改正建築物省エネ法の施行まで1年半。賃貸住宅の省エネ化を進めるべき理由①
LIFULL HOME’S総研の中山です。
2022年6月、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律:通称“建築物省エネ法”が改正され、住宅を含むすべての新築建築物に2025年4月から省エネ基準の適合を義務付けることが決まりました(例外として政令で定める10m2以下の建築物や現行法で適用除外となっている建築物については対象外)。
2015年7月に公布された同法は2021年にも改正されたばかりですが、2050年のカーボン・ニュートラル実現に向けて、さらに制度としての省エネ基準のハードルを引き上げたものといえます。
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2025年基準とは具体的にどのようなものか
2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」には、2025年までに住宅および小規模建築物の省エネ基準の適合義務化が盛り込まれ、この閣議決定によって今回の建築物省エネ法改正に至りました。
では、最新の2025年基準とはどのようなものになるのか、まずは手続きについて見ていきましょう。
ポイントは、①原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられる、②建築確認手続きの中で省エネ基準への適合性審査を実施する、③2025年4月から施行予定 の3点です。
このうち、②の適合性審査の実施が手続き上の大きな変更点となり、実際には建築基準法の改正による建築確認・検査対象の見直し、審査省略制度(4号特例:建築基準法6条の4に規定される建築確認の対象となる木造住宅等の小規模建築物において建築士が設計を行う場合には構造関係規定等の審査が省略される制度)の縮小など、建築主・設計者が行う建築確認の申請手続きが大幅に変更されることになります。
法施行以降は、省エネ基準に適合しない場合、および必要な手続き・書面の整備を怠った場合にも「確認済証」および「検査済証」は発行されませんから、住宅の着工も使用開始時期も予定より遅れることになります。
また建物の完了検査時にも省エネ基準適合審査が改めて行われることになっており、書面上の適合に加えて実態の適合審査も実施されるため、審査にパスしないと引き渡しが遅延することとなって、何らかのトラブルもしくは損害賠償になるケースも想定されます。
従前とは異なり、上記のとおり改正法施行後の確認申請手続きは煩雑を極めることになり、加えて完了検査時の審査も地域ごとの基準値に達していなければ引き渡しができませんから、新築住宅を取り扱うハウスメーカー、工務店、不動産会社&販売代理、マンションデベロッパーなどはもちろん、賃貸住宅取扱事業者なども今すぐにでも対応を開始すべきです。業務工程の確認や関連知識の習得も必要不可欠と考えてください。
「省エネ」の「基準」は何から算定されるのか
では、そもそも省エネ基準とはどのような基準を満たす必要があるのかについて、必要最小限の基礎知識をご紹介します。実際の計算は現在さまざまなサービスやアプリケーションが開発されていますから、考え方やプロセスを理解しましょう。
省エネ基準は、①住宅の窓や外壁などの「外皮性能」を評価する基準、②設備機器等の「一次エネルギー消費量」を評価する基準 に分けられていて、それぞれの基準を満たす必要があります。
1.外皮性能基準
外皮性能を評価する基準指標は、断熱性能を示す「外皮平均熱貫流率(UA値)」と、日射遮蔽性能を示す「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値:イータエーシー値)」があり、この指標を「外皮の部位の面積の合計」ごとに計算することで、省エネ性能の評価を行います。このUA値・ηAC値が小さいほど冷暖房効率が高く、断熱性の高い住宅であるといえます。
このUA値・ηAC値の程度を、住宅の品質確保の促進等に関する法律:通称品確法において区分したのが断熱等性能等級で、これまで等級4~等級1(無断熱)に区分されていましたが、改正建築物省エネ法の成立によって、新たに等級5~等級7が創設されました。
2.一次エネルギー消費量基準
一次エネルギー消費量とは、住宅で使われている設備機器のエネルギーを熱量に換算したものです。太陽光パネルなどによる再生可能エネルギーは消費分から生産分を差し引いて計算に加えます。
一次エネルギー消費量にも等級があり、「設計一次エネルギー消費量」÷「基準一次エネルギー消費量」で求める「BEI」で決められています。
基準となる等級4はBEI=1.0で、設計段階のエネルギー消費量と基準消費量が等しいことが求められます。等級5のBEI=0.9に適合するためには、等級4より一次エネルギー消費量を10%以上減らす必要があります。なお、2022年4月1日の改正で等級6が追加され、BEI=0.8以下、つまり等級4よりも20%以上のエネルギー消費量の削減が求められる基準が創設されています。
では、省エネ基準が何に基づいて決まるのかということをご理解いただいたうえで、いよいよ省エネ基準適合住宅について認識を深めていきます(②に続く)。
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