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賃貸保証会社が果たす役割とは? 貸主と入居者のメリットを解説

賃貸保証会社が果たす役割とは? 貸主と入居者のメリットを解説

賃貸保証会社は、入居者が家賃を支払えなくなった場合に、貸主に対して家賃を代位弁済する存在です。近年は、多くの貸主が不動産の貸し出しにあたって何らかの保証を求めているため、不動産の賃貸借契約において賃貸保証会社の存在感は大きいといえるでしょう。

この記事では、賃貸保証会社が果たしている具体的な役割や、近年の賃貸保証会社の市場規模などを解説します。賃貸保証会社を介した場合の貸主と入居者のメリットも解説するため、参考にしてみてください。

目次[非表示]

  1. 1.賃貸保証会社とは
  2. 2.賃貸保証会社の市場規模は拡大傾向
  3. 3.主な賃貸保証会社
  4. 4.貸主が賃貸保証会社を利用するメリット
    1. 4.1.安定して家賃収入を得られる
    2. 4.2.家賃の請求や回収を一任できる
    3. 4.3.入居者の審査を簡素化できる
  5. 5.貸主が賃貸保証会社を利用するデメリット
    1. 5.1.賃貸保証会社が倒産するとほかの会社を探す手間が発生する
    2. 5.2.賃貸保証会社の対応によってはクレームの懸念も
  6. 6.入居者が賃貸保証会社を利用するメリット
    1. 6.1.部屋が借りやすくなる
    2. 6.2.連帯保証人を立てる手間を省ける
  7. 7.入居者が賃貸保証会社を利用するデメリット    
    1. 7.1.保証料や更新料を支払う必要がある
    2. 7.2.家賃の支払いが免除されるわけではない
  8. 8.トラブルを避けるなら国土交通省に登録されている登録家賃債務保証業者を選ぶ
  9. 9.まとめ

賃貸保証会社とは

賃貸保証会社とは、入居者が貸主に対して支払うべき家賃を保証する会社を指します。賃貸保証会社は、入居者が何らかの理由で家賃を支払えなくなった場合、入居者の代わりに貸主に家賃を立て替えてくれます。つまり、入居者にとっては家賃を一時的に立て替えてくれる存在、貸主にとっては家賃の支払いを保証してくれる存在です。

また、入居者が連帯保証人を用意できない場合でも、賃貸保証会社を利用すれば物件を借りられる可能性が高まります。家賃の支払いを保証してくれる存在があれば、貸主が安心して貸し出せるためです。なお、賃貸保証会社が保証してくれる範囲は、主に以下のとおりです(賃貸保証会社によって異なる)。

主な保証範囲

  • 未納賃料
  • 損害賠償金
  • 残置物処理費
  • 更新料
  • 退去時精算費用
  • 法的手続きに関する訴訟費用

賃貸保証会社が入居者が負うべき費用を立て替えた場合は、その後入居者本人に対して請求を行います。賃貸保証会社は、あくまでも立て替えを行うのみであり、入居者本人の債務は免除されるわけではありません。

賃貸保証会社の市場規模は拡大傾向

近年は、不動産の賃貸借契約における賃貸保証会社の重要性が高まりつつあります。平成28年の国土交通省の資料によると、賃貸借契約の約97%において、貸主は何らかの保証を求めており、実際に約6割が賃貸債務保証会社を利用しています。

(出典:国土交通省 家賃債務保証の現状 p.1)

賃貸保証会社を利用するケースが増えた背景として挙げられるのが、高齢世帯の増加や人間関係の希薄化などです。実際に国土交通省の「家賃債務保証の現状」の資料によると、約6割の貸主は、高齢者への貸し出しに対して拒否感を持っているようです。

(出典:国土交通省 家賃債務保証の現状 p.2)

特に単身の高齢者は連帯保証人を用意できないケースが多いことから、家賃の滞納リスクが高いといえるでしょう。このリスクを軽減するために、賃貸保証会社を利用する貸主が多いと考えられます。

