行われておらず、他者への権利侵害があるか、そのおそれがある土地において、裁判所が管理人を選定する制度です。所有者不明土地等管理制度と同じように、選任された管理人は対象の土地等の管理処分権を持ちますが、こちらは「専属的」ではない点に違いがあります。

そのため、本来の所有者は従来どおりに管理や処分を行うことが可能です。

具体的に変更があったポイント

これまでの内容も含めて、新制度で具体的に変更があったポイントをまとめると、次のようになります。

  • 全財産ではなく、対象土地ごとに細かく「中立的な代理人」を選任できる
  • 申立人になれる人の範囲も広くなっている
  • 裁判所の許可を得れば、売買等も代理人を通じて行えるようになった
  • 申し立て時の予納金を低く抑えやすくなった

これらの変更点は、いずれも所有者不明土地の管理・処分に柔軟性を持たせ、ハードルを下げる効果が期待されるものです。従来と比べて、処分がしやすくなったことから、放置されていた所有者不明土地がきちんと処理(売却など)され、市場に出回る可能性も高くなります。

相続財産精算制度とは

今回の民法改正では、相続制度についてもいくつかの見直しが行われています。そのうちの一つが、「相続財産清算制度」です。これは、従来の「相続財産管理制度」から名称変更されたものであり、具体的には債権者や相続人探しに必要となる公告期間が10ヶ月から6ヶ月に短縮されたなどの内容が含まれます。

また、「長期経過後の遺産分割の見直し」や「共有持ち分が含まれる共有物の分割手続きの見直し」「相続財産の管理に関する規律の見直し」なども同時に行われました。これによって、今後は所有者不明の不動産の問題解決がよりスムーズに行われることが期待されています。

不動産業界に与える影響

所有者不明土地等管理制度の創設をはじめ、今回の民法改正は、所有者不明のまま放置されてしまった不動産の利活用に主眼が置かれています。そのため、不動産業界に与える影響も特に大きいといえるでしょう。

所有者不明として放置されていた不動産が売却されるケースが多くなり、市場に供給される物件や土地の数が増えることが期待されるため、大きなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。たとえば、長年放置されていた駅近の土地が出回ったり、周辺の開発から取り残されたままの土地が売りに出されたりと、市場に激しい変化が起こる可能性も考えられます。

そのため、スピーディな情報収集とスムーズな意思決定が、何よりも重要な成功へのカギとなるでしょう。


●記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:2023年の民法改正の目的は?

A:2023年の民法改正では、「所有者不明のまま放置された土地の利活用」に主眼が置かれています。所有者不明土地の放置による経済的な機会損失や、管理不全による被害の防止などに大きく寄与することが期待されています。

Q:所有者不明土地等管理制度とは?

A:所有者不明土地等管理制度とは、2023年の民法改正で新たに創設された制度です。具体的には、土地・建物(土地等)の利害関係人が地方裁判所に申し立てれば、その管理を行う管理人を選任してもらうことができるという仕組みです。

Q:2023年の民法改正による不動産業界への影響は?

A:制度が機能すれば、所有者不明土地が市場に出回る可能性が高まるため、大きなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。たとえば、長年放置されていた駅近の土地や建物、開発から取り残された物件などが売りに出されるケースも期待できます。

 ≫ 関連コラム「2023年の民法改正で相続制度はどう変わった?不動産にまつわるポイントを紹介」

  2023年の民法改正で相続制度はどう変わった?不動産にまつわるポイントを紹介 | LIFULL HOME’S Business 仲介・管理 不動産取引や物件の管理などにおいて、民法は大きな影響を与える法律です。2023年4月1日から改正された民法が施行されており、土地・建物の利活用や相続などに関するルールが変更されています。 今回は、民法改正によって相続制度などにどのような影響があるのかを紹介します。 LIFULL HOME'S Business 仲介・管理


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