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実は“買って住みたい街ランキング”と相関している移動人口の現状

実は“買って住みたい街ランキング”と相関している移動人口の現状

LIFULL HOME’S総研の中山です。
今回は、移動人口の状況について解説します。移動人口とは人の生き死による自然増減とは別に、特定の地域から別の地域へと移動した人の数:社会増減を示したもので、このデータを見るとどのエリアに人が住もうとしているのかが明らかになるため、住宅需要の重要な指標になり得ます。

一方でLIFULL HOME’Sの「みんなが探した!買って住みたい街ランキング」も、年間にユーザーから寄せられた問合せ数を最寄り駅単位でランキング化したものですから、移動人口との相関性が高いという訳です。都市圏に集中する移動人口の現状とは対照的に、世代ごとに異なる人流の動きにもご注目ください。なお、このデータは外国籍の方の転入・転出も含めています。

目次[非表示]

  1. 1.首都圏:年間で12万6千人の圧倒的転入超過発生も世代間の違いが鮮明に
  2. 2.近畿圏:大阪一極集中 中部圏:愛知県全世代転出超過 福岡県:転入超過継続

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首都圏:年間で12万6千人の圧倒的転入超過発生も世代間の違いが鮮明に

首都圏(1都3県)は、2023年の移動人口が126,515人の転入超過となりました。コロナ禍にあった2022年は9.9万人の転入超過にとどまっていましたから、約30%の転入増が発生し、本格的にコロナ後の社会に変化していることが明らかです。年間に12.6万人も転入増があれば住宅需要が活性化するのは当然のことですから、首都圏全域で住宅価格も賃料水準も上昇する一因となっています。

最も転入超過が多かったのは東京都の6.8万人で、神奈川県でも2.8万人、埼玉県2.5万人の転入増を記録していますが、千葉県だけ0.5万人にとどまっています。これは神奈川県、埼玉県では実家もしくはその周辺に居住しつつ都心方面に通勤・通学する人が多いのに対して、千葉県では主に若年単身者層が地元を離れて都心方面に転居するケースが多いためです。都内に近い市川市や浦安市への転入増が多いのに対して、房総半島方面の各自治体ではもっぱら転出超過が発生しています。

首都圏全体でこれだけたくさんの社会増があるのはエリア活性化にとっては喜ばしいことですが、実はこの移動人口を世代ごとに確認すると、さらに違いがあることが明らかになります。すなわち、東京都では20~34歳の主に若年単身者層が都全体の転入超過数を上回る8.9万人を記録しているのに対し、35歳以上のファミリー層は2.8万人以上の転出超過となっているのです。

若年単身者層はコロナ明けで全国から流入しているのですが、東京にしばらく住んで家族を持ったファミリー層は積極的に東京から転出しているということになります。その転出した人口は周辺3県、もしくはさらに外側の静岡県や北関東に転居していますから、首都圏でのファミリー層の居住ニーズは都心から郊外方面へと広く拡散していることがわかります。

これはコロナ後も主に子育て世帯に推奨されているテレワークの継続によって、オンもオフも自宅で過ごす時間が増え、より住環境の良好なエリアで子育てしながら仕事も継続する世帯が増加していることの表れです。したがって、都心周辺では主に単身者向け住宅のニーズが高まる一方、首都圏郊外およびその以遠エリアではファミリー向けの住宅の需要が顕在化しているのです。

コロナ前まではほぼ都心一極集中だった人口動態が、主にファミリー層において郊外化することは住宅需要の多様化に繋がりますから、人流の変化をビジネスチャンスと捉えることができる状況と言えるでしょう。

近畿圏:大阪一極集中 中部圏:愛知県全世代転出超過 福岡県:転入超過継続

近畿圏(2府4県)は首都圏とは状況が異なります。中心エリアである大阪府に移動人口が集中していて、年間の転入超過数が1万人以上を記録している点は首都圏同様とも言えますが、近畿圏では兵庫県、京都府などから人流が流出していて首都圏のように全体で多くの転入超過とはなっておらず、大阪一極集中&神戸や京都からは転出、という構図です。

また大阪府からファミリー層が転出している状況も東京都と同様ですが、転出する先が周辺エリアではなく主に首都圏というのも大きな違いです。したがって近畿圏は大阪府に移動人口が集中する一方で圏域全体では2,670人の転出超過となっています。特に20~34歳の若年単身者層が約1万人の転出超過となっていることは憂慮すべき事態と言えます。

一方、中部圏(東海3県)は中心となる愛知県からの転出超過に歯止めが掛かりません。愛知県からは毎年0.7万人前後の転出超過が発生しており、岐阜県、三重県と合わせると2万人弱のまとまった人流の転出が認められます。しかも愛知県と三重県は全世代にわたって転出超過となっており、首都圏および大阪府に多くの人口を取られていますから、これ以上の移動人口の流出を食い止めなければなりません。幸いなことに名古屋市は若年単身者層の流入によってかろうじて転入超過なので、今のうちに何らかの対策を講じて定住人口を増やす必要があります。

対照的に福岡県では毎年安定的な転入超過が発生しており、2023年も4千人超の転入超過となりました。超過数はそれほど多くはありませんが、大学生および専門学校生が数多く転入し19歳までの未成年者が増加し続けていることが賃貸住宅需要を支えています。20~34歳の若年単身者層のみ転出超過(特に男性)となっているのですが、35歳以降のファミリー層は3千人以上の転入超過となっていることから、一旦東京や大阪で就職した後、結婚や出産を機にUターンしているケースが多いことが分かります。ファミリー層の転入が多ければ人口の自然増にも期待が持てますから、エリアの発展や経済的な活性化には欠かせない条件と言えます。

このように、圏域によって移動人口の世代別の動態が比較的大きく異なることが明らかになりました。地域ごとの人流の傾向の違いが、今後のビジネスの参考になれば幸いです。


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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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