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区分所有法改正で何が変わる? 改正の方向性を解説

区分所有法改正で何が変わる? 改正の方向性を解説

ここ数年のうちに、マンションの建て替えについて法改正が行われる予定、というニュースを耳にした人も多いのではないでしょうか。商業施設やオフィスビルとは決定的に異なる、“住む機能”を持ったマンションの建て替えについては、関係する人々への影響も大きいことから、慎重な議論が必要です。一方で、安全面や住環境の整備、土地活用といった、先延ばしできない問題も抱えています。

本記事では、法務省民事局による「区分所有法制の見直し」資料を手がかりに、2024年の通常国会への提出が見込まれる改正案の内容を整理します。区分所有法の改正によって何が変わるのか、その背景や目的、改正の方向性を確認しましょう。

目次[非表示]

  1. 1.区分所有法改正の背景と目的
  2. 2.何が変わる? 区分所有法改正の方向性は?    
    1. 2.1.区分所有建物の管理の円滑化    
    2. 2.2.区分所有建物の再生の円滑化
    3. 2.3.被災区分所有建物の再生の円滑化
  3. 3.法改正の今後に注目    

区分所有法改正の背景と目的

区分所有法改正の検討が進む背景には、老朽化したマンションや団地等(区分所有建物、以下「マンション等」とする)の急増と、それらの所有者の不明化や非居住化の懸念があります。マンション等の老朽化や区分所有者の高齢化、それに伴う相続の発生によって、誰のものかわからない、誰も住んでいない物件が増加していくのです。

マンション等の共用部修繕や規約の変更、建て替えには、所有者による決議が必要です。ただし、所有者が不明の場合、決議内容について反対しているものとして扱われるため、マンション等に必要な決議を得ることが難しい状況が発生します。特に建て替えにおいては、多数決の要件が総議決権の5分の4以上と非常に厳しく、決議の難しさは想像にかたくありません。

所有者不明でマンション等の管理が機能せず、メンテナンスや修繕が滞るだけでなく、老朽化した建物の再生も実現しません。こうした問題に対応するため、区分所有法の改正が検討されています。

老朽化だけに限らず、被災して建物に損傷を受けたマンション等については、建て替え要件のハードルのほかに、時間的ハードルも存在します。被災区分所有法に基づいた建物の再生の決議には、災害指定政令の施行後1年以内や3年以内といった制約があり、議論を進めるには時間が足りません。結果的に採決に至らず、円滑な復興の妨げになることが問題視されています。

何が変わる? 区分所有法改正の方向性は?    

政府はマンション等の老朽化対策として、区分所有法を抜本的に見直す方針であることを公表しています。マンション等が抱える課題に対し、区分所有法改正は具体的にどのようなアプローチをするのでしょうか。区分所有建物の管理・再生・被災区分所有建物の再生の3つに分けて、改正の方向性を確認しましょう。

区分所有建物の管理の円滑化    

マンション等における建物管理のための決議を円滑化する方法として、いくつかの方策が検討されています。

例えば、決議の母数を実態に合わせる方法です。現状、区分所有者が不明の場合は決議に対する反対票という扱いをしているが、区分所有者不明の場合は、そもそも決議の母数から除外するという仕組みです。また、決議集会に出席せず、賛否の表明もない区分所有者についても、現状は反対票と扱われます。そこで、集会への出席者のみで多数決による決議を行うことも検討されています。
また、共用部分の変更に関しても、多数決要件である総議決権の4分の3のハードルが高く、管理に必要な工事に着手できない課題があります。より円滑に決議を行うため、4分の3という要件を単純に引き下げる案や、緊急性の高い工事に限定して要件を引き下げる案、規約によって要件を緩和する案などが検討されています。

一方で、少数であっても反対意見をどう尊重するか、また、緊急性が高いと見なす基準の設定が課題として存在しています。賛成派にとっては推進力の上がる法改正であるが、反対派にとっては厳しさが増すといえるでしょう。

区分所有建物の再生の円滑化

建物の再生の観点においても、管理の円滑化と同様、多数決要件引き下げの方向で検討が進められています。

建て替えについて、現状の多数決要件は総議決権の5分の4です。この割合の引き下げや、耐震性不足といった一定の客観的要件を満たした場合のみ割合を引き下げる案等が議論されています。耐震性不足のほかにも、防火性・外壁・給排水設備・バリアフリーといった、安全性や生活への影響が大きいものが、多数決要件引き下げの対象案として提示されている状況です。

さらに、専有部分の賃借権があっても、建て替えが決まった場合にはそれを消滅させることができる仕組みをつくることで、円滑な建て替えを後押ししようとする動きもあります。改正の方向性をプラスと捉えるかマイナスと捉えるかは、個人の状況や立場によって大きく変わるでしょう。

建て替え以上に難しいのが、建物・敷地の一括売却や取り壊しです。これには区分所有者全員の同意が必要ですが、所有者が数十人から数百人にのぼるマンション等では決議は現実的に不可能といえるでしょう。また、専有部分を含む一棟リノベーション工事は実質的な建て替えを可能にするもので、技術的にも追いついてはいるのですが、一括売却や取り壊しと同様に、区分所有者全員の同意が必要です。法改正にあたっては、こうした区分所有関係の解消・再生に向け、全員の同意ではなく、多数決による決議を可能とする案も検討されています。

被災区分所有建物の再生の円滑化

被災したマンション等の建て替えや一括売却についても、多数決要件として5分の4が必要とされています。前述した管理や再生のための検討と同様、こちらも要件を緩和し、迅速な復興を後押しする方向性が公表されています。

また現状、一部滅失に該当する被災マンション等について、売却を行う決議は災害指定政令の施行後1年以内とされていますが、現実的に見て期間が短いことから、期間を延長する検討もされています。

法改正の今後に注目    

国土交通省によると、2042年には築40年以上のマンションが445万戸にのぼると予想されています。これは2022年の3.5倍にあたり、マンションの老朽化は避けられない課題でしょう。区分所有法の改正案は、2024年に通常国会に提出される見込みであり、近い将来、何らかの法改正が行われる可能性が非常に高い状況です。

マンション等の購入を考えている人、現在マンション等に住んでいる人、親がマンション等に住んでいる人や相続をした人にとっては、今後の数十年を考えるうえで目が離せない改正になるでしょう。持ち家の人に限らず、分譲マンションに賃貸契約で住んでいる人も、築年数が経っていれば、今回の改正と無関係とはいえません。一方で、建て替えや売却が進み、物件の供給量が増加するといった変化も期待できます。

議決権の母数や多数決要件がどのように変わるのか、また、自らの住まいに当てはめて考えた場合、管理や再生のハードルはどれくらい変わるのか、自分事化しながら注視していきましょう。


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入船みみ
入船みみ
大阪大学卒業後、大手インフラ企業に入社。まちづくり企画・不動産賃貸業・店舗開発などの幅広い不動産事業を経験。人事分野にも携わり、採用・人材育成・組織戦略(ワークエンゲージメント)を推進している。豊富な実務経験をもとに、WEBメディアにおいて不動産・キャリア形成・金融をテーマとした記事執筆多数。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。宅地建物取引士試験合格。 SNS・記事実績リンク:https://1link.jp/mimi_irifune

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