主な賃貸保証会社

代表的な賃貸保証会社として挙げられるのは、以下のとおりです。

  • Casa
  • ジェイリース
  • イントラスト
  • あんしん保証
  • 日本賃貸保証
  • 日本セーフティー

これらはあくまでも一例で、ほかにも多くの賃貸保証会社があります。会社によって保証期間や保証限度額、保証範囲が異なる点に留意しましょう。            

貸主が賃貸保証会社を利用するメリット

貸主は賃貸保証会社を利用することで多くのメリットを得られます。ここではそれらのメリットを具体的に解説します。

安定して家賃収入を得られる

貸主が賃貸保証会社を利用する最大のメリットは、安定した家賃収入を得られることです。貸主は、家賃滞納リスクは極力避けたいと考えます。その点、賃貸保証会社を利用すれば、万が一入居者が家賃を払えなくなっても、賃貸保証会社が立て替えて支払ってくれます。

このように、賃貸保証会社を利用すれば家賃滞納リスクを軽減できるため、大きな安心感につながるでしょう。

家賃の請求や回収を一任できる

賃貸保証会社は、家賃の支払いを保証するだけでなく、家賃の請求や回収に関する業務も請け負います。つまり、家賃の請求や督促など、煩雑な業務を賃貸保証会社が代行してくれるため、貸主の管理業務が軽減されるのです。

特に、貸主が賃貸物件から遠距離に住んでいる場合、家賃の請求や督促には膨大な手間がかかります。また、退去に伴う法的手続きも賃貸保証会社に任せられるため、不動産関係の法律に詳しくない貸主にとってはその点もメリットといえるでしょう。

入居者の審査を簡素化できる

賃貸保証会社を介することで、入居者の審査を簡素化できる点もメリットといえます。入居者が家賃を払えない状況に陥っても、賃貸保証会社が立て替えて支払ってくれることから、入居者の支払い能力や身元の調査を簡素化できるためです。

そもそも、入居者の審査を賃貸保証会社に一任し、貸主本人は審査を行わないケースもあります。

貸主が賃貸保証会社を利用するデメリット

貸主による賃貸保証会社の利用には、メリットだけでなくデメリットも存在します。以下で、貸主が被る具体的なデメリットを解説します。

賃貸保証会社が倒産するとほかの会社を探す手間が発生する

契約している賃貸保証会社が倒産すると、連帯保証人不在の状況に陥ります。そうなると家賃滞納リスクが高まることから、リスク軽減のためにもほかの賃貸保証会社を探す必要が生じてしまう点は、デメリットといえるでしょう。    

賃貸保証会社は民間企業であるため、倒産のリスクが常にあります。実際に倒産が起こる可能性は低いとはいえ、倒産リスクを完全には回避できない点には留意する必要があります。    

賃貸保証会社の対応によってはクレームの懸念も

賃貸保証会社が、入居者に対して強引な家賃請求や督促を行う可能性も否定できません。賃貸保証会社が入居者に対して高圧的な対応を行った場合、貸主である自分に対してクレームが来る恐れがあります。

基本的に、賃貸保証会社は法令を遵守したうえで入居者への対応を行いますが、家賃滞納者に対して電話や訪問による執拗な督促を行う可能性がゼロではありません。

こうなると物件に対して悪評が付き、結果的に貸主である自分の評判にも傷がついてしまう恐れがある点は、賃貸保証会社を利用するデメリットといえるでしょう。

入居者が賃貸保証会社を利用するメリット

入居者側からしても、賃貸保証会社を利用することでさまざまなメリットを得られます。以下で、入居者側の具体的なメリットを解説します。

部屋が借りやすくなる

賃貸保証会社を利用すると、部屋を借りやすくなるのがメリットの1つ目です。貸主が家賃滞納リスクを軽減できるため、入居者に経済面での不安があっても、部屋を借してくれる確率が高まります。

連帯保証人が見つからない人や年金生活を送っている人でも、賃貸保証会社が介在していれば貸主の不安を軽減できます。住まいを確保しやすくなる点は、入居者にとって心強いメリットといえるでしょう。

連帯保証人を立てる手間を省ける

賃貸保証会社は連帯保証人の役割を担うため、入居者は自分で連帯保証人を探す必要がありません。通常、連帯保証人が必要な物件に住む場合、両親や兄弟がすでに他界(もしくはいない)している単身者は、知人や親戚に頭を下げて連帯保証人になってもらう必要があります。

