【業務効率UP】IT重説対応物件のメリットや注意点、導入の流れまで解説
「IT重説」「IT重説対応物件」という言葉は知っていて、重要事項説明をオンラインで行うことであるという理解はあるものの、具体的に検討したことがない、何を準備するのかよくわからないという事業者もいるのではないでしょうか。
この記事では、不動産会社にとってのIT重説を導入するメリットや注意点、導入の流れについて解説します。利用する顧客側のメリットも含め、営業活動にも役立つ内容のため、ぜひ最後までご一読ください。
目次[非表示]
- 1.IT重説とは?
- 2.IT重説対応物件とは? 導入するためのルールは?
- 3.IT重説対応物件で何が変わる? 導入のメリット・デメリット
- 3.1.IT重説を導入する5つのメリット
- 3.1.1.遠隔地の顧客対応がしやすくなる
- 3.1.2.スケジュール調整がしやすく業務の効率化につながる
- 3.1.3.録画して記録として残せる
- 3.1.4.新型コロナなど感染症のリスクを減らせる
- 3.1.5.業務の効率化だけでなく顧客メリットも訴求できる
- 3.2.IT重説を導入する3つのデメリット
- 3.2.1.説明がわかりにくくなる可能性がある
- 3.2.2.通信環境によって時間や手間が増える可能性がある
- 3.2.3.IT重説実施の関係者からの同意が必要
- 4.IT重説対応物件の注意点
- 4.1.重要事項説明の大切さを理解してもらう
- 4.2.IT重説をスマホでするときの注意点
- 4.3.オンラインツールが苦手な人への対応
- 4.4.録画・録音は同意を得る
- 5.IT重説導入の流れ
- 5.1.1.通信環境、ツールの準備・確認
- 5.2.2.重要事項説明書の事前送付
- 5.3.3.宅地建物取引士証の提示
- 5.4.4.IT重説の実施
- 5.5.5.署名・捺印(書面の返送)
- 6.IT重説対応物件まとめ
IT重説とは?
IT重説とは、賃貸借契約や売買契約前の重要事項説明を、パソコンやスマートフォンなどを通じてオンライン上で行う手続きです。従来、不動産取引の手続きの1つである重要事項説明は対面で行うことが原則とされていましたが、法人・個人における社会実験を経て、賃貸取引では2017年10月、売買取引では2021年4月にIT重説の運用が開始されました。
IT重説対応物件とは? 導入するためのルールは?
IT重説が実施できる物件をIT重説対応物件といいます。ただし、どの物件に対してもIT重説が行えるというわけではない点に注意が必要です。国土交通省では、IT重説を対面での重要事項説明と同様に扱うために、以下のルールを設けています。
- 双方向でやりとりできるIT環境の整備
- 重要事項説明書の事前送付
- 実施前の重要事項説明書とIT環境の確認
- 宅地建物取引士証の提示と相手方への確認
- 機器等のトラブルが発生した場合の中断・中止
これらのルールを遵守するための事前準備が必要で、契約者のネット環境やIT機器への理解度によっては実施が困難なケースも考えられます。
(出典:国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」)
IT重説対応物件で何が変わる? 導入のメリット・デメリット
IT重説対応物件にはさまざまなメリットが考えられますが、対面の場合と比較するとデメリットとなる点もあります。ここではメリット・デメリットの両方を見ていきましょう。
IT重説を導入する5つのメリット
遠隔地の顧客対応がしやすくなる
IT重説は場所を選ばず実施できるため、遠隔地の顧客に対応しやすくなる点が1つ目のメリットです。
内見後に入居することが決まっても、その後の重要事項説明や契約手続きは日を改めて行う必要があります。
例えば、地方から上京する新入生と保護者、新社会人などの遠方に住む顧客は、移動時間や交通費の負担もあることから、ほかの予定とも日程を合わせたいとなると、実施までに間が空いてしまうこともあるでしょう。
その点、環境が整っていれば自宅からでも受けられるIT重説なら、顧客はわざわざ不動産会社に出向く必要がなく、不動産会社としても取引を進めやすくなります。