その点、賃貸保証会社を利用すれば、連帯保証人を探し、依頼する手間が省けます。精神的な負担を軽減できる点も、賃貸保証会社を利用するメリットといえるでしょう。

入居者が賃貸保証会社を利用するデメリット    

物件を借りる際に賃貸保証会社を利用することで、入居者がデメリットを被る面もあります。以下で、入居者が被るデメリットを具体的に解説します。

保証料や更新料を支払う必要がある

入居者は、物件の借り入れや更新のタイミングで、賃貸保証会社に対して保証料・更新料を支払う必要があります。金銭的な負担が増えてしまう点は、賃貸保証会社を利用するデメリットといえるでしょう。    

国土交通省の資料によると、契約時の保証料は、初回時が月額賃料の50%、以後1年毎に1万円と設定している事業者が多いです(賃貸保証会社によって異なる)。

(出典:国土交通省 家賃債務保証の現状 p.4)

例えば、家賃10万円の物件を借りる場合、保証料として5万円、以降は更新料として毎年1万円を負担する必要があります。                

家賃の支払いが免除されるわけではない

家賃を支払えない状況に陥り、賃貸保証会社が家賃の代位弁済(代わりに貸主へ支払う)をしたとしても、入居者自身の支払い責任は免除されません。あくまでも立て替えてもらっているだけであり、滞納した家賃や損害に対する賠償があれば、賃貸保証会社に支払う必要があります。

賃貸保証会社は、貸主による取り立てから入居者を守ってくれる存在ではありません。また、賃貸保証会社への弁済を延滞すると、信用情報に傷がついてブラックリスト入りするリスクがあります。

事態が悪化すれば、訴訟にまで発展する可能性がある点には留意すべきでしょう。

トラブルを避けるなら国土交通省に登録されている登録家賃債務保証業者を選ぶ

不動産の賃貸借契約において賃貸保証会社を利用するかどうかは、貸主次第です。賃貸保証会社を利用する際は、トラブルを避けるためにも、国土交通省に登録されている登録家賃債務保証業者を選ぶとよいでしょう。

賃貸保証会社の設立にあたっては許可や認定が必要ありません。そのため、財務状況が芳しくない会社や、モラルが欠けており悪質な取り立てを行う会社も存在します。

こういった状況に対応するため、国土交通省は一定の基準を満たした賃貸保証会社のみが登録できる「家賃債務保証業者登録制度」を設けました。家賃債務保証業者として登録するための条件は、以下のとおりです。

家賃債務保証業者登録制度登録の条件

  • 暴力団員等の関与がない
  • 安定的に業務を運営するための財産的基礎(純資産額1,000万円以上)
  • 法令等遵守のための研修の実施
  • 業務に関する基準を規定した内部規則・組織体制の整備
  • 求償権の行使方法が適切である
  • 相談又は苦情に応ずるための体制整備
  • 法人の場合、家賃債務保証業を5年以上継続していること又は常務に従事する役員のうちに、家賃債務保証業務に3年以上従事した経験がある
  • 使用人(事務所の代表者)について家賃債務保証業の経験が1年以上 等

(出典:国土交通省 家賃債務保証業者の登録制度の概要

家賃債務保証業者として国土交通省に登録されている会社であれば、一定の信頼が担保されているといえるでしょう。なお、国土交通省に登録されている登録家賃債務保証業者はこちらから確認できます。

まとめ

賃貸保証会社は、不動産の賃貸借契約を円滑にするために重要な役割を担っています。貸主と入居者の双方にメリットを提供していることから、不動産業界において欠かせない存在といえるでしょう。ただし、賃貸保証会社の利用においては、メリットだけでなくデメリットもあります。貸主と入居者の双方が、賃貸保証会社の立ち位置と役割を理解することが大切です。


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柴田 充輝
柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。保有資格はFP1級・社会保険労務士・行政書士・宅建士。金融メディアや不動産メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆経験がある。自身でも株式投資や不動産投資を行い、実体験に基づく質の高い情報の提供と、読者にとってわかりやすい執筆を心がけている。本業のかたわら、FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。

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