スケジュール調整がしやすく業務の効率化につながる
IT重説を活用することで日程の選択肢が広がり、業務の効率化につながることもメリットです。
特に繁忙期には、複数物件の契約手続きや案内業務などを並行して処理しなければならないことに加え、なかには重要事項説明を行える日程が非常に限られている忙しい顧客もいるでしょう。
IT重説導入物件の場合、場所と時間の選択肢が増えるため、営業担当者もスケジュールを調整しやすく、結果的に業務効率の改善を見込めます。
録画して記録として残せる
顧客の同意が必要ですが、IT重説の内容は録画・録音が可能なため、後日「言った」「言わない」のトラブルが発生した場合に活用できる可能性があります。
物件の状況や顧客の理解度は案件ごとに異なるため、丁寧に説明したとしても、数ある説明事項の中でうまく伝わらないことも出てくるかもしれません。
それが原因となって万が一トラブルに発展した場合、録画・録音といった記録があれば、解決に役立てることができます。
新型コロナなど感染症のリスクを減らせる
IT重説を導入していれば、新型コロナウイルスなどの感染症対策のために取引が進められなくなるといったリスクを減らすことができます。
IT重説ならば対面の必要がなく、外出も避けることができるため、実施できる環境と健康状態が確保できれば、取引を問題なく進められるでしょう。
業務の効率化だけでなく顧客メリットも訴求できる
国土交通省のIT重説の実施状況に関する調査によって、IT重説の運用開始以降、実施件数は年々増加していることがわかっています。
IT重説に対応することで、業務を効率化できるだけでなく、顧客に対し「時間や移動、交通費の負担を減らせる」「スケジュール調整しやすい」慣れた環境で説明を受けられる」といったメリットを訴求することも可能です。顧客にメリットを訴求しながら効率よく業務を進めることで、契約率や生産性の向上も期待できるでしょう。
(出展:国土交通省「IT重説等の実施状況と今後の対応について」)
IT重説を導入する3つのデメリット
ここまでIT重説を導入するメリットを説明してきましたが、一方でデメリットもあります。具体的に3つ見てみましょう。
説明がわかりにくくなる可能性がある
IT重説はオンラインで行われるため、対面の場合に比べ、説明が伝わりにくくなる可能性があります。
契約前の重要事項説明は顧客にとって大切な手続きですが、初めて不動産を借りる、購入する顧客にはわかりづらい内容も少なくありません。
また、対面であればくみ取りやすい顧客の反応や理解の度合いなども、パソコンやスマホの画面越しだとわかりにくい恐れがあります。
通信環境によって時間や手間が増える可能性がある
通信環境が不安定で、画像が乱れる、音声が聞き取りにくいといった場合には、かえって手間が増えることも考えられるでしょう。
IT重説の実施状況の調査でも、発生したトラブルの約7割が機器やネット回線に起因すると判明しています。
その場で対処できれば中断後に改めて進めることができますが、対処できない場合は、IT重説を中止しなければなりません。
そうなると、改めて時間を設ける、または対面に切り替えるといった対応が必要となり、想定外の手間が増える可能性があります。
(出典::国土交通省「IT重説等の実施状況と今後の対応について」p.9)
IT重説実施の関係者からの同意が必要
IT重説を行うには、取引の関係者から同意を得なければならない点もデメリットの1つです。
重要事項説明にあたり、対面で行うかオンラインで行うかは顧客が選択します。つまり、IT重説を行う場合は顧客の同意が必要だということです。
なかには、「オンラインだとわかりにくい」「パソコンやツールの使用が苦手」といった理由で、消極的な顧客もいるでしょう。
また、重説には、貸主や売主の個人情報も含まれるため、取引関係者の同意も必要です。
同意を得る際は、後のトラブルを回避する観点からも、書面や電子メールといった形で残しておいたほうが賢明でしょう。
IT重説対応物件の注意点
IT重説対応物件のメリットとデメリットを踏まえ、ここからはIT重説を実施するうえでの注意点について解説していきます。
重要事項説明の大切さを理解してもらう
まずは、重要事項説明の大切さを顧客にしっかり理解してもらう必要があります。
不動産会社で行われる対面での重説とは異なり、IT重説は自宅などからオンラインで行われるため、重要事項説明は大切であるという認識が薄れたり、説明を聞く集中力が欠けたりすることも考えられるでしょう。
顧客には、重要事項説明を実施する目的や内容、わかりにくい点や聞き洩らした点がある場合の対応方法などを事前に伝えておくことも必要です。
IT重説をスマホでするときの注意点
IT重説を行う端末がスマホである場合は、画面の見やすさや音声の聞き取りやすさへの配慮が欠かせません。
重要事項説明書を事前に送付しているとしても、当日は建築図面や用途地域図といった図面を用いて説明する場面が出てくるでしょう。
スマホの場合、パソコンやタブレットなどよりも画面が小さい分、文字や画像の確認がしづらく、説明を受ける際の顧客の集中力や理解度に影響を及ぼす可能性があります。
回線や機器の環境を事前確認する際に、スマホでの見え方など、実施に支障がないかを確認することが大切です。
オンラインツールが苦手な人への対応
IT重説実施の同意を得たとしても、オンラインツールが苦手な顧客に対しては、より慎重な対応が求められます。
説明の途中で機器の操作方法がわからなくなった場合や、映像や音声が中断した場合でもパニックにならないよう、わかりやすい対応方法などを事前に準備しておくとよいでしょう。
録画・録音は同意を得る
IT重説の内容を録画・録音する際には、相手側の同意を得る必要があります。
この際、録画・録音の目的や範囲、説明の途中で録画・録音が適切ではないと判断された場合は中止すること、相手側が希望する場合は複製(コピー)を提供する旨も含めて説明し、同意を得るようにしましょう。
IT重説導入の流れ
最後に、IT重説を導入する流れについて解説します。
1.通信環境、ツールの準備・確認
まずはIT重説ができるネットやツールの環境を準備するところから始めます。
顧客が使用する端末についても、マイクやカメラ、スピーカーの確認が必要です。加えて、WEB会議を行えるアプリやツールをダウンロードしてもらい、使用方法を含め、IT重説を実施できる環境を整えましょう。
実際にIT重説を行う前に、映像や音声が途切れないか、見えやすさや聞き取りやすさに問題はないかなどをテストしておきましょう。
2.重要事項説明書の事前送付
当日までに内容を確認できるよう、重要事項説明書などの書類一式を事前に送付します。電子契約で進める場合、メール添付やネット上へのアップロードといった方法で提供します。
3.宅地建物取引士証の提示
宅地建物取引士証を提示し、顔写真のほか、宅建士の名前を読み上げてもらうなど、相手側がきちんと認識できているかを確認する必要があります。
相手側にも免許証などを提示してもらい、本人(代理人)確認を行ってください。
4.IT重説の実施
重要事項説明を実施します。
録画・録音する場合は、事前に同意を得ている必要があります。
5.署名・捺印(書面の返送)
重要事項説明が問題なく終わったあとは、重要事項説明書に署名・捺印してもらうことになります。
引き続き契約手続きを行う場合は、契約書にも署名・捺印をしてもらい、不動産会社に返送してもらいましょう。
電子契約で進める場合は、電子化された重要事項説明書、契約書に電子署名をもらい、メール添付やネット上へのアップロードといった形で返送してもらいます。
(出典:国土交通省ITを活用した重要事項説明 実施マニュアル)
IT重説対応物件まとめ
IT重説対応物件は、環境の整備や関係者の同意が必要になるものの、取引時の状況や取引相手に合わせて活用することで、多くのメリットを得られます。
時間や場所の制約が小さくなるため、顧客側の利便性が向上するだけでなく、不動産会社側も業務の効率化につながりやすいでしょう。
また、IT重説実施のメリットを顧客に訴求できれば営業面でも有利になり、対応していない不動産会社との差別化も可能です。
この記事で解説した内容をぜひ参考にしてください。
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